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2015年4月26日
AIIBを梃にTPP早期妥結を。アジア太平洋に不可欠な日米帯同
安倍首相は4月26日夕刻、オバマ大統領の「国賓級待遇」の招きにより渡米した。28日ワシントンDCで日米首脳会談、29日に米議会上下両院合同会議で歴代首相として初めての演説を行う。両首脳は安全保障、経済の両面で日米同盟の結束を強化する姿勢を打ち出す。その後、東海岸を離れ西海岸のサンフランシスコ、ロスアンジェルスまで足を運ぶ。日本政府は戦後70年を迎え、日米関係の大きな節目と位置付ける。

安全保障分野では、前日の27日にニューヨークで日米外務・防衛閣僚会合(2プラス2)があり、18年ぶりの日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定が行われる。改定ガイドラインには、日本懸案の尖閣諸島などの離島防衛を明記することになり、一方、米国が要求してきた停戦前の中東やホルムズ海峡での機雷除去が可能となる。共同声明では海洋進出を活発化させる中国を念頭に、両国ともに力による現状変更に反対する立場を明確にし、日米両国が国際法の遵守などの価値観を共有するパートナーとして、世界の平和と繁栄に貢献することを確認する。

経済分野では、何と云っても両首脳が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期締結に向けて連携することが肝要だ。日米やベトナムなど12カ国が交渉している次世代の貿易協定であるTPPは、参加国間の関税撤廃だけでなく、知的財産の保護や国有企業改革などを含めた共通ルールの整備を掲げている。高度な協定を求めるだけに困難を伴うが、しかし一刻の猶予も今は、許されない。

その背景に中国の存在がある。中国は今日にあっても、ベトナム、フィリピン、台湾が領有権を主張する南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島やフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるミスチーフ礁などに侵入し埋め立て作業を強行している。こう云う蛮行を重ねる中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーに57ヵ国が参加した。そのメンバーにアセアン諸国を初めアジアの国々があるのは当然としても、中国と領土問題を争う国も含まれ、さらに驚くべきは駆け込みで英国、ドイツ、フランス、イタリヤのG7国を初め自由陣営のヨーロッパ勢がドミノ崩しのように連なったことだ。

そのわけは、米国の内向きにある。アラブの春のあと嵐が吹きすさび中東が荒廃したときも、ロシアがクルミアを奪取したときも、米国は行動を起こさなかった。米国はかって有事に台湾海峡に艦隊を派遣しアジアを守ったが、中国・習近平国家主席より「新型大国関係」をもちかけられて以降、その姿勢が見られず、アセアンにおける信頼を失う。同盟の日本にも、靖国参拝を控えるようお達しがある。中国に気を遣っているのである。これではヨーロパ勢やアジア勢(日本は別)が米国離れするのも無理はない。中国がワルイ国であっても、おカネを持っているから付き合おう、となるのか。まことにお寒い時代を迎えた。

斯くして、中国は軍事力と経済力を急速につけ、「一帯一路」のシルクロード政策とAIIB政策を携えて、愈々アジア地域での秩序づくりに着手した。だが、逸早くアジアに目をつけたのはオバマ大統領だ。2011年、11月のオーストラリア訪問時に、目覚ましい経済発展が息吹くアジア太平洋地域を「最優先事項の一つ」と述べたのを緒として、これまでの北大西洋を中心とする世界戦略を見直し、日本・韓国・オーストラリアなどの同盟国との関係を再強化し、軍事・外交の重心をアジア太平洋地域に移行した。リバランス政策だ。

米国のTPP加盟は2010年である。だがTPPの進展は中々捗らない。TPPは失業者を生み出すと云う、内向きのためだ。議会は、オバマ大統領に未だにTPPに関する強い通商交渉の権限を委任する貿易促進権限(TPA)を与えていない。オバマ大統領は、中国にアジアを支配されてしまうと、米国は今後20年、30年、アジア市場から弾き飛ばされるだろう、と説得に努める。さすがに日米以外の国が洋の東西を問わず中国主導のAIIBに靡くさまを見て、このほどやっとTPAは、上院財政委員会、下院歳入委員会でTPA法案を可決し、4月16日、超党派で両院の本会議に付された。

日本にとってもアジアを中国だけが主導する経済圏にしないために、米国との帯同が絶対不可欠だ。TPPは自由な経済圏を築き、地域の経済発展と安全保障に資するもので、日米は交渉の早期妥結に向けてなお一層主導的役割を果たすべきだ。AIIBを通じて起きた中国の影響力拡大が却って日米の早期妥結の梃になるに違いない。

なお、今回の首脳会談で日米同盟を深化させ、米国のリバランス政策と日本の積極的平和主義で、アジア太平洋地域並びに世界の平和と安定を期したいものだ。
以上

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