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2017年2月6日
強い米経済・強いドル現出したIT産業。低付加価値産業に拘るトランプ氏の惑い
トランプ氏の米大統領就任後の1月25日、米ダウ工業株30種平均が史上初めて2万ドル台に乗せた。原動力は米国企業のIT(情報技術)を中心とするダイナミックな技術革新による新陳代謝だ。ダウが初めて1万ドルに乗せた1999年と比べると半数近い銘柄が変わった。時価総額上位2社は、1999年のゼネラル・エレクトリック、ウオールマート・ストアーズの製造や販売企業に代わり、2017年はアップル、マイクロソフトのIT企業が占めた。ちなみに日本も日経平均株価が上昇したが、26日終値は1万9402円で1999年末の1万8934円とほぼ変わらず、けん引役もほぼ変わらない。ただアップルなどの米企業は世界各地に生産・販売拠点を置くため、業績の伸びほどには雇用は増えない。また、次々とフエイスブックなどのIT企業が誕生する一方、鉄鋼業などが活力を失い退場する企業も多い。米国産業の新陳代謝の所以である。

かかる米国におけるIT産業の興隆は、米国の慢性的な赤字の経常収支を改善した。これまで米国は旺盛な需要で輸入と経常赤字を拡大させ、米国向け輸出増大を通じて他経済圏の景気を牽引してきた。しかし現在、米国経済は回復を続け、財の輸入が急増しているが、経常収支の赤字幅は拡大していない。経常収支赤字幅は国内総生産(GDP)比で、経常赤字のピークであった2006年の▲5.8%より、2014年は▲2.4%にドラステックに縮小した。かかる米国経常赤字縮小の背景は、サービス部門の輸出と海外投資からの収益の増大にある。サービス部門の輸出増大をもたらしたのはIT産業だ。

今日ではインターネットは世界のどの国でも企業や生活の必需品となり、もはやITなしに企業も個人も活動できなくなった。世界はITで覆われたのである。このITを圧倒的に担うのが米国企業であり、膨大なる口銭を稼ぐ。その勢いは空前の企業収益や過去最高値を更新する株価をみれば一目瞭然だ。21世紀に入って、IT産業は米国経済のファンダメンタルズ(経済成長率、物価上昇率、失業率、国際収支など経済の基礎的条件)を押し上げ、米国は、労働集約的な低付加価値製品を海外から輸入し、他の追随を許さない独占的な高付加価値製品を海外に売る、と云う経済に転換した。この経済構造により米経済は世界最強となり、ドル高は米国に有利に働き、強いドルが復活した。現下の勢いを維持すれば、6年で経常収支は黒字転換すると云う向きもある。かくて、米国は強いドルを絶対優位にあるIT産業にフルに活かす施策を志向すれば自ずと、米国は世界の経済戦争を制することが出来よう。

しかるに、トランプ氏は大統領就任早々ドル安志向を見せ、選挙で自身を支持した低所得白人労働者の雇用拡大のためか、海外から低付加価値製品の国内取込みを宣言した。しかし、である。2016年の米国の失業率は4.9%で、歴史的な低水準にある。リーマン・ショック後の2010年の9.6%をピークに減少の一途だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する長期失業者の数も2010年4月に記録した戦後最悪の680万人から2016年12月に183万人に減少した。つまり米経済はすでに完全雇用の状況にある。この上、労働市場を逼迫させてはインフレを高揚させそのつけは結局、トランプ氏を支持した人々に降りかかるだけだ。世界最強の経済大国の米国を後進国レベルで経営されては、米国も他国も堪ったものでない。
また、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱、保護主義、移民排斥、国境に壁、等々思いつくままに言明する。トランプ氏が27日、大統領令に署名し、テロ対策の観点からイランやイラクなどイスラム7ヵ国からの入国を90日間禁じたほか、難民受け入れを120日間停止することを命じたが、シアトル連邦地裁はこの大統領令の一時差し止めを決定、7ヵ国の出身者は米国に入国できるようになり、トランプ政権に大きな打撃となった。所詮、トランプ氏は不動産屋のボスがお似合いか。トランプ氏は、第2次大戦後米国が築いてきた世界秩序に些かも関心なく、現下の米国経済パワーを著しく貶めている。

かかる米国をほくそ笑み眺めているのは中国・習近平国家主席だ。トランプ氏が大統領就任する数日前、習主席はスイスのダボス会議で基調講演を行い、米国の孤立を受けて中国が、経済のグローバル化や自由貿易の推進において、世界でより大きな役割を担う意思を表明した。共産党一党独裁の中国が自由経済圏の救世主とは、何と云う不条理のことよ。しかし、中国の覇権防止を念頭においたTPPが、米国離脱により、早くもTPP加盟予定国からグローバル経済のリーダーとして中国の参入を歓迎する国が出始めた。

安倍首相は2月10日、トランプ大統領と会談する。トランプ氏の謂われなき日本批判を糺すだけでなく、トランプ氏に自由経済圏の盟主としての自覚を悟らせることが肝要だ。
以上

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