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2017年5月29日
失望漂う「一帯一路」国際会議。100年早い中国、世界経済舵取り
中国の「一帯一路」国際会議は5月15日、2日間の日程を終えて閉幕した。15日採択した共同声明には、世界の貿易と投資の伸びが低迷していると指摘し、米国の「アメリカ・ファースト」を念頭に、自由貿易を推進しあらゆる保護主義に反対するとし、「一帯一路」の提起が、各国が共に自由で包容的な貿易体制を深め開放型経済の建設を推進する、重要な機会を提供したと盛り込まれた。習近平国家主席は会議終了後の記者会見で、幅広い合意に達し前向きな成果が得られたと述べた。中国国営新華社通信も社説で、「一帯一路」国際会議の成功は世界史における画期的な出来事として自画自賛した。果たして、そうか。

「一帯一路」構想は、習主席が2013年秋に、1978年のケ小平による改革開放以降、長きに亘った高度成長期が終わり、超過剰となった生産設備や労働力が国内の経済・社会に突き付けた厳しい社会不安を解消するために講じた外交戦略だ。もっともその下敷きは、習主席にライバル視され2012年に失脚した元重慶市トップの薄煕来氏が2011年にパソコン輸送手段として重慶と欧州間に開通させた直通貨物列車鉄道の建設、にある。国内で溢れかえった鉄鋼などの販売先を国外に求め、中国からヨーロッパに繋がるユーラシア大陸を「一帯」、中国から東南アジア、インド、アフリカを経てヨーロッパへ繋がる海上を「一路」とする、インフラ投資計画である。そして、中国は翌2014年秋に、「一帯一路」投資に必要な資金を世界から引き寄せる集金マシーンとして、アジア・インフラ・投資銀行「AIIB」を設立した。

「一帯一路」のインフラ沿線国はアジア、アフリカ、欧州の64ヵ国、「AIIB」加盟国は日米を除く先進自由主義国を含め77ヵ国に上る。会議には130ヵ国以上の1500人が参加したと云うが、首脳が参加したのは、ロシア、イタリア、インドネシアなど29ヵ国で全体の半分に満たない。鳴り物入りの「一帯一路」も「AIIB」も動きが鈍い。

中国は「一帯一路」会議に間に合わせるべく長らく滞っていた大型案件をようやく動かし、インドネシアの高速鉄道は14日に融資契約を締結し、アルゼンチンの原発建設も着工に踏み出したが、肝心の中国の「一帯一路」沿線国向け投資は、2016年は前年比▲2%、2017年第1四半期は前年同期比▲18%と大幅減だ。沿線国は政治体制も経済発展レベルもバラバラで、その人口は世界の6割を占めるが経済規模は3割に過ぎず、その大半が経済力の弱い新興国とあっては、その投資はリスクが高く収益率が低く、「一帯一路」は盛り上がるわけがない。また、「AIIB」も、これまでの実績ではアジア開発銀行(ADB)や世界銀行に乗りかかる「協調融資」が主で、独自の融資審査を行う金融ノウハウも人材も不足している。

もともと中国の余剰製造物資や余剰労働力の解消が目的の「一帯一路」戦略は、参加国の利害関係を思慮する姿勢に欠け、「中国ファースト」が常態化し、恩恵を受けるのは中国企業だけとの強い批判や、中国経済圏の拡大に資するだけとの疑念は高まるばかりで、これでは早晩、離反する国が読出し「一帯一路」は崩壊しかねない。

かかる流れの中で中国は存在感を示すため、習主席は「一帯一路」国際会議において、シルクロード基金に新たに1000億元(1兆6千億円)、インフラ建設向けの融資に3800億元(6兆円)、沿線の発展援助国と関連国際組織の援助に600億元(1兆円)、の(どの国も真似できない大規模の)資金を供給すると言明し、当会議で唯一の万雷の喝采を受けた。そして「一帯一路」は各国が共同で作った「グローバル公共財」であるとし、「地政学的な争いをしない」、「他国の内政干渉をしない」、「中国の制度と発展モデルの輸出をしない」等々、言葉を尽くして中国のワンマン色を薄め、「一帯一路」を国際的枠組みに脱皮させようと図った。

しかし、である。「一帯一路」国際会議の共同声明は、フランス、ドイツ、イギリスなどの欧州各国が求めた「投資の公正」や「透明度」、「環境保護」などの内容が無視され、一方的に中国ペースで作られたものとなり、欧州各国は署名を拒否した。欧州メディアは、中国は、「一帯一路」を通じて支援国への政治的影響力を増し、世界的な覇権の地位を狙っていると危惧した。現に中国周辺地域で、国際常設仲裁裁判所の決定に逆らい、南シナ海などで自ら緊張を高めるようでは、習主席が提唱する「平和で共に繁栄する道」など、誰も信用すまい。

かくて、「一帯一路」国際会議は中国が盛り上がるだけで全体としては失望感が漂うものとなったが、実は今回の会議には、各国の首脳が習主席の構想に賛同したと云う演出によって、今秋に開催される5年に1度の中国共産党の最重要事項を決定する「中国共産党全国代表大会」に向けて習主席の威信を高める狙いがあったとするのが至当だ。

中国が主役として世界の情勢に本格的な役割を果たすには、100年早い。
以上

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