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2017年7月25日
米国凋落、トランプ政権6ヵ月。米国抜きが常態化する国際社会
米国でトランプ政権が誕生してわずか6カ月しか経たないのに、トランプ政権下の米国の国際社会におけるリーダーシップは目に見えて急速に衰えた。「米国第一主義」を掲げるトランプ政権は、保護貿易や移民問題、孤立主義を貫き、予想以上の混乱をもたらした。民主主義や自由経済の守護者を自負し、戦後の世界を主導してきた米国の劣化は明白だ。

トランプ大統領は、政権発足直後の1月23日に環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱するとした大統領令に署名し、ドイツ・ハンブルグで7月開催されたG20首脳会議において、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からも離脱を表明した。米国が国際協定から離脱すれば各国が動揺し、米国政府の思惑通り国際協定の再交渉に同意するとでも期待したのであろうか。

だが、米国が抜けた後も、事態の動きに揺らぎはない。TPPは米国抜きの参加11ヵ国が5月21日、ベトナムのハノイで閣僚会議を開き、TPP実現への声明を採択した。声明では11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの合意を目指し、TPP発効に向けた準備作業を終わらせるよう事務方に指示した。ベトナムと共に議長国を務めたニュージーランドのマクレー貿易相は会合終了後の記者会見で、「結束を示せたことに意味があり、日本のリーダーシップに感謝する」と述べた。また、パリ協定についても、米国を除くG20諸国は支える方針で一致した。米国の影響力は後退し、EUと中国の存在感が増す。

また4月6日の米中首脳会談では、最大の焦点は会談直前にも弾道ミサイル実験を強行した北朝鮮への対応であった。トランプ大統領は、中国が北朝鮮の核ミサイル開発を中止させるために協力しなければ、あらゆる武力を使って米国が単独で行動すると述べ、中国を誘い込んだが、逆にミサイル実験を繰り返す北朝鮮を前にして、今では中国とロシアが共同で米国の対北朝鮮政策の転換を求める状況だ。

一方、米国の保護主義が後押しとなり7月5日、なかなか進まなかった貿易協定が大筋合意に達した例がある。日本と欧州連合(EU)が、2013年に始めた日欧経済連携協定(EPA)だ。日本はTPPで米国に逃げられ、EUは停滞していた大西洋横断貿易投資連携協定(TTIP)を巡る米国との協議復活を期待したが、トランプ氏の保護主義により望みを断たれた。世界秩序が大きく変わり不透明となるなか、日欧は経済連携を加速させたというわけだ。ちなみに日欧EPAは世界の国内総生産(GDP)の3割を占める。

そして、米国の孤立主義による国際統治の空白をついて、中国の習近平国家主席は広域経済構想「一帯一路」を米国に容認させ、欧州や東南アジアの囲い込みに本腰を入れ出した。
ロシアのプーチン大統領も旧ソ連諸国と連携する「ユーラシア経済連合」構想の展開を狙う。「もう米国はオバマ時代のような世界の笑いものにはならない」、トランプ氏は胸を張るが、同盟国や友好国は苦笑し、対立国や敵対国がほくそ笑む。

内政は更に酷い。トランプ政権はオバマ政権の下で実現した医療保障制度オバマケアに代わる新たな制度、「ヘルスケア法案」の実現を最優先課題としてきたが、その審議が未だに続いており、上院が可決する目途がない。そして、そのヘルスケア法案の審議を最優先にしたため、目玉の大幅減税や大規模公共投資を求める予算案も議会を通過する見通しがない。共和党が上下両院の多数を占めているのに、である。

トランプ大統領誕生の母体は低所得白人労働者であり既成政治勢力を嫌う人々であったが、ワシントンで統治に係わっているのは、議会、司法、有識者、メディアなどの既成政治勢力そのものであり、これらの勢力のトランプ氏に対する反発は極めて強い。ましてその最たる共和党に、トランプ氏の恣意が簡単に通用する筈もない。

スキャンダル「ロシアンゲート」も深まるばかりだ。露骨に云えば、トランプ氏はロシア政府を使って大統領選挙に勝とうとしていたと云う疑いである。トランプ大統領はFBI長官に対しトランプ陣営にいたフリン前国家安全保障担当補佐官を捜査対象から外すように圧力をかけ、司法妨害を犯したのではないか、と云う嫌疑がかけられている。特別検察官の捜査が続いているが、年末までに捜査結果が出ることが予想され、結果次第では弾劾につながる可能性があり、仮に弾劾に至らなくてもトランプ大統領の政治的立場は相当に弱まると見られる。国内政治の不安定が、米国の対外的影響力を益々減衰させざるを得ない。

もはや米国一辺倒ではなく、日本は自らの意志で日米同盟を活用し、何よりも早急にアジアに強固な協力基盤を構築しなくてはならない。
以上

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