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2014年11月24日
貿易立国に立ち戻れ。喫緊の製造業国内回帰と農業改革
2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比▲0.4%(年率▲1.6%)のマイナス成長となり、消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減で大幅マイナス成長となった4〜6月期(前期比▲1.8%、年率▲8.1%)に続き、2四半期連続のマイナス成長となった。GDPの6割を占める個人消費の回復が前期比0.4%増と弱く、また景気回復のエンジンとなる企業の設備投資も▲0.2%と2期連続のマイナスとなり、8%増税の影響が足を引っ張った。成長率の2四半期連続マイナスは景気後退とされ、今回の事態を海外メディアは景気後退とみている。

6〜9月期のGDPの実績をもって判断するとしていた安倍首相は、ためらいなくアベノミクスを成功させるため、「来年10月に予定されている消費税増税を18ヵ月先送りし、18ヵ月後の2017年4月に確実に増税を実施する」、と表明し、11月21日、2年の任期を残して衆議院を解散した。慌てふためく民主党など野党も消費税増税の延期を表明したため、争点なき選挙、大義なき解散と非難するメディアが多い。

朝日新聞が解散直前の19日、20日に行った世論調査では、この時期に解散・総選挙することに「反対」は62%で「賛成」の18%を大きく上回った、とし、また、消費税増税の延期について「国民に信を問う」と云う解散理由に「納得する」は25%で、「納得しない」の65%が上回った、とした。つまり、解散・総選挙に大義がない、と云いたいのであろう。しかし、同時に行った調査で、消費税増税を1年半延期して2017年4月に断行することについて、「評価する」は33%で、「評価しない」の49%の方が多かった、とする肝心の視点が抜けている。「2017年4月、消費税増税断行」が争点であり、そのためにアベノミクスに信を問う姿勢に、解散・総選挙の大義はしっかりと立つ。メディアは恣意に世論を操ってはならない。

しかるに、何ゆえ今年4月実施の消費税増税が2四半期連続のマイナス成長を招来したのか。これまでアベノミクスは異次元の金融緩和を実施し、2008年のリーマン・ショック後、長きに亘って張り付いていた円高止まりを解消して円安を呼び込み、消費、企業収益、名目賃金、有効求人倍率を増加させ、失業率、倒産件数を減少させてきた。しかし、消費税増税後は、円安の負の部分にあたる輸入物価上昇に加えて消費税増税そのものによる物価上昇が家計の実質所得を低下させ、家計消費は慎重にならざるを得なかったのが主因だ、とする見方が一般的だ。家計所得を増やすため、政府は政労使会議をセットし、今春のベースアップを牽引し名目賃金の押上げを推進した。来春の賃上げも引き続き要請し、経団連会長は受諾姿勢を示した。今までにない政府の取り組みに素直に頭が下がる思いはある。

だが、それより何よりも2四半期連続マイナス成長の根幹は、円安による輸出激増期待が、円高止まりの中で進められた製造業の工場海外移転(国内空洞化)によって見事に外されたことだ。少子高齢化で縮減する国内市場をみたとき、デフレを脱却しGDPの成長を実現するには、いかに困難であってもやはり製造業による輸出力を伸長させることだ。時は今、日米の経済情勢に明暗が逆転し、ドル高円安の新時代を迎えた。やるべきは、海外に散開した製造業の国内回帰と岩盤規制下にある農業の改革による農業の国際化だ。

製造企業の国内回帰はじわりと増加している。円安が進み、国内工場から輸出したときの円換算の収益が大幅に改善しているためだ。この動きを促進する政策を積極的に打ち出すことだ。中国に進出した企業は、年々高騰する労働コストに悩み、かつ上昇した人民元での支払いの負担は大きくなり、円安の日本製品に敵わない。国内生産への道を示すときだ。

そして農業。高齢者が担う疲弊した農業を活性化するには株式会社の参入を認め、農業を世界市場に打って出る成長産業に変えなくてはならない。方向づけは明確だが、ことはそう簡単には捗らない。とっくに役割を終えたJA全中(全国農業協同組合中央会)の「廃止」を柱とした答申原案が「新たな制度に移行」にすり替えられた。また農産物の流通販売や農機具などの販売を独占するJA全農(全国農業協同組合連合会)は経営効率化のため「株式会社化」が求められるはずだったが、自民党議員から反対論が噴出した途端、トーンダウンした。抵抗勢力は自民党の族議員である。JAの直近の組合員数は正准合わせて965万人。票田である。如何なる岩盤規制と云えども私のドリルから逃れられないと大見得を切った安倍首相の本気度が問われる。

少子高齢化・人口減少の日本が経済の活路を切り拓くには、モノ造りによる貿易立国に立ち戻るしかない。第3次安倍政権が放つアベノミクス第3の矢は国民一人ひとりを奮い立たせるモノでなくてはならない。
以上

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