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2016年11月1日
完全雇用でも消費が増えない! 人間重視の「日本型経営」は過去の遺物か?
デフレが深刻だ。総務省が10月28日発表した9月の家計調査によると、単身所帯を除く2人以上の所帯が使ったお金は26万7119円で、物価変動を除いた実質で前年同月比2.1%減少し、7ヵ月連続減となった。政府は台風や大雨の天候不順に主な原因があるとするが、果たしてそうか。

同日発表の全国消費者物価指数(15年=100)は価格変動の大きい生鮮食品を除く指数が99.6と前年同月比0.5%下落し、下落は7ヵ月連続だ。20日に発表の9月全国百貨店売上高は前年同月比0.5%減で7ヵ月連続減。24日発表の全国スーパー売上高は前年同月比3.2%減、2カ月連続の前年比割れ。経産省が31日に発表した9月の商業動態統計速報による小売業販売高(全店ベース)は前年同月比1.9%減となり、これも7ヵ月連続減となった。政府は大企業を中心に3年連続でベースアップが実現し、いずれ個人消費は底硬さを示すとしてきたが、その兆しはない。売上が回復しないため「特売」が増え、むしろ通常価格を値下げする動きが広がる。

安倍政権が打ち出したアベノミクス開始以降、国内総生産(GDP)の平均成長率は年率0.8%にとどまり、直近の2015年以降は僅か年率0.2%に過ぎない。ほゞ、ゼロ成長の中にありながら、労働需給の改善は続いている。現在失業率は3%に低下し、構造失業率(景気が好転しても無くならない慢性的失業率)の3%半ばを下回り、完全雇用の状況にある。有効求人倍率は1990年代初頭のバブル期に見せた高水準にある。働く意思と能力があり仕事を選ばなければ、殆どの人が職に就くことができると云う状況だ。今や経営者にとって一番の悩みは、需要不足ではなく、人手不足だ。

かかる完全雇用下では普通なら正規雇用が増え賃金が上昇するのだが、そうならないのが今日の日本経済だ。雇用が増加したのなら消費が回復基調に戻ると誰しも思うが、そうはならないのである。それは、雇用数が増えても、その多くが短時間労働者であるため、雇用が伸びても労働投入量(労働者数×労働時間)が増えないからだ。つまり1日1人分の仕事を2人で半日ずつ行う場合、雇用は増えるが労働投入量は増えない。雇用数が増えても雇用報酬は増え難く、消費が伸びない所以だ。

人口高齢化、人口減少が進行するなか、フルタイムで働ける労働者は減少しており、企業は短時間労働者を複数雇用することで労働力を維持している。雇用数は、これまでのどの景気拡大局面より大きく超える水準にあるが、労働投入量はリーマンショック直後の水準から変わっていない。今後、追加的な労働力として、配偶者控除の見直しなど就労促進的な制度による専業主婦がターゲットとされ、1人当りの労働時間の短縮化は更に進むものとみられる。これでは、完全雇用は名のみ、1人当りの生産性は低下するばかりで、1人当りのGDPは増加する筈もなく、15〜64歳の生産労働人口の減少に伴い、日本は衰退するしかない。現下の日本は、負のスパイラルに陥り、まことに不健康不健全な状態にある。

国の経済を牽引する企業は、常に競争力を強化するためのイノベーション(開発や経営革新)を図り、企業の生産性高度化を実現しなくては早晩、世界市場から淘汰されよう。にも、拘わらず、イノベーションを担う人材投資に目もくれず、技術もスキルもない安価な労働力に依存する経営に徹し、貯蓄に精を出す日本企業は異様そのものだ。資本主義社会では、基本的には貯蓄をするのは家計で、カネを借りてでも投資するのが企業だ。企業が最大の貯蓄主体になっているところに、日本経済における資金循環の閉塞がある。経済界はことある毎に政府に景気回復を云い募るが、デフレの元凶が己(おのれ)自身にあることを知るべきだ。

一方、雇用の意識も変わってきた。独立行政法人労働政策研究・研修機構が9月23日に公表した「第7回勤労生活に関する調査」によると、「終身雇用」を支持する割合が1999年の72.3%から2015年は87.9%となり過去最高となった。なかでも、1999年調査では20〜29歳、30〜39歳の終身雇用支持率が、それぞれ67.0%、69.1%であったが、2015年では、それぞれ87.3%、88.4%にハネ上がった。なお、当調査の対象者構成は雇用者52.0%、正規社員26.2%、非正規社員20.9%で行われ,雇用者も終身雇用を支持する結果となった。

日本を経済大国に成し上げた人間重視の「日本型経営」は、冷戦終結とともに襲来した米国発の新自由主義によるグローバル化の激流に破壊され、1人当りGDPは、世界の諸国が著しい成長をみせるなか、日本は四半世紀前の水準に未だに戻せず迷走中だ。「日本型経営」を過去の遺物としてはならない。日本経営の原点に戻るときだ。
以上

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