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2016年9月1日
資源依存脱皮を希求するアフリカ。1000万人人材育成、安倍首相明言
日本が主導する第6回アフリカ開発会議(TICAD6)が8月28日、ケニアの首都ナイロビで、産業の構造改革、保健システムの強化、社会安定化の促進、の3分野を優先的に取り組むナイロビ宣言を採択して閉幕した。TICAD6の開幕にあたり安倍首相が基調演説を行い、質の高いインフラ投資の拡大や産業多角化を担う1000万人の人材育成、エボラ出血などの感染症対策の強化を通じてアフリカの安定的な発展を官民一体で支援する方針を表明し、ナイロビ宣言はこれを確認するものとなった。安倍首相とアフリカ54カ国のうちのほぼ半数の首脳、国連や国際機関の代表が出席した。

TICADは、1989年の冷戦終結後のごたごたで世界に取り残され貧困に喘ぐアフリカに日本が逸早く手を差し伸べ、アフリカの開発と安定を話し合う国際会議として1993年に東京で初めて開催された。その後5年毎に日本で開催され、23年目の今回の6回目はアフリカの強い要望があり初めてアフリカで開催されることになった。経団連を初め約70の企業が首相に同行し、日本がアフリカの開発に本格的に取り組む姿勢を示した。

しかるに、アフリカは中国が圧倒的な存在感を見せつける。今世紀に入って、中国要人が訪問したアフリカの国は延べ104カ国に対し日本は延べ43カ国に過ぎない。首相の訪問は、森、小泉各首相がそれぞれ1回、安倍首相の2回の合計4回で訪問国は延べ11ヵ国だが、中国は国家主席が延べ23カ国、外相が延べ60カ国に達する。現地在留数は中国100万人、日本8千人。進出企業数は、中国2000社、日本687社。2015年の対アフリカ貿易額は中国1350億ドル、日本150憶ドル。日本の遅れは明々白々だ。

中国のアフリカ進出は、中国が5年連続の2桁経済成長を遂げた2003年〜2007年における原油などの資源の調達を執拗にアフリカに求めたことに起因する。胡錦濤主席と温家宝首相が手分けしてなりふり構わず資源の爆買いに狂奔する姿があった。お陰でアフリカは資源輸出で好況を享受し消費が旺盛となったが、その消費の対象製品は悉く海外からの輸入に頼らざるを得ない。米さえも、である。実は労働人口の6割が農業に従事しているのだが、農業の生産性は世界最低レベルにある。アフリカは原油や鉱物資源を産出できても、モノを製造する能力はない。これでは国際収支が豊かになる筈もない。

2008年のリーマン・ショック以降、中国は長い経済低迷のなかにあり、アフリカからの資源爆買いは消えた。原油や鉱物資源の需要が激減し、価格が格段に下落した。2003年以降1バレル100ドル台で推移してきた原油価格は2016年1月に1バレル20ドル台に下がった。アフリカの国内総生産(GDP)の6割は原油に依存し、原油価格の下落は致命的だ。鉄鉱石、銅、ニッケルなどの鉱物資源の価格も下落した。そのためアフリカ経済を牽引してきた資源輸出が低迷し、経常収支の悪化、通貨下落、消費の低迷が進行する。今日、アフリカが資源輸出一本槍の経済から産業の多様化へ産業構造の改革を希求する所以だ。

かかるなかで、習近平国家主席は昨年12月、南アフリカで開催した中国・アフリカ協力フォーラムでインフラ開発や農業支援のために600憶ドル(約6兆円)の支援を約束した。対する日本は、今回のTICAD6で官民合わせて3年で300憶ドル(約3兆円)の投資を約束した。暗黒大陸と云われた極貧のアフリカに必要なのは巨額の援助であったが、資源国としての地位を確立し、現在、産業の多様化に迫られるアフリカにとって何より大事なのは、新産業の導入とその構築、更に生産性アップとイノベーションを担う人材の育成だ。それには日本の民間製造企業のアフリカ進出が欠かせない。東南アジアの今日の繁栄は日本の民間製造企業の自発的な進出による人から人への技術移転があったからこそである。
 その日本の民間製造企業にアフリカ進出の気概があるのか、極めて疑問だ。経団連は今年1月、「アフリカの持続可能な成長に貢献するために〜TICAD6に向けた経済界のアフリカ戦略」を発表した。アフリカの人口(現在12億人)が2040年に25億人を超え、中国やインドを追い抜き巨大な消費市場が出現する、との認識を示す。だが、日本企業がアフリカで活動するためには平和と安定の確保が最優先の課題とし、アフリカ自身の取り組みが十分に進んでいないとアフリカを批判する。そしてインフラ整備に関しては積極的に日本製インフラを売り込む姿勢を見せるが、農業や製造業等の産業育成への投資については明言がない。

確かにアフリカは紛争やテロが止まず、リスクはある。だが、アフリカが日本の技術を切望する今こそ、日本はリスクを取り渾身の力を込めて応えなくては、アフリカは日本から遠のくばかりだ。断じて、安倍首相の所信表明を竜頭蛇尾にしてはならない。
以上

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