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2016年1月31日
世界を揺るがす未熟なる経済大国。通貨火遊びで外貨準備高激減
年明け初日より世界の株式市場は米国金利引上げ、原油価格暴落、中国人民元安・株安で大幅下げの事態になった。このうち米国金利引上げと原油価格暴落は昨年に発生し、新年に事を起こしたのは中国の人民元安・株安だ。4日の上海外国為替市場は1ドル=6.5120元に下落、2011年4月以来の安値で始まった。中国人民銀行が取引前に人民元の対ドル基準値を2011年5月以来4年半ぶりの安値となる6.5032元に設定したことに起因する。

もともと中国経済が弱体化するなかでの人民元の引下げは、多くの投資家に中国からの資本流出懸念をもたらす。人民元の下げ幅拡大で同日の中国株式市場は7%下落し、この日から導入したサーキットブレーカ(取引停止)が早くも発動し、終日取引が停止となった。この中国ショックが世界の株式市場を揺るがし、年初の第1週で世界の株式は23兆ドル(270兆円)を吹っ飛ばした、と云われる。

ちなみにサーキットブレーカ制度はNYダウ平均が1日で20%下落した、1987年10月のブラックマンデーをきっかけにその翌年に米国で生まれた。株式市場で売りが売りを呼んで株価の下落が止まらないとき、下落幅が一定の基準になれば取引を強制的に止め、投資家の頭を冷やすために設けた制度だ。米国では、特定銘柄が10%以上暴落したとき30分、30%暴落したとき2時間、取引が停止する。2008年秋に発生した米国発の金融危機の際に発動されたが、めったに起きることはない。中国の形だけのモノ真似は余りに稚拙すぎる。7日も同じ事件が再発し、わずか4日でサーキットブレーカを停止した。

問題は中国に学習能力がないことだ。間違ったことを平気でまたやる、のである。今回が初めてではない。昨年の夏8月11日、中国人民銀行は突然、2%の人民元の切り下げを行い、その後3日連続で切り下げ、下落幅は4.5%に達した。この人民元切り下げによって世界連鎖株安が引き起こされたことは記憶に新しい。何ゆえ、かかる過ちを中国は繰り返すのか。

そもそも1978年ケ小平の改革開放から胡錦濤前政権に至る30数年間における中国の驚異の成長を牽引したのは、インフラ投資や設備投資、住宅投資などの総固定資本形成と輸出だ。だが、今日の中国は、リーマン・ショック直後の不況対策として実施した4兆元(57兆円)の超大型投資による過剰設備に呻吟し、新たなる固定資本投資は望めない。だから、景気回復には輸出拡大しかない、とするのは中国にとって自然の流れなのかも知れない。

その流れで、中国は人民元を切り下げて輸出拡大を狙うのであるが、現下の中国製品にかってのような国際競争力の勢いはなく、為替レートのいじくりではどうにもならない。安価な労働力を「売り」に日米欧から労働集約的低付加価値製品の直接投資を呼び込み、「世界の工場」の異名をとったが、賃金が高騰した現在、相も変わらない低付加価値製品では、後発の低賃金諸国に勝てるわけがない。

通貨切り下げで順調に輸出が増え経済が活性化するのであれば中国の株式市場は大いに活気づく筈だが、そうはならない経済実態を知る共産党幹部や経営者、資産家などの富裕層は人民元切り下げによる資産の目減りを回避するため海外へ資本を流出させる。資本が流出すれば通貨は更に下がり資本流出のスパイラルに陥り、行き着く先は国家破綻しかない。人民元の底割れを防ぐために中国人民銀行は必死にドルを売って元を買い支えなくてはならない。

ため込んだ虎の子の外貨準備高は2014年6月に過去最大の3兆9900億ドルに達したが、わずか1年半で6600億ドル減少し2015年末には3兆3300億ドルになった。昨年12月は1カ月だけで1079憶ドル減少した。2016年末の外貨準備高は3兆ドル割れが必至とされ、まさにつるべ落としの様相であり、このままでは数年で底をつく。

経済を活性化するには通貨介入ではなく、先ず、鉄鋼、セメント、板ガラス、非鉄金属、石炭、造船などの基幹産業を担う国有企業の過剰設備や過剰人員のリストラに着手し民営化を図るなど構造改革を推進することだ。だが、こんな当たり前が出来ないところに中国共産党独裁政権の限界がある。大量の失業者が出るのは必定で、間違いなく社会不安が高まり政権への怨嗟や批判は渦巻くことだろう。共産党独裁政権崩壊の火種になることはやらない。

だから政権は汚職摘発や言論統制にはうるさいが、経済立て直しのロードマップを示したことはない。この国は深刻な経済危機に直面しているのに、現状を「新常態」と評論するだけで、習近平主席も李克強首相も経済について語ることはない。市場経済をどうにでもコントロール出来ると考えているのだろう。アジアインフラ投資銀行も、と。

そして懲りもせず通貨介入を続けるのだろう、国が地獄に落ちるまで。
以上

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