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2014年10月13日
ドル高円安新時代到来。経営者淘汰なしに民間活力蘇生なし
アベノミクスによりリーマンショック後の円高止まりが解消し、1ドル=100円近辺で安定していた円ドルレートは、足元では円は110円に急落し、120円への動きも予測され、「ドル高円安の新時代」を迎えた。

米国経済の着実な回復が鮮明になり、米連邦準備理事会(FRB)は金融政策を転換し量的緩和を10月に終了すると発表し、すぐではないがいずれゼロ金利から脱出することを示唆した。一方、日本は異次元の金融緩和実施後1年半が経つが依然として輸出の伸びが芳しくなく、内需も止めどない実質賃金の減少と消費税引上げによる個人消費下落のため、4~6月期の国内総生産(GDP)は実質年率換算マイナス7.1%に減速した。下落幅は東日本大震災が起きた2011年1~3月のマイナス6.9%より大きく予想外の結果となり、更なる金融緩和を視野におかざるを得ない日本は、未だにデフレ脱却に四苦八苦の状況だ。「ドル高円安の新時代」到来の所以である。

しかるに、これまで貿易立国日本に追い風をもたらした「円安」は、今回も輸出企業を多く擁する東京証券取引所を賑わし株式市場を活気づけ、資産効果を如実に現出した。お陰で百貨店の高額商品が売れ個人消費に活気が戻ったかに見えた。そして、輸出が増加し雇用が増え設備投資が活発になり、経済が勢いづくものと多くの人が期待した。だが、国内消費は低迷し、輸出はこれまでのようには伸びなかった。

1992年のバブル崩壊後20年余、一貫して製造企業はアジアを初め海外の低賃金地域に工場を移転させてきたため、国内の工場は縮小に次ぐ縮小で人的にも設備面でも衰弱し、まともな生産能力を失くしてしまった。これでは円安が進行しても、輸出による仕事が増える筈もなく、むしろ円安がもたらすエネルギー資源や原材料、食料品などの輸入品の価格高騰によって日本経済は損なわれるだけだ。歯止めの利かない貿易赤字に見るように、円安は、メリットよりリスクが大きくなった。

何ゆえ、かかる変化が日本に生じたのか。バブル崩壊で殆どの企業は過剰人員、過剰設備、過剰債務、の3重苦に陥った。その危機を乗り切るために経営者がとったのは、竹中平蔵氏ら新自由主義一派が煽る米国発の株主資本主義であった。それまでの経営者は「人は城、人は石垣」の人間尊重と雇用責任の認識をもっていたが、背に腹は代えられないと見たのか、雪崩を打って宗旨替えをした。株主資本主義とは、会社は株主のものであり、企業は自己資本利益率 (ROE)、つまり株主資本に対する純利益の比率を高め、株主への配当を増やすべし、とするものだ。経営者は目先のROEの向上を求めるために中長期の視点に立つ開発研究費や設備投資を削減し、正規社員を削減し非正規社員の雇用に切り替え、人材育成費を抑制し人件費の削減を徹底した。

製造業は、仕入れた原材料に技術やノウハウなどの知恵や加工、組立を加えて付加価値を生み出し、その付加価値を、開発研究や設備の償却、人件費、利益、に分配し経営するわけだが、本来の経営者は付加価値そのものを増加させて利益を出すことに邁進するのに対し、バブル崩壊後の経営危機脱出に渡りに船と株主資本主義に転じた経営者は、付加価値が増えずとも将来への投資や人件費を減らすことで利益を増やし株主への配当を増やすことが出来ることに味をしめた。以降、開発生産性や開発リードタイム、生産性や生産リードタイムなどの製造企業としての根幹の課題などはどうでも良くなり、ひたすら年々人件費削減の企業運営を20年以上続けてきた。20年前は世界トップクラスであった日本の労働生産性は、今日ではOECD加盟34カ国の20位に成り下がり、生産性はOECDの平均値を11%下回る。

開発研究費や設備投資が削減され賃金が抑制されては、国の経済が成長出来ずデフレに陥るのは当り前。デフレの元凶は、バブル崩壊後20年余の長きに亘って企業運営の重責を引き継ぎながら、企業成長に不可欠な技術開発、設備革新、そしてそれらを担う人材の確保とその育成に関心すら持てない経営力ゼロの経営陣にある。かかる経営者にアベノミクス第3の矢の「民間投資を喚起する成長戦略」を期しても、それは端からムリと云うものだ。

今春15年ぶりの2%超え賃上げは政府による異例の介在がなければ実現しなかった。企業にとって賃上げは生産性向上が必須条件であり、企業経営の生命線にかかわる問題だ。外部から刺激された賃上げを「機」として、経営者は企業成長に向けて動き出したか。それとも「奇禍」としてコトの鎮火を待つのか。経営者淘汰を急ぐ仕組みが何としても必要だ。ドル高円安の新時代を日本経済再構築に活かすには、民間企業の活力蘇生なしにあり得ない。
以上

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