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2016年6月29日
晴天の霹靂、英国EU離脱。直後に広がる後悔の声
英国は6月23日、英国史に最大の汚点として間違いなく残る愚かな国家戦略を選択した。前身の欧州共同体(EC) から40年以上の長きに亘って連れ添ってきた欧州連合(EU) からの離脱である。国民投票の結果、「離脱」51.9%、「残留」48.1%の僅差でEU離脱を決定した。この決定により英国はEUに離脱の通知を行い、その2年後にEUから離脱することになるが、離脱に伴いEU圏のヒト・モノ・カネの自由な移動などの権益を失う。

つまりEU内は関税ゼロ、国境を越える際のパスポートコントロールなし、の特典を失うことにより、英国の輸出が悉く関税や煩雑な手続きが課せられるようになり輸出の大幅減は避けられない。英国の輸出に占めるEU向けのシェアが50%もあり、打撃は極めて大きい。更に、EUへの玄関口として英国にビジネス拠点を築いてきた海外企業も拠点の軸足を大陸のEU地域へ移転せざるを得ない。日本企業は、日立製作やトヨタ、日産、キャノン、ソニー等1100社が生産拠点を置く。いずれも英国のEU離脱に驚きを隠さず、競争力維持の観点から今後の動向を見てしっかり対応する、と云う。

そして何より懸念すべきは、英国経済の屋台骨を支える金融業の行く末だ。ロンドンには、シティを中心に世界の250の銀行が拠点を置き、ロンドンの外国為替取引量は世界の41%を占め、ニューヨーク19%、シンガポール6%、日本6%を圧倒的に引き離す。また、海外銀行はロンドンに拠点を開設すれば、ユーロ圏の地域ならどこででも自由に営業所を設置できる。まさにロンドンは国際金融センターである。しかし、EU離脱となれば、欧州共通通貨ユーロの取引が激減するだけでなく、海外の大手金融機関が拠点をロンドンからEUに移すのは必至だ。英国金融業が大揺れに揺らぐ所以である。

ちなみにEUは、独仏の資源争奪戦から発生した戦乱を回避し、欧州の恒久的平和と経済の繁栄のために1952年、西ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの6ヵ国で設立された欧州石炭鋼鉄共同体(ECSC)に端を発し、1958年に欧州経済共同体(EEC)、1967年に欧州共同体(EC)と進化し、1973年に英国・アイルランド・デンマーク、1981年にギリシア、1993年にスペイン、ポルトガルが加盟した。そして経済と政治の統合を目指して1993年に現在の欧州連合(EU)に発展し、1995年にオーストリア・フィンランド・スウェーデン、2004年にキプロス・チェコ・エストニア・ラトビア・リトアニア・ハンガリー・マルタ・ポーランド・スロバキア・スロベニア、2007年にブルガリア、ルーマニア、2013年にクロアチアが順次加盟し、現在は28カ国に及ぶ。

何ゆえ英国は自ら、国が崩壊しかねない危機を選択したのか。元凶はキャメロン首相にあるのは明白だ。2004年以降、英国内ではEUに加入した東欧諸国からの移民が増え、「低賃金の移民に職を奪われる」との不満が低所得層に募っていた。キャメロン首相が率いる与党保守党のボリス・ジョンソン(前ロンドン市長)は、この不満を煽り、移民の流入を防ぐにはEU離脱しかないと訴え支持を集めた。キャメロン首相はかかる党内のEU離脱の高まりをかわすため、2013年1月、EU離脱の是非を問う国民投票の実施を宣言した。

時間をかけ冷静に考えれば、EU残留なしに英国経済は成り立たないことなど、誰もが分かることだ、とキャメロン首相は高を括ったのだろう。考えはその通りだ。だが、低所得層など生活の改善が見通せない国民が怒りを以って国民投票で下した決定は、キャメロン首相の思惑外れとなり、辞職に追い込まれた。理性が感情にふっ飛ばされたと云うわけだ。

しかるに、勝利を収めたEU離脱派の政治家らは、「6月23日は独立記念日」と雄叫びを上げたが、一夜明ければ、バラ色の公約の反故が相次ぎ、離脱に票を投じた人々から後悔の声が広がり出した。たちまち選挙やり直しの署名が3百万人を突破し、英国の政治は混乱のなかにある。これから英国はEUとの離脱交渉に入るが、相当に厳しいものにならざるを得ない。EUは結束を深めるための具とする筈だ。英国の今後の進路は全く見えない。

英国のEU離脱により週末の東京市場は為替・株式ともに大荒れとなった。だが、週明けに落ち着きを取り戻した。また、英国のドミノ現象が心配されたが、英国の混乱をみて、6月26日のスペインの総選挙は、穏健派政党が勝利し、波乱もなく平穏な結果となった。

日本は英国の苦境を座視してはならない。日英同盟の友誼があり、また英国は欧州でドイツに次ぐ輸出先(2015年度実績1兆4000億円)だ。EUからの離脱後を見据え、英国のEU離脱を歓迎する声明を出した中国・ロシアに先駆け、可及的速やかに貿易協定を結ぶことだ。
以上

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