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2014年12月16日
製造業国内回帰を実現するロボット技術。新興国に埋没した日本製品
衆院選挙での与党圧勝について、経済界はアベノミクス継続を歓迎し、経済成長を促す実効性のある成長戦略を、スピード感をもって推進して貰いたい、と求めた。だが、その発言に違和感をもたないわけにはゆかない。安倍政権は、第1の矢で金融緩和を、第2の矢で財政投資による景気刺激策を放った。お陰で経済成長の足枷となっていた円高止まりを解消し、円安株高を呼び込み、製造企業の成長環境を整え出して既に2年になる。

第3の矢は民間企業が担うものだ。政府による農業改革などの大胆な規制緩和も必要だが、もっと大事なのは、民間企業が自力で成長のための改革・革新を図ることだ。その意欲が全く見えない。例えば賃上げ。賃上げは、従業員のやる気を奮い立たせる経営上の最重要事案だが、今日では政府の介入なしでは行われ難い。安倍首相は、自らの肝いりの「政労使会議」を開催し、経済界に対して今春に引き続き来年の賃上げに向けた要請を行った。

政府は、従業員の所得を増やし、家計の消費を活性化して経済の好循環に繋ぎ、デフレ脱却を目指したいわけだが、製造企業にとっても、賃金増は有効需要に結びつき経営の好循環を招くものだ。しかるに、製造企業は、1992年のバブル崩壊後、それまで欧米先進国との熾烈な競争の中で果敢に実施してきた開発や設備革新の投資を手控え、一転して人件費削減に徹する経営姿勢に変じた。これに呼応するように、小泉政権下で国も製造業への労働者派遣を自由化した。今では低賃金の非正規雇用が全雇用の4割に達する。

製造企業は更なる低賃金を求めて新興国への進出をはかり、リーマン・ショック直後に急伸した円高を機にベトナム、ミャンマーなどの東南アジアに生産拠点の移転を一気に加速させた。だが、現地生産の大部分が当該地域の需要に向けたものであり、所得の低い地域であるため低付加価値製品にならざるを得ない。これが急成長する新興国の需要を取り込む「地産地消」の実態だ。これではかっての様な新技術の開発や革新的な設備の必要性は生じない。
かくて、日本の製造企業は開発や新鋭設備にカネを使わずひたすら低賃金経営に依拠し、かってない膨大な余剰資金を溜めこんだ。この企業の巨額タンス預金が日本経済の資金循環を滞らせ、デフレの元凶となった。バブル崩壊して20年が経つが、経営陣の無為無策が国内の製造業をすかすかに空洞化させ、まさに「失われた20年」を生ぜしめた。

現下の1ドル=120円前後のドル高円安の動きは、日本の産業の競争力が落ちたことを反映するものだ。シェールガスを擁し製造業復活を見せる米国を初め、韓国、台湾、中国などのアジア諸国が競争力をしっかりとつけた。以前は、高くても品質の高い日本製を選択したが、今は、安くて品質が良くなった自国製を愛用する風潮がどの地域でも流れ出した。日本も昔、舶来品を重用したが、良質の国産品が安く出回ると早々と舶来品は姿を消した。

日本の製造業は、バブル崩壊後一貫して、1980年代の高度成長期に先人たちが築き上げた世界最高水準の技術を食い潰してきた。今日では、日本の技術はアジア水準に埋没する状況にあると云って過言ではない。円安になっても輸出が伸びない所以だ。そして、1ドル=120円前後のドル高円安を甘く見てはならない。このままでは1ドル=200円の危機を招いても不思議はない。その時日本はハイパーインフレの真っ只中にいる筈だ。

この様な深刻な危機に日本製造業は陥っているが、立て直しは可能だ。低賃金の新興国に依存してきた組立プロセスを高度なロボット技術で変革することだ。日本は間違いなくロボット大国であり、製造業として自動化が進み、競争優位にある。ちなみに、産業用ロボット稼働台数は、日本31万台、北米(米国・カナダ・メキシコ)19万台、ドイツ16万台、韓国13万台、中国9万台、イタリア6万台、フランス3万台、である。

ロボットによる製造現場の自動化によって人件費比率は限りなく大幅に切り下げられ、工場の立地条件は、人件費の安さではなく、電力や水などの供給を安定的にかつ安価になし得るインフラだ。インフラは新興国より日本が格段のレベルで優れていることは論を待たない。製造業の日本回帰はロボット技術がもたらす。そして世界に散らばった製造業の日本回帰は日本独特の異業種コラボレーションを復活させ、様々な技術革新の創成が期待される。

製造業のライバル、ドイツは新興国に流出した製造業の国内回帰を狙って、「第4次産業革命・インダストリー4.0」を標榜し、「IT技術を駆使するスマート工場」の実験を始めた。

アベノミクス第3の矢は、ロボット技術による製造業の国内回帰だ。ただ、現下の経営者陣に望むべくもあらず。政労使会議の「賃上げ」同様に、国が深く製造業の改革に関与しなくては、「モノ造り・日本」は消えるしかない。政官民が協同して汗をかくときだ。
以上

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