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2015年9月24日
ナショナリズム高揚に追い込まれた習政権。積極的平和主義に舵を切った安保法
中国が対日戦勝記念日とする9月3日、北京・天安門前広場で「中国人民抗日戦争及び世界反ファシスト戦争勝利70周年記念」式典と軍事パレードが行われた。政治と軍事を掌握した習近平主席の威厳を国内外に示す異例の演出となった。そして米国本土を攻撃できる大陸間弾道ミサイルなどの新鋭とする武器を長々と見せつけた。

「中華民族は平和を愛し、中国は永遠に覇権を唱えず、永遠に領土を拡張しない」、と習主席は演説したが、信用するものはいない。「中国の夢」を国民に説き、その実現のため世界の覇権を唱え、南シナ海で領土拡張に執念を燃やし、近隣諸国の抗議を無視し、今日では米国の諌めにも聞く耳を持たなくなった。中国が南シナ海の岩礁を埋立て、飛行場を建設した映像は世界に衝撃を与えた。また、東シナ海では日中中間線に沿って中国がガス田を次々と開発し、中国軍のヘリコプター基地になるプラットフォーム建設を急加速させ、更に尖閣諸島取込みを公言し日本領海の侵入を常態化させる。

中国がかかる覇権に走るのにはわけがある。1978年ケ小平の改革開放以降、胡錦濤主席時代までの35年間は年10%の経済成長をみせたが、2008年に発生したリーマンショックで終焉した。それまで低付加価値製品の大量生産を支えてきた低賃金が高騰し、後進新興国との競争力がなくなり、中国経済の大黒柱であった輸出が冴えなくなった。その上、景気回復策の4兆元・巨額投資が過剰設備を氾濫させ、製品価格は下落しデフレ懸念を生み出した。

もはや「世界の工場」に戻ることはできないとみた習主席は、「新常態」を宣言し、規模拡大と速さ重視の高成長から質と効率を重視した中低速成長へ移行する旨を表明した。だが、その具体的な手立ては未だに示されず、9月4日、トルコのアンカラで開催された20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の討議で、中国の楼継偉財政相が自国の先行きについて、今後5年間は厳しい状態が続く、もしかしたら10年間かも知れないと述べた。

更に、人口動態を展望したとき、毛沢東が進めた多産奨励策は約20年続き、このベビーブーム世代が近く次々と高齢者となる一方、1979年に施行した1人っ子政策のツケが生産年齢人口の激減をきたし、日本以上の高齢社会を迎える。中国は経済大国であるが、内実は1人当りの所得が日本の17%に過ぎず、豊かになる前に経済の高成長が消えた恨みが残る。

経済の好転が望めず雇用不安が高まれば、国民の怨嗟が政権(中国共産党独裁)に向かうのは自然の流れで、政権はナショナリズムを使わざるを得ない状況に追い込まれる。外敵をつくりナショナリズムを高揚させ、国内を引き締める段階に中国は立ち至った。

極めてリスキーな軍事大国を隣国にもつなかで、9月19日、安全保障関連法が参議院で可決成立し、日本と日本国民を戦争の危険性から守る法的基盤が整い、日本はようやく現実的な安全保障システムを持つことができるようになった。その核心は集団的自衛権の行使容認だ。有事に際し仲間の国同士が共に助け合って戦うのは当り前で、国連憲章でも、自分の国が攻撃されたときや仲間の国が攻撃されたときは、武力で反撃できる、とし、自分の国を守る「個別自衛権」、仲間の国を守る「集団的自衛権」が認められている。だが、この国では、集団的自衛権行使容認が憲法違反だとする野党の抵抗で衆参両院とも強行採決となった。

近隣で間近に危機が迫っていると云うのに、内輪の憲法問題で揉めるとは、平和ボケもいい加減にして貰いたい。違憲論者は、日本が戦後70年間、平和に過ごせたのは平和憲法のお陰と思っているようだが、それは違う。日米同盟の根幹にあたる日米安全保障条約で日本が米国の防衛下にあったからだ。この条約は米国が日本を防衛する義務があるが、日本が米国を防衛する義務はないとする片務条約だ。当安保条約締結の時代背景となった米ソ冷戦が終結し、財政大幅赤字・経常収支大幅赤字の双子の赤字を抱えた米国は軍事費を年々削減し今日に至る。日米同盟を深化するために片務条約を双方条約に是正するのは当然の帰結だ。

今回の安保法案審議で違憲の混乱を招いたのは憲法学者だ。安保法が定める「武力行使の新3要件」は極めて限定的で憲法の制約の枠内にあり合憲だ。疑義があるなら最高裁の判断を仰げばよい。そして、何より見落としてはならないのは、現憲法は米国が、日本敗戦にあたり、日本に再び武器を持てないようにする憲法を策定し、占領下の1946年に制定させたものであることだ。憲法改正が望まれる所以だ。

安保法の制定によって日本の安全保障は消極的平和主義から積極的平和主義に舵を切り、歴史的な転換を迎えた。日米同盟と国際連携を強化し抑止力を高めて日本の安全を確実にするだけでなく、中国の覇権行動を自制させ、アジアの安定と繁栄に寄与しなくてはならない。
以上

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