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2016年5月30日
「国際版3本の矢」G7伊勢志摩。過敏反応、中国
日本が主催する主要7ヵ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)は5月27日午前、世界経済に下方リスクが高まりつつある現状を認識し、世界経済を支えるため、あらゆる経済政策による対応を協力して強化する、とした首脳宣言を採択した。経済政策の中身について、もともと財政出動に積極的な日米仏と消極的なドイツ・イギリスに温度差があったが、新たな危機に陥ることを避けるために適宜、すべての政策手段、金融、財政、構造改革を個別に総合的に用いると明記し、金融緩和、財政出動、構造改革の「3本の矢」の重要な役割を再認識するとし、概ね日本の思惑どおりとなった。

会議では執拗に自国の利益を求める中国問題も俎上に上がった。中国の景気減速で、同国内で使い切れなくなった大量の鉄鋼製品がダンピングとも目される超安価で世界に溢れ、欧米では鉄鋼業界の工場閉鎖が相次ぐ。G7でかかる問題に言及するのはめったにないが、市場競争を歪める政府による赤字鉄鋼企業への補助金などの支援を止めるよう求めると明記した。改善されなければ、G7は結束して世界貿易機構(WTO)のルールに則り対抗措置をとる姿勢を示した。

そして、日本が最も重視する「海洋の安全保障」として、名指しはしなかったが、中国による南シナ海の軍事拠点化を念頭に、安倍首相が2014年にシンガポールで表明した3原則に基づき、「国際法に基づく主張」、「自国の主張を通すため力や威圧を用いない」、「法的手続き等の平和的な手段による紛争解決」が盛り込まれた。

かかるG7首脳会議の動きに中国は敏感に反応した。G7伊勢志摩サミットが開幕する26日、中国の王毅外相は今年9月に中国で開催するG20サミットについて、メンバー国だけで世界の人口の3分の2を占め、経済規模も世界の85%を占めると述べ、G20は先進国と発展途上国が対等のテーブルにつき国際経済を話し合うもので時代の潮流に適合しているとし、G20こそが世界経済を話し合うのにより適した枠組みだ、と強調した。中国抜きで話し合われることに異議を唱えたかったのであろう。そして地域の緊張を高めることはすべきでないと、南シナ海問題について日米を牽制した。

鉄余りの根本的な問題について張商務次官補は、世界の景気落ち込みによるもので、皆が力を合わせて立ち向かうべきだと述べた。中国の鉄鋼は国営であり、その縮小は大量の失業者を生み出し共産党政権の基盤を揺るがしかねない。習近平主席が描く「陸と海のシルクロード」の「一帯一路」の着手が待たれる、と云うことか。

南シナ海問題の声明について、中国外務省の華春螢報道官は、「日本はG7の議長国の立場を利用して南シナ海問題を騒ぎ立て緊張した状況を作り出した。地域の安定に役立たない」と日本を名指しで非難した。また他のG7に参加する国々に対しても、客観且つ公正な態度を持ち、領土問題で中立的な立場をとり、無責任な言論を発表することを慎んでもらいたいと不快感を表明した。

図らずも、G7と中国との対立の構図が出現したわけだが、もともとG7(先進7ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議。米・英・独・仏・伊・日・加)は1976年に先進国間の協議の場として生まれ、その後、先進国と発展途上国との対話の場に変わり、1998年にロシアの参加が決まりG8となった。そして翌1999年に米・英・独・仏・伊・日・加・豪・中国・韓国・ブラジル・アルゼンチン・ロシア・インドネシア・メキシコ・インド・サウジアラビア・南ア・トルコ・欧州連合の20ヵ国によってG20が創設された。

今回はウクライナ問題を引き起こしたロシアが外れG7となったが、ロシア・中国の台頭や米国の威信低下で国際秩序は不安定になり、G20などの大きな枠組みがうまく機能しない状況のなかで、伊勢志摩サミットによってG7の存在意義が改めて確認されるところとなった。仮に今回のサミットがロシアを含むG8なら、中国の立場を配慮したいロシアの意向を受けて、かくも中国問題を率直に取り上げることは出来ずいつもの通り、首脳宣言は訳の分からないものとなったであろう。

G7の各国はそれぞれ異なる国内外の事情を抱えるが、G7には民主主義の共通理念があり、共通の価値観と問題意識があり、平和的に問題解決にあたるスタンスがある。伊勢志摩サミットで採択された事項は必ず実現されなくてはならない。ただ、その展開の中で中国と衝突することがあっても、中国封じ込めや中国排除を画策してはならない。13億人の経済大国の中国を国際秩序にいかに取り込むか、が大事だ。
以上

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