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2015年3月16日
中国主導投資銀行、英国参加声明。AIIBに求められる運営透明性
3月12日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)へのG7・英国の参加声明は世界に衝撃を与えた。ドイツ、フランスが追随する情報もあり、G7が分断されかねない動きを見せ、日米は戸惑いを隠さない。本部は北京、総裁ポストは中国とするAIIBの創設が昨秋北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)直前の10月24日に発表され、中国を含む21カ国が参加した。最終出資金1000億ドル(約12兆円)は参加各国がGDP比例で拠出するため主役は中国だ。中国は「購買力平価」なる物差しの導入を画策し、これによれば中国は2014年に米国を抜いて1位になると云う勘定だ。

発展が著しいアジアのインフラ需要は膨大で、2015〜20年に必要なインフラ整備額は8.2兆ドルと試算され、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれない状況だ。中国主導のAIIBの設立は、この好機に金融の力を活用し融資をどんどん拡大して中国の支配圏拡大を図りたいからだ。ただ、金融機関に不可欠なガバナンスを全うする考えなどはない。

4兆ドルの外貨準備金を有する中国は、外貨を活用するためアグレッシブな融資活動を展開している。ADBは途上国のインフラプロジェクト融資を巡り、中国の政策銀行である中国輸出入銀行に競り負けるケースがよくあるが、その要因は、プロジェクトが及ぼす環境や人権などの課題クリアが不十分であっても、また当事者国の返済能力をはるかに上回るような巨額融資であっても、あっという間もなく短期間で通してしまうところにある。

世界銀行やADBなど既存の国際開発金融機関は、インフラプロジェクトの立ち上げにあたっては、必要な時間をかけて、その環境への影響、人権への影響に極めて注意深い考慮を払う。あとで問題になれば中止に追い込まれ、取り返しのつかない事態を招来するからだ。また、インフラ事業の調達はともすれば腐敗や汚職の温床となり、その防止のために透明性の高いルールを導入し、世界銀行やADBは注意深く行っている。AIIBが中国輸出入銀行の現行の有り様を踏襲するとなれば、悪貨は良貨を駆逐する、の倣いの通り、世界銀行やADBが長きに亘って築いてきた国際開発金融秩序は間違いなく崩壊し、たちまち世界は混乱の渦中となろう。

そもそも世界銀行、ADBなど既存の国際開発金融機関はいずれも、内政が民主主義で安定し巨大な経済力と軍事力を擁する米国が最大の出資比率を占め、経済復興や発展途上国の開発を目的に、世界の金融システムを卓越したガバメントと透明さで運営してきた。結果、世界はG7時代からG20時代に発展した。

一方、AIIBを主導する中国はどうか。習近平国家主席はAPECで「中国主導の金融・経済制度創設によるアジア太平洋構想」をぶち上げ、国内向けに中央外事工作会議で「中国主導の国際ルール構築」を掲げた。だが、その「一帯一路」なるインフラ整備とAIIBの両輪戦略は中国の幻術に終わる可能性がある。中国は肝心の共産党一党独裁体制がいつまでもつか、分からなくなった。共産党政権創設の第1世代要人はその勲功を人民は熟知しているが、第5世代ともなれば、認知され難い。政権維持のため第5世代の習主席が推進する粛清と言論圧迫は洋の東西を問わずして現れる政権の末期症状だ。

加えて、中国経済は、外貨準備高4兆円を稼ぎ出した、あの熱狂的な「世界の工場」と囃された時代は、もはや過去の記録にすぎず、現政権下に復活はない。中国の国家統計局が3月11日発表の今年1〜2月の主要経済統計は、生産、投資、消費の伸び率が軒並み市場予想を下回って鈍化し、いずれもリーマン・シヨック後の最低水準で、年明け後も経済減速に歯止めがかからないことが鮮明になった。3月5日に開幕した全国人民代表大会で李克強首相は、2015年の国内総生産(GDP)の成長目標を7%前後とし、3年振りに引き下げることを発表した。そして「我が国の経済発展は新常態に入った」と述べ、経済成長が鈍化する事態への対応を訴えた。だが、米国の有力調査機関・カンファレンスボードは2014〜18年の平均成長率は5%台、2019〜25年は3%台に下がると観測する。中国経済の先行きは不透明だ。

斯くして中国共産党独裁による内政も中国経済も今後益々不安定となり、中国が恒常的にAIIBを主導できるかは極めて怪しいが、AIIBの年内設立の流れは変わることはない。参加を決めた英国を通じて、AIIBが中国の政治利用に使われないように高い倫理観に基づく公正なガバナンスの確立、組織運営の高い透明性を迫ることだ。そして何より大事なのは、環境や人権への影響を十分に考慮してインフラ事業を進めるために、非生産的な基準引下げ競争を引き起こさないよう、AIIBは世界銀行やADBとの対話・協調の関係を構築することだ。
以上

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