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2015年12月13日
TPPに乗っ取られたマニラAPEC。アジアで孤立する中国、未だに見えぬAIIB
フィリピン・マニラで開かれていた日米中や東南アジア諸国連合(ASEAN)など21カ国・地域でつくるアジア太平洋経済協力会議(APEC)は11月19日、パリ同時多発テロを受けて「あらゆるテロ行為を非難する」とする首脳宣言を採択したが、中国が南シナ海で人工島造成や軍事拠点化を進める不法行為は議題にもならず、首脳宣言にも入らなかった。中国が、APEC開催前に議長国のフィリピンに王毅外相を派遣し南シナ海問題を議題にしないように、そして習近平国家主席が島嶼で中国と争うベトナムを訪問し、それぞれ経済援助などを条件に親中国のスタンスを明確にするよう手を打ったからだ。

だが、しかし、引き続き22日にマレーシア・クアラルンプールで開催された東アジア首脳会議(EAS)では、日米やASEANなど多くの国が南シナ海への懸念を表明し、議長声明では、南シナ海問題を巡る「複数の首脳による深刻な懸念」を明記した。中国は、議長声明に「懸念」を入れることに猛烈に反発したが、日米の意向を反映し中国に釘を刺す内容となった。ただ、この声明で中国が行動を改めそうもないが、米国は10月、海軍のイージス駆逐艦を人工島の12カイリ内を航行させる「航行の自由」作戦に踏み切り、米中の軋轢激化は避けられない。米国の南シナ海介入が中国のシナ海進出に変化をもたらすのは、間違いない。

APEC首脳会議でも、今回のマニラAPECは昨年秋の北京APECとは、すっかり様子が変わった。北京APECは、まさに議長国・習主席の一人舞台であった。APECに合わせて北京の米国大使館で行われた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首脳会議の低調ぶりを尻目に、習主席は北京から欧州に繋がる陸路と海路のインフラ投資の「一帯一路」構想をぶち上げ、その資金調達エンジンとして中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を提唱した。

そもそも「一帯一路」は中国経済の減速・低迷による国営企業の過剰生産能力を解消するのが狙いだが、インフラの充実を渇望するASEANなど周辺諸国は大歓迎で、今年3月31日締め切りのAIIB設立創設メンバーは57カ国にのぼり、アジア各国はもとより英国・ドイツ・フランスらの欧州各国に及んだ。AIIBは、本部は北京、総裁は中国人、運営を管理監督する常駐理事は置かないとする、中国のための国際金融機関として今月12月末に設立の予定だが、具体的な運営構想はいまだに示されていない。

しかるに、今回のマニラAPECは、大筋合意後初めてのTPP加盟国の会合開催に乗っ取られる形となった。会合には、日本の安倍首相や米国のオバマ大統領ら12カ国すべての首脳が参加し、協定の早期発効を目指す声明を採択した。TPPはアジア太平洋地域において、モノの関税だけではなく、サービス、投資の自由化、知的財産、金融サービス、国有企業の優遇廃止など、21世紀型のルールを構築する経済連携協定だ。たちまちフィリピン、韓国、インドネシア、タイ、台湾などから加盟の意向が示された。TPP発効を先取りして中国からベトナムなどのTPP加盟国に工場を移設するなど、企業の動きも活発になった。

そして何より大事なことは、TPP大筋合意によって日米が、APECが目指すアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築する主導権を握ったことだ。昨年の北京APEC首脳会議ではFTAAPを早期実現する宣言を行った。議長国の新経済大国・中国がFTAAPの構築を牽引できると踏んだわけだが、その目論見は頓挫した。日米は大筋合意したTPPの意義を各国にアピールしTPPを基礎に、FTAAPにおけるルール作りを主導し、アジア太平洋の広域にわたる自由貿易圏の構築を牽引することになる。皮肉なことに、中国は国営企業のウエイトが高く、先進国企業の模造品生産が横行するなど、TPP加盟条件をクリアできず現行のままでは、TPP加盟は不可能で、FTAAPから弾け飛ばされる。

中国は、日米が主導するTPPの大筋合意によって孤立を招きかねないとする危機感をもち、9月にインドネシアで見せた高速鉄道の常識を逸する安値受注に引き続き、12月2日、ラオスの鉄道建設を破格の条件で着工した。鉄道や道路の建設で周辺国との関係を深めたいのであろう。「一帯一路」の第1弾と云うが、所得が低く人口700万人に満たない国には負担が重すぎるとの見方がある。安全、保守等の品質も問われる。日本は今回のマニラAPECで、途上国インフラ入札について改善の必要性を訴え、価格だけでなく、品質や長期的な運用コスト、安全対策、工期、環境破壊などの総合評価方式に基づく新制度を提案し、合意された。

北京のひどすぎる大気汚染を見るにつけ、中国がAIIBをフル回転させ、「一帯一路」を御旗に地球を荒らされては堪ったものではない、と懸念せざるを得ない。通貨「元」のSDR入りを機に、先ず中国は国際ルールを遵守する国柄に進化すべきだ。
以上

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