商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2015年8月12日
「新型の大国関係」変じて「新型の冷戦」 異見者弾圧・強硬外交に走る習近平
中国経済の実態は国の公表より格段に悪化していると云われる。中国国家統計局が先月発表した今年上半期の国内総生産(GDP)伸び率は7.0%で、政府が掲げる2015年通年目標に沿う形となった。だが、ロンドンのアナリストらの試算ではその半分以下とみて、今年の中国GDP成長率を2.8%と予想する。英国調査機関の中には、中国の公式GDP成長率予想を公表するのをやめ、実際の成長率と見做す数値を公表するところが出て来た。

ちなみに中国公表の4〜6月期のGDP伸び率は1〜3月期に引き続き7.0%だ。しかるに7月の卸売物価は前年同月比5.4%下落、下落は41か月連続で企業活動の鈍さが深まった。7月の新車販売台数は前年同期比7.1%減で4カ月連続のマイナスとなり、個人消費者の新車買い控えが広がった。また7月の輸出は前年同月比8.3%減で、1〜7月累計でも前年を0.8%下回った。輸出不振は国内景気が減速する中国経済にとって大きな懸念材料だ。これら主要指標の動きをみるにつけ、中国経済が急減速の危機状態にあるのは間違いなく、中国公表のGDP伸び率には少なからず疑問を抱かざるを得ないのは、むべ、なるかな、である。

中国は、ケ小平による1978年の改革開放以来、胡錦濤前国家主席時代に至る約35年間、毎年10%以上の高度経済成長を成し遂げてきた。その成長モデルを支えたのは、政府による持続的な固定資産投資や先進国からのアグレッシブな直接投資、大量の低廉製品の輸出であった。その結果、2010年にGDPで日本を追い抜き世界2位の経済大国にのし上がった。

その中国が突然、高度成長から低成長に陥るきっかけとなったのは、2008年に世界経済を襲ったリーマンショックだ。世界の国々が厳しい不況に耐えるなかを、中国は景気対策に4兆元の巨額資金を投じて国内のインフラ整備や鉄鋼・石油化学などの国営企業の設備拡大、高層住宅建設を断行した。だが世界経済が低迷する下で、経済大国とは云え、国民1人当りの所得が低い国民に逞しい消費力があるわけもなく、それらの巨額投資は回収され難い過剰設備と化し、現下に見られる経済悪化の元凶となった。高度成長を支えた政府の固定資産投資は膨大な遊休設備を前にして極めて控えめとなり、海外からの直接投資は労働コスト高騰で撤退が相次ぎ激減状況となり、肝心の輸出は相も変らぬ低廉製品とあっては、後発新興国のコスト力に抑えられ昔日の勢いはない。この国は冬の季節を迎えたと云わざるを得ない。

習近平国家主席は2012年11月、高度成長が終焉し低成長が「新常態」と宣言せざるを得ない経済環境のなかで誕生した。米国を初め世界の習主席に対する期待は大きかった。もともと、WTOに代表される国際貿易体制など米国を中心とする西側先進国が作ったシステムに依拠し、改革開放路線下の中国を支援すれば中国経済は成長し中国国民の所得が高まり、中産階級が増えることによって中国の政治は民主化に向けて動く、との見方があり、ケ小平・江沢民・胡錦濤の各時代にもその流れが見られた。オバマ米大統領が習主席の「新型の大国関係」に関心を示し、中国に配慮する姿勢を示したのも、その思いがあったのであろう。

しかし、習主席は、高度成長を享受し諸国との友好関係を維持した歴代主席とは全く違った。就任と同時に、経済的難局に直面し存亡の危機にある共産党独裁政権を維持するために、内政では政治組織の腐敗キャンペーンを徹底し、人権派弁護士の拘束やキリスト教会弾圧などによる言論統制・異見者排除を強化した。外政では、西側先進国の既得権益との衝突を厭わず何が何でも中国独自の価値観に基づく世界を構築する姿勢を前面に出した。

習主席は、世界銀行・国際通貨基金・アジア開発銀行などの国際金融機関を擁する米国主導の世界金融体制に対抗して、中国主導のアジアインフラ投資銀行を今年末に設立する運びだ。参加国に英独仏など欧州勢が名を連ね、これまで自由主義陣営で協調関係にあった米欧が初めて割れる結果となった。また、東シナ海や南シナ海などの海外地域への進出を加速させる。中国政府の「国防白書」では、陸軍重視の軍の思考を海上重視に切り替える方針を明示し、海軍を近海型から遠海型へ、空軍を領空防護型から攻防兼務型へ変更する動きだ。

かかる中国の変貌に、オバマ大統領の中国観は中国容認から中国警戒に変じ、米中関係は「新型の冷戦」時代に突入した。昨年4月、来日したオバマ大統領は尖閣領域が日米安全保障条約5条の適用範囲であることを公式に言明し、日本の安全保障へのコミットメントを一段と鮮明にした。そしてその延長線上に、新たな日米防衛協力方針の策定があり、今4月の安倍首相の米議会招聘に繋がった。アジアで台頭する中国の脅威に日米が連帯して対峙する機が整った。安倍首相は日本を「一国平和主義」から集団的自衛権を容認する「積極的平和主義」に舵を切った。日米同盟の深化なしにアジアの安定はない。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。