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2014年11月3日
不動産バブル、設備過剰にあがく中国。繰り返すな「政冷経熱」
中国に「邯鄲一炊の夢」なる故事がある。唐の若者が身を立てようと楚へ向かう途中、邯鄲の地で疲れ切り、道士に枕を借りてひと眠りした。その間の夢で、栄華を尽くした一生を送るが、目覚めてみれば、眠る前に炊きかけた粟粥がまだ出来上がっていない程の短い時間に過ぎなかった。つまり、栄華は儚いものと云うたとえ話だ。だが、まさに一炊の夢と云うべき不動産バブルが弾けて、今、邯鄲は騒然としている。夢ではなく現実として。

その邯鄲は、北京から南へ約450キロメートルの河北省にある、人口160万人の平凡な中規模都市だが、現在、不動産バブルが崩壊し混乱のなかにある。今7月、市内最大の不動産開発業者の金世紀房地産公司の経営者が夜逃げしたのを発端に、卓峰地産、万聚地産、武安銀集団などの名の通った不動産開発会社の経営者が次々と姿を消した。原因は、政府の金融引締めにより正規の銀行からの融資を受けられなくなった不動産開発業者が、年利20〜30%の高い金利で闇金融から資金を調達したことによる。不動産価格が暴騰すれば良いが、今年に入って不動産開発業者は、住宅の在庫急増や住宅価格の急落に直面し闇金融への返済が出来なくなった。闇金融が融資する資金は一般市民から調達したものが多く、一夜にして財産を失った市民が、市政府を取り囲み連日のように抗議活動を起こしていると云う次第だ。

中国の大手シンクタンク、中国指数研究院が発表した9月の主要100都市の住宅価格動向によると、新築住宅の1平方メートル当たりの平均価格は1万672元(19万1千円)と、前月比0.92%下落した。値下がりは5カ月連続で、下落幅も前月より0.33%拡大した。下落した都市は前月より5つ増え、79都市に広がった。業界情報筋では今後、中国の9割の都市で不動産バブルが崩壊し、不動産価格は半値以下に落ちる、との見かたが強く、これまで中国経済を牽引してきた不動産などの熱烈なる固定資産投資は転換期を迎えた。

中国の固定資産投資(国や自治体、企業、個人が不動産や生産設備などに投資した金額合計)は国内総生産(GDP)の45%を占めるので、固定資産投資が前年比20%増えるだけで中国のGDPは9%増える計算になる。かつ、中国は党の裁量が効く土地の公有制をとっているので不動産開発は党の意向でいかようにもコントロールできる。これが、2000年代に長きに亘って中国のGDPが10%以上の高い成長を見せた、からくりだ。そして、2008年のリーマン・ショックを端緒とする世界金融危機に対し、中国は大型景気対策として4兆元(70兆円)の固定資産投資を断行し、景気は持ち直したかに見えた。だが、その後、大規模投資に伴う不動産バブルや生産設備の深刻な過剰問題が表面化し、今日の中国経済に暗い影を落とすところとなった。

中国の2014年7〜9月期の実質GDPは前年同期比+7.3%となり、4〜6月期の+7.5%を下回っただけでなく、リーマン・ショック後の2009年1〜3月期の+6.6%以来の低い伸びにとどまり、中国経済が確実に減速していることが確認された。不動産や生産設備の過剰状況を調整するために固定資産投資を控えたことが主因だ。かかる中国経済の減速に、習近平国家主席は「新常態に平常心で臨め」と号令する。世界2位の経済大国になった今日、量的拡大に戻すのではなく、経済構造の調整によって質を改善し、雇用不安がない安定した経済を目指すと云う。

それには国内市場だけでは消化しきれない過剰設備のはけ口を海外輸出に求めなくてはならない。輸出が伸びないと労働力があまり、雇用不安が広がるからだ。しかるに、現在の中国は、賃金が上がり人民元が上がり、もはや低コストの生産拠点ではなくなり、中国から他の新興国へ工場移転する企業が続出している。更に、東南アジアを初めとする新興国が競って先進国から直接投資を誘致し、製造業の強化に励んでいる今日、ひと時のように中国製品が怒涛の如く世界へ広がる時代ではない。
かくて、一党支配を正当化してきた高度成長が望めなくなった以上、中国政府は、年間710万人に上る新卒者などの若者や出稼ぎ農民の雇用悪化は必至であり、政府への怨嗟は高まらざるを得ない。10月23日、中国共産党の中央委員会第4回全体会議は「法に基づく統治の強化」を採択した。「法治」は、共産党政権維持のための引締め手段に他ならない。

中国経済の成長鈍化が明白となったなかで、冷え込んだ日中経済に動きが出て来た。小泉政権当時の関係冷え込みに、日本は、中国の「政冷経熱」の策に乗ったが、その「経熱」も、結局、「政冷」で幾度も理不尽な目に合わされた。此処は慌てることはない、先ず日中の戦略的互恵関係を構築することだ。決して「政冷経熱」の愚を繰り返してはならない。
以上

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