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2015年12月28日
荒野の中央ユーラシアに向かう中国。集金エンジン、AIIBの前途不明
中国は、1978年のケ小平の改革開放以来、胡錦濤政権に至るまで、30数年続いた年率10%の高い経済成長がリーマン・ショックを端緒とする世界金融恐慌によって終焉し、急速に低成長時代を迎えた2013年、国家トップに就任した習近平主席は起死回生の経済政策を打ち出す必要性に迫られた。

習主席が描いたのは、「一帯一路」で、中国から欧州に至る地域を鉄道や道路、海上航路でつなぐ「陸と海の新シルクロード」構想だ。膨大な過剰設備が生み出す膨大なる生産物の吐口を求める窮余の策として、インフラを軸とする実利主義で周辺国を引きつける戦略である。もとより所得が低く人口が少ない荒涼とした中央ユーラシア地域などへの投資は採算が悪いのは明白で,不良債権が頻発する可能性は極めて高い。中国は先刻承知だ。狙いは中国の実効支配圏の拡大だ。

「一帯一路」の第1号と目される事業が始まった。12月2日、ラオスの首都ビエンチャンから中国の国境に近いボーデンを結ぶ、総距離430キロメートルの高速鉄道の起工式があった。総事業費60億ドル(7200億円)、中国が7割を拠出し、残り3割は借款で支援する破格の条件だ。中国鉄路総公司が建設を担う。ラオスは人口700万人足らずの貧しい小国であり、採算は困難でこの国が借款に耐えられるか、極めて疑問だ。資金回収には長年月がかかるが、中国にとってラオスを実効支配下におくことが出来れば安いモノだ。
 ラオスの一件に見るように、「一帯一路」にはまことに超長期に寝かせる莫大な資金が必要だ。中国が独自に創設した「シルクロード基金」の400憶ドルなどは大海の一滴にもなるまい。国際的集金エンジンを担うアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の所以である。中国・北京に本部をおき、総裁は中国人、唯一拒否権を持ち、運営を管理監督する常任理事会は設けないとする、まさに中国のための国際金融機関だ。2015年3月末に57カ国が設立メンバーになった。メンバーにこれまで米国と常に協調関係にあった英・独・仏などの欧州勢が米国の意に反して名を連ね、中国さえも予想外の展開となった。

そのAIIBは12月25日、設立に必要な法的手続きをとり正式に発足した。年明けに初めての総会を開き、開業する運びとなった。AIIB設立趣旨に沿う運営が望まれるところだ。だが、しかし、当初はともかく、深刻な国内経済に一刻も早い成果を急がなくてはならない中国はやがて、インフラ投資において自国のプレゼンス拡大を優先し、援助もひも付きで中国の国有企業が受注するケースが続出する流れとなる可能性は大いにある。

その際、加盟国の欧州勢が中国を牽制することはまずない。欧州勢は出資額も限定的で、AIIBそのものより中国13億人の巨大市場がお目当てだ。また、圧倒的な軍事力を持つ米国の牽制を無視して南シナ海の島嶼に侵略する国が、紳士面の欧州勢に遠慮するわけがない。ただ、中国の横暴が顕在化し中国主導のAIIBの国際的信用に疵ついたとき、たちまちAIIBは瓦解するしかない。経済的治安的に火種が拡大しつつある共産党独裁・中国には、今後そのリスクが高まらざるを得ないことも確かだ。

それより何より中国経済立て直しに必要なのは、陳腐なる国営産業の延命を謀るのではなく、産業のスクラップ・アンド・ビルドだ。中国を世界2の経済大国にのし上げたのは、「世界の工場」と囃された製造業であるが、今ではその技術や設備は旧態依然たるものが多く、その製品は富裕層の中国人自体が見向きもしないと云うレベルだ。日本で増える彼らの爆買いは、その証左である。その上、近年日米欧の技術先進国から盛んに直接投資を誘致した東南アジアの新興諸国の経済発展は目覚ましく、中国一人勝ちの時代は過去のものとなった。中国経済の快進撃を牽引した輸出が低迷するのは当然の帰結だ。

しかるに、基礎技術の基盤が未だ整っていない中国が、産業のスクラップ・アンド・ビルドを推進するには、やはり日米欧から先進技術を導入するしかない。かっては豊富な低賃金労働者を「売り」に海外企業を誘致し技術導入に成功したが、賃金が高騰した今日、知的財産権の保護もなく、いつ何をされるか分からない、いわゆるチャイナ・リスクを冒してまで中国進出を企てる企業は少ない。逆に中国撤退企業が多いのが現実だ。なお、10月に大筋合意した日米主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)による打撃は中国経済にとって致命傷になりかねない。中国経済再建の道は杳として見えない。

AIIB誕生に世界の注目が賑々しく集まるが、中国そのものが行き詰まりの様相を深めており、AIIBの前途は不透明だ。断じて中国の実効支配圏拡大の具とさせてはならない。
以上

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