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2015年6月9日
中国低成長、過ぎ去りし人口ボーナス。蛮行、南シナ海埋立て軍事利用表明
中国税関総督が6月8日発表した5月の貿易統計によると、輸出は前年同期比2.5%減の1907億ドル、輸入は17.6%減の1312億ドルで、輸出は3ヵ月連続減、輸入は7カ月連続減となった。なお、輸出の3ヵ月連続減はリーマン・ショックで1年間、輸出が前年を下回った2008〜09年以来の事態だ。輸出不振は、最大の貿易先・欧州で景気低迷が続いていることがあるが、根源は賃金上昇のコスト高で輸出競争力が失われたことによる。一方、輸入の大幅減は、鉄鉱石や原油などの原材料のほか、金属加工機械や自動車の輸入が減った。商品価格の下落が輸入額を押えたのに加えて、国内消費が弱いためだ。中国政府は今年、輸出入を合わせた貿易総額6%増を目標に掲げるが、1〜5月の貿易総額は前年同期比8%減となり、内外需の低迷が益々深まった。

まさに中国はこれまでの「高成長」の時代から低成長を「新常態」とする時代への転換期を迎えた、と云えよう。ならば、これまでの高い経済成長を支えたのは何か。それは中国が人口ボーナスを享受していたのだ。人口ボーナスとは、一国の人口構成で、0〜14歳以下の子供と65歳以上の老人が少なく、15〜64歳の生産年齢人口が多い状態を云う。このような国は「若い国」とも呼ばれ、工業化による所得増、消費の活発化、都市化の進展などにより高い経済成長率を生み出す。中国の人口ボーナス発生時期は1965年であるが、文化大革命で混乱し、それが経済成長に繋がるのは1978年のケ小平による改革開放以降だ。この国の人口ボーナスの終了時期は2010年であり、2010年に国内総生産(GDP)で日本を抜き米国に次ぐ世界2位に台頭したが、今や経済成長の盛りは過ぎた、とみられる。

ちなみに日本の人口ボーナス期は、1950年〜1990年の40年間である。朝鮮特需に端を発し神武景気(1954〜1957年)、岩戸景気(1958〜1961年)、いざなぎ景気(1965〜1970年)を経て、ジャパン・アズ・ナンバーワンの世界大国に日本を成し上げた。だが、人口ボーナスが終焉した1990年以降、日本は長い経済低迷期に入り今日、人口オーナス期の中で呻吟している。人口オーナスとは、人口構成の変化が経済にとってマイナスに働く状態を云い、生産年齢人口が急減し高齢人口が急増する状態を云う。社会保障費が増え、貯蓄率が低下し、ひいては投資率が低下し、成長率を引き下げる作用をする。日本はアジアで最も早く人口ボーナスが出現し、そして最も早く終了した。

中国は1979年に始めた1人っ子政策により生産年齢人口の伸びが止まり、急速に高齢化が進むため、高度成長は遅く始まったが早く終了し,オーナス期に入った。人口ボーナスが消滅した中国が経済の活路を拓くには基本的に輸出力を強化するしかないが、中国の主たる製品は低付加価値製品の域を出ず、後発新興国企業のコスト競争力に押されがちだ。中国は高付加価値製品へのレベルアップを図るため、日本など先進国企業の対中投資を誘うが、むしろ中国から東南アジア諸国連合(アセアン)やインドへ移転する動きが目立つ。

そのアセアンやインドは、現在、人口ボーナスの真っ只中にある。アセアンは今年2015年末にアセアン共同体(AEC)が発足する。ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンで人口ボーナスは2020乃至2040年まで続く。インドは2040年まで続く。これらの国々では、生産年齢人口の予備軍である14歳以下の人口が総人口の3割を占めており、今後の高度成長を支える。日米欧がアジアに熱い視線を送るのは、むべなるかな、である。

しかるに、経済相互依存の深化は、国際協調を促し安全保障上の抑止力になると昔から云われるが、中国は当たらない。周辺国との経済相互依存を深めながら南シナ海の領有権を巡るアセアンとの対立が絶えない。中国軍の孫建国・副総参謀長(海軍上将)は5月31日、アジア安全保障会議(シンガポール・シャングリラ・ダイアローグ)で、中国が南シナ海で進める岩礁埋立てや施設建設は中止しないと表明し、埋め立ての目的を「軍事防衛のため」とし、軍事利用を明確に認めた。軍事利用を厭わず南シナ海における実効支配の既成事実化を進めてゆくとなればアジア地域に緊張が高まるのは必至だ。海上封鎖など海上輸送の自由が阻害されれば、たちまち日本も致命的な打撃を蒙るに違いない。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)を主導して設立中にもかかわらず、かかる蛮行は中国政府が内政に行き詰まっているからではないか。政権が軍部を制御できなければ、世界にとってこれほどリスクの高い国はない。一刻も早く共産党一党独裁国家から人民による民主主義国家に脱皮するときだ。その時、中国は、圧政から自由に目覚めた人民が国際ルールに則り世界の人々との交流を深め、高次元の経済成長に向けて歩み始めるに違いない。
以上

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