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2015年10月22日
TPP大筋合意、中国でなく我々が!!英国AIIB参加表明のわけ
「中国のような国でなく我々が世界経済のルールをつくる」、オバマ大統領は日米など12カ国で5年半の交渉を経て10月5日、ようやく大筋合意となった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を前にして雄叫びを挙げた。米国の本音がストレートに伝わってくる。中国台頭を懸念する日本も同じ思いだ。安倍首相は、「TPPは基本的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配)を共有する国々と相互依存関係を深め、将来的に中国も参加すれば我が国の安全保障にとってもアジア太平洋地域の安定にも大きく寄与し、戦略的にも大きな意義がある」と述べた。国内総生産(GDP)ベースで世界の40%、人口8.1億人を擁する巨大経済圏の誕生だ。

TPPは、関税撤廃だけでなく環境保護まで含めた31分野の広い範囲の経済活動について高水準の自由化と域内の共通基盤となるルールをつくったところに意義があり、21世紀の国際基準となり得る野心的な協定だ。ただ、中国はTPPを本心から警戒する。協定には、知的財産権の保護や国有企業優遇の制限・廃止、投資の自由化が明確に謳われるが、中国では世界の有力製品の模造品生産が盛んであり、また国有企業が全体の4割を超え、更に生産手段の私有化を認めないとなれば、現状ではTPPに参加することは事実上困難だ。

何より中国が恐れているのは、TPP加盟国が共有する基本的価値観だ。西側諸国の自由、民主主義等の価値観が国内に入れば、たちまち民主化が起こり、中国共産党独裁支配は崩壊する。大都市に鬱積している知的な大衆の不満と地方で抑圧されている異民族の反発は日増しに高まっている。この動きを押えるためにあらゆる手段で言論統制をしている様子はリアルタイムで世界中に伝播する。また、共産党独裁への怨嗟をかわすため、事実でない「南京大虐殺文書」のユネスコ記憶遺産登録や南シナ海、東シナ海侵攻によるナショナリズム煽動など目に余る行為が多くなった。歴史上で繰り返されてきた、滅ぶ間際の兆候に他ならない。

一方、習近平主席は、TPPに対抗して中国主導の経済圏を構築するために、「一帯一路」なる中国からヨーロッパに至るユーラシア大陸のインフラ構想と海上よりアセアンを取り込みヨーロッパに至るインフラ構想をぶち上げ、これを推進するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に動いた。AIIBは、北京に本部を置き中国人を総裁に据え、事務局を監督する常駐理事会を置かず、まさに中国のための国際金融機関であるが、その設立メンバーに英国が参加表明するやヨーロッパ主要国が一斉に雪崩れ込んだ。これまで何かにつけ米国と協調してきた英国だけに、その出来事は衝撃的であったが、それには訳がある。

2012年5月、中国政府の反対を押し切って英国キャメロン首相はダライ・ラマ14世と会談し、チャールズ皇太子もダライ・ラマ14世を自宅に招き歓待した。当時、胡錦濤主席の中国政府は内政干渉として抗議した。以降、英中間の経済関係は冷え切り、英国へのチャイナ・マネー流入が激減し、リーマン・ショックで疲弊していた英国は極度の経済危機に晒された。背に腹を変えられない英国は2013年12月、キャメロン首相が中国を訪問し習近平主席に、英国は西側諸国における最強の中国支持国になる、と屈服した。だが、習近平主席は手を緩めず、2014年3月、オランダ・ハーグで開かれた核ミサイル・サミット閉幕後のヨーロッパ歴訪から英国を外した。英国は恐怖を覚えたであろう。今年3月1日、ウイリアム王子が中国を表敬訪問、そして3月12日、英国はAIIB設立メンバーに参加表明をしたと云うわけだ。習近平主席は10月19日より国賓待遇で英国に滞在する。確かに、オバマ大統領が言うように、中国のような国に世界のルールを書かせたくないのは、むべ、なるかな。

その中国の国家統計局が10月19日公表した2015年7〜9月期のGDPは、実質成長率が前年同期比6.9%となり、7%割れはリーマン・ショック後の09年1〜3月期以来、6年半ぶりだ。前期(4〜6月期)より0.1%減速した。同時に発表された7〜9月期の鉱工業生産も減速し、輸出額も3カ月連続で前年を下回る。政府が次の成長エンジンとする小売の伸びもパッとしない。内外需に明るさが見えず、工場閉鎖が相次ぐ中で、ほんのこの前まで10%以上の高成長を見せた面影はない。習近平主席が言う「新常態」への具体策は未だに何もない。

世界第2の経済大国となった中国経済の成行きに世界が注目しているが、TPPの大筋合意で、その累積原産地規則によりTPP加盟国間の工業製品(原材料、中間財、組立完成品)のやり取りが関税無税となるため、日米などの企業が賃金高騰の中国からTPP加盟国へ工場移転を加速するのは自然の流れであり、中国経済に更なる打撃となるのは避けられない。

先述の安倍首相が、「TPPに将来的に中国が参加すれば」、と云う「中国」はその時には、自由、民主主義、基本的人権、法の支配を共有し合う国に変貌しているに違いない。
以上

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