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2015年9月1日
圧倒的存在感を見せる中国の虚実。新常態、具体的施策見えず
中国は、国内総生産(GDP)で2010年に日本を抜き、2014年に購買力平価(PPP)ベースで米国を抜き世界最大の経済大国となり、2015年末に中国が主導するアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の設立では、米国の反対を押し切った欧州主要国の参加を取り付け、世界に圧倒的な存在感を見せつけた。ちなみに6月、米国世論調査会社ピュー・リサーチ・センターが世界40カ国の国民を対象に行った、「米国はスーパーパワーの地位を維持できるのか、それとも中国に取って代わられるのか」の調査では、欧州の全ての国で、中国が米国を代替するとの見方を示し、米国ではほぼ拮抗し、日本では圧倒的な比率で米国がスーパーパワーを維持する、とした。

その中国が、今、経済低迷の真っ只中にある。2015年1〜7月の固定資産投資は前年同期比11.2%増と2014年通年の15.7%増から大きくダウンした。7月の輸出額は前年同月比8.3%の大幅減、新車販売台数は同7.1%の大幅減となった。これらを受けて雇用でも、4〜6月期の全国101都市の公的就業サービス機構における求人数は前年同期比5.4%減少した。1〜6月のGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.5%と2014年通年のプラス0.8%からマイナスに転じ、7月の工業生産者出荷価格(PPI)も同マイナス5.4%と大きく下落しデフレ圧力が強まった。だから、今年上期GDP成長率は政府の掲げる目標に沿う7%であった、とする中国公表を信じるものは少ない。鉄道貨物輸送量や電力消費量の低迷動向から見て、GDP成長率は3%以下とする観測がある。

かかる沈滞状況を改善するため、中国人民銀行(中央銀行)は昨年11月より今年の6月末まで4度の利下げを行い、また輸出条件を有利にするため8月11日から3日間人民元の基準値を大幅に切り下げた。更に4月21日、中国共産党中央委員会機関紙・人民日報はウエブサイトの論説で、実体経済や企業業績改善の裏付けがないのに株式市場を煽った。「中国株の強気相場は始まったばかりだ。株価の急伸は中国の潜在成長力を反映したものでバブルではない」、と。これに乗った個人投資家(中国では全投資家の80%を占める)が信用取引を思い切り膨らませた熱気で、上海総合株価指数は6月12日にピークの5166ポイントに急騰した。

だが、次々と厳しい経済の実態情報が明らかになるにつれ、株式市場は急速に不安定になり、信用取引規制の実施と共に、売りが売りを呼ぶスパイラルに陥り、8月25日に2965ポイントまで暴落した。政府はなりふり構わぬ株価対策に追われる。ここからが中国の中国たるところだ。何と株式の売買停止が行われた。急落を避けたい企業の申請が相次ぎ、一時はその数は上場企業の半分以上に上った。また、国有企業111社に株を売らせない措置をとった。だが、これらの強引な株式対策は、株価浮揚の切り札にはならなかった。結局、個人投資家の損失確定売りが進んで中国株は徐々に安定するしかないのだが、「法の支配」が不十分な中国では株式市場が低迷すると、すぐ政治介入に走る。株価急落で損をした人々の間に広がる共産党政権への不信感を小さい内に削がなくては、この国では政権存続の可否に繋がりかねないのだ。

何より懸念されるのは、リーマンショック直後に実施された4兆元の景気対策で生じた不動産バルブとそこから派生した巨額のシャドウバンキングの動きだ。中国指数研究所が発表した中国主要100都市の7月の住宅平均価格は前年同期比1.38%下落した。昨年夏より中央政府と地方政府は不動産購買規制を悉く撤廃し不動産売買に必死にテコ入れしたが、不動産市場の低迷と価格の下落を防ぐことは出来なかった。中国国務院発展研究センター李偉主任が人民日報に寄稿し、2015年の経済情勢について、長年蓄積してきた不動産バブルは需要の委縮で崩壊する可能性があると述べた。不動産バブルが崩壊し、これに関連するシャドウバンキングが破綻し全国規模の金融恐慌となれば、中国経済成長云々どころの話しではない。

そして、「世界の工場」と世界から囃され、ケ小平の改革開放以来長きに亘って中国経済を牽引してきた製造業は今なお、労働集約的低付加価値製品のコピー量産の域を出ず賃金高騰によって、後進新興国製造企業の価格競争力に抑えられ、昔日の勢いは全くない。習近平国家主席は昨年5月、初めて「新常態」を語り、昨年11月のAPECで「経済の牽引力を投資駆動からイノベーション駆動へ転換する」と演説した。だが、未だに具体的な動きは一切見えない。これでは、中国の迷走は深まるばかりで将来展望は不透明だ。

9月3日、「抗日戦争勝利70周年」の記念行事にロシア・韓国などの各首脳を招き、軍事パレードで国威を発揚するが、国の内実は真に厳しい。中国の虚実に惑わされてはならない。
以上

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