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2015年4月2日
AIIB参加51ヵ国、日米孤立?共産党独裁を支える切り札か
最大出資国は中国、本部は北京、総裁は中国人とする中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設メンバーの届け出は3月31日に締め切られ、参加は51カ国になった。締め切りを間近に控えた3月12日の英国参加が欧州勢にドミノ現象をもたらし、中国は、孫子の兵法よろしく、戦わずして勝ったと云う感が漂う。不参加の日米は孤立した、と日本メディアは囃す。果たして、そうか。

日米には、1966年設立のアジア開発銀行(ADB)がある。日米が最大の出資国(ともに15.7%)で、本部はフィリピン・マニラ、歴代総裁は日本人である。日米以外の出資国はアジア域内の中国やインド、アセアンを初め、域外の英独仏など欧州勢を含め67ヵ国。貸出先は1位中国、2位インド、3位インドネシア、4位パキスタン、5位ベトナム、6位フィリピンで、交通やエネルギー、水のインフラなどの建設に資し、実績に対する評価が高く、アジアの経済発展に貢献してきた。

ところで、途上国の交通やエネルギー、水などの大きなインフラの建設には巨額の資金を長期に貸し付ける必要があり、その貸付資金を国際金融機関は債券を発行して調達する。資金調達する上で重要なのはその金融機関に対する格付けだ。ADBの格付けはトリプルAであり、最も低い利回りのADB債で資金を調達できる。
ADBはトリプルAを確保するため、不良債権が発生しないように万全の体制を整えている。何と云っても、ガバナンス。運営は高い透明性の中で行われ、理事会がインフラ・プロジェクト融資を決定する。それにはインフラ・プロジェクト案件の資金額、人権問題、環境問題の妥当性を的確に評価するノウハウが不可欠だ。そして当然のことながら、担当者が業者とグルになって汚職腐敗を起こさないシステムと品格が備われなくてはならない。ADBは不良債権ゼロで、信用度は高い。

一方、AIIB。提唱者の習近平国家主席の狙いは、リーマンショック直後に世界不況対策として実施した、野放図な大型景気対策「4兆元投資」による後遺症の経済苦境から脱することにある。2015年の国内総生産(GDP)の目標成長率を7%前後に減速し、人民に「新常態に備えよ」と号令したが、実態はマイナス成長に入ったと云う情報もあり、相当深刻な状況にあることは間違いない。潤沢な外貨準備をアジアの大規模インフラ建設に融資し、自国企業に受注機会を与え、過剰となった生産資材を海外に輸出し、あわせて溢れる労働者の海外進出を図りたい。なお、潤沢な外貨準備と云うが、大量の外貨を稼ぎ出したあの「世界の工場」は現在その面影はなく、外貨を借入れやシンジケートローンで積み上げる局面に変わった。

また、中国のGDPが日本の2倍となり、米国に次ぐ経済大国になったと云うが、1人当りの国民所得が日本の僅か14%の貧しい国だ。今後、1979年に始めた一人っ子政策で生産人口は減少し、高齢者の比重が急速に増え、社会不安は増すばかりだ。かかる国が国際金融機関の使命としての信用を担うことが出来るのか、極めて疑問だ。その上、中国は経済大国を頻りに口にするが、未だに為替管理を徹底している。為替を不当に安くコントロールし、米国からそのアンフェアの是正を指摘されているが、顧みようとしない。更に近年は、軍事力を拡大し近隣諸国に脅威を与え続ける。また、汚職塗れの政治組織は周知の通りだ。このような国が、本当に、国際金融機関のリーダーになり得るのか。再度、問う。

そもそも中国政府の最大の政策目標はあくまでも、「共産党一党独裁体制」の維持だ。中国を視る時、片時も見落としてはならない原理原則である。共産党政権創設から数えて第5世代になった習近平主席は、国内に「力」を見せつけるために、「中国主導の金融・経済制度創設によるアジア太平洋構想」を発表した、昨年11月のAPEC終了直後の中央外事工作会議で「中国主導の国際ルール構築」を宣言した。習近平主席が「共産党一党独裁体制」の延命を遂行するには、AIIBを自国のために運営することが必須であり、そのために理事を置かず、中国政府が任命する中国人総裁が中国政府の政治判断によってインフラ融資案件を決定することにならざるを得ない。つまり、AIIBは習近平主席に統括されると云うことだ。

なれば、日米主導の下に構築してきた国際開発金融秩序は、中国主導による不良債権や人権・環境問題、汚職の多発で崩壊し、世界は混乱に陥りかねない。AIIB創設メンバーの参加国はよもや、「中国共産党一党独裁体制」の延命を支援する考えではあるまい。

これから行われるAIIB創設メンバー会合で参加国は、中国の思惑を炙り出し、中国主導のアジアインフラ投資銀行とは何か、を見極め、改めて参加の可否を決めるべきだ。
以上

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