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2016年12月6日
トランプ、早々のTPP離脱宣言。ほくそ笑む、RCEP主導の習近平
米国第45代大統領に、まさかのドナルド・トランプ氏が選出された。政治経験も軍隊経験もない、アウトサイダーの大統領の誕生だ。トランプ氏の政治手法は、大衆に迎合する典型的なポピュリズムであり、日々の生活に潜む人々の不安や不満を煽りたて過激な言動で、既存の政治家では解決できないと喚きたて、出来そうもない政策目標を公約する。「米国第一」を標榜し、「移民受け入れ制限」、「保護貿易」、「大規模インフラ投資」、「大型減税」「規制緩和」などのキャッチフレーズは、移民や自由貿易によって仕事を奪われたと信ずる低所得白人層の心を鷲づかみ、トランプ氏勝利の原動力となった。

トランプ氏の勝利宣言によりニューヨーク市場は株価が上昇し為替もドル高となった。トランプ氏の大胆な成長路線を買ったのだ。お陰で経済政策に行き詰まった日本は何もしないのに、円安・株高の恩恵に与った。トランプ景気と騒ぐが果たして本物か、極めて疑わしい。輸入を抑制し、また現下の完全雇用状況にあるなかで移民を受け入れず、かつ大規模のインフラ投資や大胆な減税などの財政投資を実施するとなれば、インフレが高進し金利の高騰を招き、ドル高の進行に伴い輸出競争力は下落せざるを得ない。また、リーマンショック以降、長年にわたる緩和的な金融環境で低金利に慣れ切って営まれる企業や家庭が増えている現状下、市場金利の上昇は総需要を縮減させ国内景気の活力を失わせる。

かくて、経済成長率は伸び悩み財政収支が悪化し、ドル安傾向が定着し輸入物価が上昇し、不況とインフレが併存する最悪の「スタグフレーション」に陥る。低所得白人層に迎合したトランプ氏の公約は、むしろ低所得白人層を拡大し深刻な社会問題に繋がるだけだ。米国経済繁栄の基礎が、ほかならぬ自由貿易と移民促進にある所以だ。トランプ氏は事業に失敗し4度も破産の経歴を持つ。失敗してもやり直せばよい、と考えるのかも知れない。一企業ならともかく、国民の生命と財産を守らなくてはならない大統領の職務にやり直しはあり得ない。トランプ氏の言動に一貫性がなく無責任なイメージが付きまとう。トランプ氏に国際政治や経済の常識と良識があるのか、極めて疑わしい。

そのトランプ氏は、11月20日のペルー・APEC(アジア太平洋経済協力会議)で米国を含む各国首脳が保護主義への対抗を謳ったことに反応し即座に、大統領に就任する初日にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から離脱すると宣言した。TPPは米国の益にならない、と云う。TPPは米国が牽引し、参加国が利害を超えてまとめた合意だ。高水準の関税撤廃や知的財産保護、国有企業を巡るルールの整備など共産党一党独裁の現中国が容認し難い項目を盛り込み、中国の国家資本主義による覇権拡大の封じ込めも狙う。つまりTPPは経済的意味以上に外交的意味が大きい。ただ、圧倒的な経済大国・米国が離脱すれば、TPPは実現し難い。

トランプ氏のTPP離脱宣言は、中国にとってこの上ないチャンス到来だ。逸早く習近平主席は中国が世界貿易をリードすると表明し、中国が牽引するRCEP(東アジア地域包括的経済連携・米国参加不可)の早期妥結に意欲をみせた。早くもTPPを見限りRCEPに軸足をおく国が出始めた。このままでは中国が展開するインフラ投資構想「一帯一路」戦略と相俟ち、中国はRCEPを土台にして、APECが最終ゴールとする、APEC全加盟国が加入するFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の経済・貿易の基本ルールを、米国中心の規範ではなく、共産党一党独裁の堅持を目論む中国主導の規範で構築することとなろう。その時、米国は中国支配のアジア太平洋経済圏で存在感を見出せまい。

トランプ氏が、米国内ではコストが合わず海外へ生産拠点を移そうとしている製造企業を、失業者が出ると云う理由で移転を封じた、と悦に入る報道があったが、それも大事だが、それより何よりTPPを推進することだ。TPPの推進により加盟各国の経済・産業構造の変革が加速し膨大な需要が新規に生み出される。そして米国の繁栄に欠かせない経済・貿易の基盤が強化され、その時初めて、米国のパイは飛躍的に大きくなり、トランプ氏を支えた低所得白人層に生活向上をもたらされよう。そのためには米国はアジア太平洋地域での商圏を失ってはならない。断じて、TPP離脱により中国主導のRCEPに流れを渡してはならない。

日本国内もマスコミや評論家は、トランプ氏のTPP離脱宣言を受けて冷ややかに、TPP推進を図る安倍政権をみている。国会でも民進党も同じスタンスだ。情けないが、日本はこの程度の国だ。TPP批准に孤軍奮闘の安倍首相には、何としてもトランプ氏のTPP離脱宣言を翻意させて貰いたい。トランプ氏の大統領就任にはまだ時間がある。その成否にトランプ政権下の日米同盟の可否がかかる。
以上

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