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2015年1月31日
首相掲げるべきは、「製造業復興」 国家衰亡を招く製造業衰退
2015年の本年は、戦後70年の節目を迎える。ドル高、原油安、ロシア危機、中国など新興国の成長減速、ギリシア問題再燃のEU、等々波乱含みだが、米国経済の復調が際立つ。ソ連が崩壊した1991年後、「米国の一極支配」と云われた米国は、2001年の9.11テロを契機とするアフガニスタン、イラクとの戦争で消耗し、存在感は大きく後退した。

だが、その米国は実体経済面で驚異の回復を見せた。2010年に9.6%の失業率は2014年12月に5.6%に大幅に改善され、双子の赤字と揶揄された財政赤字と経常収支赤字も大いに改善された。財政赤字は2011年度1.3兆ドルが2013年度0.68兆ドルに半減、経常収支赤字は2008年度6771億ドルが2013年度3793億ドルへと大幅に改善された。IMF見通しの実質国内総生産(GDP)は、2014年2.2%、2015年3.1%と、低成長の先進国のなかで勢いを見せる。ちなみに日本は2014年0.9%、2015年0.8%の見通しだ。2015年の世界は米国1強・多弱の展開となろう。

何ゆえ、米国は復活したのか。それは米国では衰退したと見られていた製造業の復興だ。米国発の世界金融恐慌とも云われたリーマンショック直後の2009年1月に大統領に就任したバラク・オバマは、混迷する国内経済を立て直すため、雇用吸収が高く、イノベーションを喚起する土壌として不可欠な製造業の再興を宣言した。経営破綻に瀕していたGMなどの自動車企業再建に巨額の公的資金を投入し、また、多国籍企業に対し課徴金含みの強い意志で製造拠点の国内回帰(リショアリング)を促した。そして、オバマ大統領は輸出先を世界1潜在成長力のあるアジアに狙いを定め、2009年に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加と推進を表明し、2011年にリバランス政策(アジア重視の外交・軍事)を打ち出した。

オバマ政策の追い風となったのは、シェールガスの大量産出だ。以前からその存在は広く認識されていたが、頁岩層の隙間に埋蔵されたガスの回収技術を確立した米国は、この5年間でサウジアラビア、ロシアを凌駕する世界1の原油産出国になった。安価なシェールガスのお陰で化学工業だけでなく、世界1安くなった米国のエネルギーコストは国内の産業構造に大きなインパクトを与え、米国の産業競争力回復の源泉となった。

景気回復による税収入の増大は財政収支の赤字を大幅に改善し、シェールガスの増産は、2005年に60%だった原油の海外依存を2015年に24%(見通し)に緩和し、懸案の経常収支の赤字を改善するとともに、リスクとコストをかけて中東に張り出す必要性はなくなった。オバマ大統領の「もはや米国は世界の警察官ではない」発言の所以だ。

一方、財政赤字が依然として重くのしかかり(2013年度対GDP財政赤字比率;米国▲5.76%、日本▲8.20%)、2014年の貿易赤字が過去最大の12.8兆円(速報)を負う日本はどうか。

明治開闢以来、欧米に追いつけを目指して富国強兵、殖産興業を国家目標に掲げ、それを担う人材育成教育をあまねく行い、政治・経済・社会体制の近代化に邁進し、産業の国際競争力の強化に注力してきた。そして、太平洋戦争敗戦などの紆余曲折はあったが、1980年代に日本は世界の経済大国に成長し、先進国へのキャッチアップを果たした。だが、その次の目標を見いだせず、悲願を叶えるや否や、たちまち日本は実態なきバブルに塗れ崩壊した。

あれから20年、経営者らは新技術追及の姿勢すらとらず、ひたすら労働コストの削減に邁進し正規社員を非正規社員に切り替え、挙句の果てに低賃金の新興国に工場を移転し、国内を空洞化させた。雇用改善の今日も増えるのは非正規雇用であり、その比率は40%に上り、人的資源は日に日に劣化している。それ故、名目GDPは1993年度の489兆円に対し、2013年は483兆円と20年前を下回る。その間、米国は2.4倍、韓国は4.5倍、中国は16.1倍と成長している。世界のGDPに占める日本のシェアは1990年の13.8%から6.6%に半減した。真に影が薄くなったわけだが、このままでは国家衰亡は間違いなく現実のものとなろう。

安倍政権がアベノミクスを掲げて2012年12月に誕生し、3本の矢を放ち3年目に入ったが、デフレ脱却を兆す需給の逼迫はおろか、円安でも輸出が増えなくなった。どうにもならないなかで、首相自ら賃上げに関与される労は多とするが、「モノ造り日本」の安倍首相が示すべきは、まさにバラク・オバマが起死回生のビジョンとして示した「製造業復興」だ。指針を明示すれば、官僚がその目的達成のための戦略戦術の青写真を描く。そして、民間企業は企業活動を通じて実現してゆく。非常事態の現下、トップダウンによるスピードが大事だ。

製造業復活の技術大国米国と製造大国中国の狭間で、日本製造業が活路を見出すには、政治と経済が一体化し、日本が持つ製造業の先進性を極めてゆくしかない。
以上

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