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2017年6月27日
日本経済に閉塞をもたらす人口減少?元凶は起業家精神なき企業トップ
日本の人口減少が鮮明だ。4月10日公表の国立社会保障・人口問題研究所による2065年までの将来推計人口によると、15年に1億2709万人だった総人口は53年には1億人を割り込み、50年後の65年には8808万人に減少する。15年に60.8%だった総人口に占める15〜64歳の生産年齢人口7728万人は、65年に同51.4% の4529万人に激減する。

次いで厚生省が6月2日発表した人口動態統計によれば、2016年に誕生した子供の数は97万6979人となり、1899年に統計をとり出して以来始めて100万人を割り込んだ。出産適齢期にあたる女性の人口が減り、いよいよ少子化に歯止めがかからない。統計をとり始めた日清戦争と日露戦争の間にあたる1899年の出生数は139万人、出生数のピークは団塊の世代が生まれた1949年の270万人だ。そして16年の婚姻数は前年より1万4633組少ない62万523組で戦後最少であった。これでは、出生数が増えるわけがない。

しかるに、現下は2012年12月に始まった「アベノミクス景気」が、1990年前後のバブル経済期を抜き、戦後3番目の長さになった。リーマン・ショックに端を発した世界金融恐慌からの回復に歩調を合わせ、円安による企業収益の改善や公共事業が景気を支える。完全失業率は1994年6月以来22年ぶりの2.8%、求人倍率は1972年2月以来43年ぶりの1.48倍の超完全雇用状態だ。本来なら社会は活況を呈しておかしくない筈が、特に内需の伸びが弱く実感なき回復だ。雇用環境は良くても賃金の伸びが限られているからだ。実際、就業者数は増えているが、時間ベースでみると総労働投入量は横ばいだ。高齢化によりフルタイムで働く労働者の引退が増えるなか、高齢者や主婦などの労働時間の短い労働者が増えても平均的な賃金は伸びず、むしろ平均賃金は下がる可能性が高いのだ。

何ゆえ、超完全雇用状態であるのに、社会には閉塞感が漂うばかりで活き活きとした動きが見られないのか。その元凶は1991年のバブル崩壊後の日本経済を担う筈の企業トップの徹底した経営リスクの回避にあった。低成長でもひたすらコスト削減で生き延びようとの風潮が蔓延し今日に至る。人件費のあくなき削減のため、正規社員の増員を避け、いつでも解雇できる低賃金の派遣社員やアルバイト、パートに依存する経営に徹し、販売増を見込むときは、超安価な賃金のアジア地域に生産拠点を築くパターンに固守した。そこには社会貢献の認識はおろか、企業の成長に不可欠な研究開発投資や設備投資、人材投資などの視点は一切見られない。婚姻数減少、少子化の所以だ。

現下の経営は、1人1人の労働者がつるはしやシャベルを持って道路工事をするイメージだ。すでにお年寄りまで駆り出している状況にあり、今も静かに着実に続く人口減少が間違いなく経営を縮小させ早晩、破綻を招く。翻って今日の完全雇用下で、きちんとしたフルタイムの労働者を確保するには、賃金などの待遇を上げるしかない。そして、その労働コストを賄うには1人当りの生産性を上げるしか方策はない。ブルドーザーやクレーンを発明し、現場に投入し、労働者にそれらを操縦する技能を身につけさせなくてはならない。日本企業は、今まさに技術革新(イノベーション)の必要性に追い込まれているのである。

日本企業はバブル崩壊後今日に至るまで何十年にも亘って、1人当りの生産性を向上させる、と云う発想を持たなかった。1人当り国内総生産(GDP)は、1997年は日本35,042ドル、米国31,553ドル、であったが、2016年は日本38,917ドル、米国57,436ドルと、日本はほぼ横ばいだが米国は約2倍に伸ばした。日本はランキングも97年の4位から16年には22位に激落した。無為無策の低賃金依存の当然の結果だ。

ドイツは日本と同じく人口減少に直面しているが、この国には人口減少による閉塞感はない。ドイツは世界に冠たる技術を誇り、2013年4月に産学官が挙げて立ち上げた情報技術による産業革命「インダストリー4.0」を、35年をゴールに展開中だ。つまり「第4次産業革命」による経済の活性化(生産性引上げ)を目指す。ちなみに、ドイツの1人当りのGDPは、1997年27,257ドルから2016年41,902ドルへ伸び、日本を追い抜いた。

また、日本はノーベル賞を3年連続で受賞するなど輝かしい成果を誇る科学技術国として世界から認知されているが、英科学誌「ネイチャー」は、日本はこの10年間で失速しており、科学界のエリートとしての地位が危ない、と警告調査結果を公表した。日本の若い研究者達は厳しい状況にあり、フルタイムで働けるポジションが少なくなっていると指摘する。

日本経済閉塞の原因は、人口減少ではなく、企業経営を担う企業トップにおける企業家精神の欠如にある。早急なる似非経営者の排除なしに日本の将来はない。
以上

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