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2017年11月8日
 「一帯一路構想」対「インド太平洋構想」 独裁者習近平権益拡大牽制
今回の日米首脳会議で安倍首相が拘ったのは、日米共通のアジア外交戦略を明確にすることだった。トランプ大統領は安倍政権がオバマ前大統領と築いたTPP(環太平洋経済連携協定)を就任早々に離脱しアジアにおける貿易のルール作りから身を引き、米国の対アジア戦略は漂流の中にある。

習近平国家主席は、これを奇禍とし中国が主導する「一帯一路」の推進を加速させ、アジアにおける勢力を拡大させている。「一帯一路」構想は、中国、アジア、欧州を高速鉄道や港湾整備などのインフラでつなぎ交易を盛んにすることを謳う。経済発展が著しいアジア地域では東南アジアから中東にいたるまで多くの国々が期待を寄せる。

その中国は先の10月18日から24日までの第19回中国共産党大会で習主席への権限の集中化が一段となされ、同氏による独裁支配体制が確立された。その証左に、中国共産党の憲法とも云うべき「党規約」の決議文に,習氏の名前を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」が盛り込まれたことだ。「毛沢東思想」と同じく、「習近平思想」を広め思想教育を徹底してこそ、中国は強国となり中国の恒久的な栄華をもたらすとした。

中国メディアによると、人民大学(北京)は党大会閉幕翌日の25日、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」研究センターを設立、ほかに天津など20の大学で発足する。すでに習主席への礼賛、服従が始まった。
習主席がここまで自らの権力の確立をもたらしたのは、習氏が主席就任以降5年に亘って「トラもハエも叩く」として推進した汚職摘発キャンペーンだ。このキャンペーンは汚職摘発の名を借りた敵対者排斥が狙いだ。次官級280人、局長級8,600人、地方幹部66,000人など全国で150万人の摘発・処分の成果であった。

全権を掌握した習主席は党大会で、建国から100年となる21世紀半ばまでに経済、軍事、文化の幅広い分野で世界の頂点を目指し、米国と並び立つ強国となる長期構想を表明した。また、大会で南シナ海の人工島建設を「成果」と言い放ち海洋強国進出を鮮明にし、米軍に比肩する「世界一流の軍隊」を築くと宣言した。また、自由や民主主義を柱とする米主導の国際秩序とは別に中国の価値観が認められる勢力圏を築くと意欲を見せた。

その起爆剤はやはり、今回の「党規約」にのせて正式に国家目標とした「一帯一路」だ。その実態は、中国本位であって中国の融資を受ける国々に芳しいものではない。一帯一路に参加する国に対して、中国は港湾、空港、高速道路などに戦略的に巨額融資を行い、返済しきれない負債を負わせることで、中国の経済、軍事、政治に従わせる意図がある。「一帯一路」が中国海軍のインド洋や太平洋における軍事インフラの構築や改善につながれば、日米などは自由な航海は出来なくなる。

中国は、インド洋周辺で港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」により、ハンバントナ港の建設費をスリランカ政府に貸し付けた。しかし、6.3%の高金利により、政府は債務の返済に窮し、11億ドル分の債務免除と引き換えに港湾を中国に99年間貸与せざるを得ない事態に追い込まれた。近隣国で起きた事態に、インドは中国の「一帯一路」の脅威に戦慄した。

日米両政府は11月6日の安倍首相とトランプ大統領との首脳会談で安倍首相は、自らが昨年表明した「自由で開かれたインド太平洋構想」にトランプ氏から賛同を得、日米が「自由で開かれたインド太平洋」をともに目指し努力していくことが出来たことは大きな意義があると強調した。11月10日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などで日米が同構想を各国に呼び掛けていく考えも示した。TPPを離脱したトランプ氏はオバマ前政権の「アジアリバランス」構想に代わる方針を打ち出す必要に迫られていたが、同戦略はトランプ政権に渡りに舟となった。

安倍首相は、昨年8月、ケニアで開かれたアフリカ開発会議の基調講演で、中国の「一帯一路」構想を念頭に、太平洋からペルシャ湾に至るインド太平洋地域を「自由と法の支配、市場経済を重んじる場」とし、ルールに基づくインフラ整備や貿易・投資、海洋の安全保障協力を進めなくてはならないと提唱した。

外務省がAPEC直前の11月3日に行った東南アジア諸国連合(ASEAN)10ヵ国の対日世論調査結果によると、「日本を信頼できる」との回答者は91%に達し、前回平成27年12月の調査73%から18%増加した。早速,「自由で開かれたインド太平洋構想」について、APECの場でアジアから高い信頼を得る日本と経済・軍事大国米国との同盟効果が問われる。
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