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2014年9月18日
喫緊の高付加価値製品輸出力。復活不可欠、現場力
足もとの円は1ドル=108円台と6年ぶりの円安ドル高水準になった。日米の経済に勢いの差が出たからだ。4〜6月期の経済成長率は年率で、米国が前期比4.2%であるのに対し日本はマイナス7.1%であった。米国中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、この景気回復を受けて10月に量的緩和政策を終了し、来年には利上げに踏み切ると示唆した。一方、日本は消費税率引上げの影響があるとは云え、成長率は予想以上の落ち込みとなった。日銀の異次元緩和政策は出口の見通しはなく、逆に動向次第では追加緩和も考えられ、更なる円安ドル高の余地が残る。

その円安ドル高は、これまでは、輸出増の効果をもたらし、輸出増加→生産増→設備投資増加・企業収益増加→雇用者所得増加→個人消費増加→経済成長、の好循環メカニズムが動き出した。だが、今日では、超金融緩和の実施後1年以上経つても、輸出が全く芳しくない。それは、リーマンショック後の超円高期に、輸出企業が競争力を維持するために、為替リスクが低く、安価な労働力が得られる海外に生産拠点を本格的に移転したからだ。

日本の輸出を牽引する自動車も、リーマンショック直前の2007年に月産50万台を悠に超えた輸出台数は、その後は50万台を一度も超えることなく下降し、2014年1~6月の月間輸出台数は36万台になった。ちなみに、国内生産は2007年の月産96万台が2014年1~6月に84万台に9%減少したが、海外生産は2007年の98万台が2014年1~3月に143万台へ46%の大幅増となった。2013年の日本の自動車市場は世界市場の6%に過ぎず、かつ日本市場が少子化で縮小するとなれば、海外生産重視は自然の流れに見える。

しかし、である。かかる流れが製造業全般に及んでいる今日、日本は何をもって外貨を稼ぐのか。現下は6年ぶりの円安ドル高にあり、かつ日米の経済情勢からして短期に反転する環境ではない。ならば、単純明快に輸出振興に全力を挙げるべきではないか。超円高期に受注がとれず、2014年は仕事がないと云う「2014年問題」を突き付けられた造船業界は、2012年秋の円高是正で息を吹き返し、さらに翌年4月の異次元緩和の円安効果を受けて、2014年4~6月の受注高は3ヵ月連続して造船大国の韓国を抜き中国に次ぐ2位になった。製品の品質がいかに高くとも、国の無策がもたらす為替の異常な動きによる法外な価格アップがあれば売れない。超円高は国の無策が原因、を証明したのがアベノミクスであった。

だが、円は安ければ安いほど良い、と云うものではない。円安は輸入物価を騰貴する。圧倒的に輸入に頼らざるを得ないエネルギーや原材料、食料品は円安による価格が騰貴しても輸入を減らすことは出来ない。8月の貿易収支は26ヵ月連続の赤字となり、このままでは円安は国内の富を海外に流出させかねない。大事なのはこの円安を最大限に活かし、海外移転で空洞化した国内の製造現場を復興させ、輸出力をつけることだ。

ただ、海外生産にもって行った低付加価値製品の国内回帰を図ってはならない。先述の自動車では、価値競争重視の3ナンバーなどの普通車は国内生産、ヴォリュームゾーンの価格競争重視の小型車は海外生産と云う図式だ。近年、グローバル化で世界市場は一変した。新興国に富裕層が激増し、欧米先進国が復活した。資金力の豊富な企業や個人をターゲットにおいた多品種の高付加価値製品(ブランド品)の製造こそ日本の国内生産が求める課題だ。

しかるに、「アベノミクス第3の矢」の日本再興戦略とは何なのか、立派な有識者が策定すると云うが、小田原評定に似てその内容は今ひとつのようだ。これでは、現下懸案の過去最長を更新中の貿易赤字は益々深刻になるだけだ。この緊急の時、奮起させなくてはならないのは、製造の現場力だ。福島原発危機を救ったのは、官邸や東電本社幹部がおろおろする中、吉田昌郎所長を初めとする現場力であった。

ところで製造企業は、20年もの長い間、労務費の削減だけで収益を上げてきたため、経営力は弱体化し、現場は疲弊した。賃上げさえ政府の関与が必要、の体たらくを露呈したが、このような企業に現場力復活を求めても自己改革は出来まい。個々の企業に任せては、百年河清を待つ、何も変わらない。政府は現場力をつける企業改革に積極的に関与し、製造業の根幹を再生する舵をとらなくてはならない。法人税減税は伊達ではいけない。

アベノミクス第1の矢(金融緩和)、第2の矢(財政政策)はともに民間企業が成長に向けて始動するまでの時間稼ぎの政策だ。これらの効果が出ている内に、そして円安効果がある内に生産性向上をもたらす第3の矢の成長戦略を軌道に乗せ、経済力を高めなくては日本の前途はない。それには、企業の現場力を早急に復活させ、輸出立国の基盤を再構築することだ。
以上

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