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2014年8月31日
日本に見えない第4次産業革命。ドイツが目指す「インダストリー4.0」
財務省発表の貿易統計によれば、2014年上半期の貿易収支は▲7兆5984億円と半期ベースで過去最大の赤字額となった。2010年まで30年連続で貿易黒字を計上し続けたが、2011年に貿易赤字▲2.6兆円に転落したのは、東日本大震災で原子力発電所が停止し、火力発電の液化天然ガス(LPG)を主とする燃料輸入の急増が原因だ。その後、貿易赤字は2012年▲6.9兆円、2013年▲11.5兆円と拡大し、2014年は半期で▲7.5兆円へと更に拡大した。

2013年4月4日に実施された日銀による異次元金融緩和策は、円安を誘導し輸出増加を意図したものであるが、輸出が振るわず、結果として円安が却って貿易収支を悪化させた。先述のLPGの2014年上期輸入は数量ベース442億トンで前年同期比2%増であるが、金額ベースでは3.9兆円で同11%増となった。円安が金額を大幅に膨張させた。エネルギーや食料品、衣料品を初め、かっては輸出の主力であった家電などの工業製品も輸入に依存する今日、円安はコストアップの元凶となって日本経済を衰退させかねない。

何ゆえ、輸出が振るわないのか。リーマンショック後の異常なる円高に対応して輸出企業が海外生産で収益を上げる体質に変化したからだ。輸出の稼ぎ頭は自動車だが、自動車も今では海外現地生産が過半を占める。円安が定着した現在も、人口減少・少子高齢化の日本国内ではなく海外に設備投資をする、と広言する経営者が多い。学識者や経営評論家にもその考えに同調する者が多い。政府にも製造業の国内回帰を促す動きはない。しかし、である。これで日本は発展することが出来るのか。資源の乏しい日本は、古来より継承するモノ造りによる輸出の振興が不可欠だ。それには、国内で新興の国々に負けないコストで製造する技術の開発が必要だ。製造業勝ち組のドイツではその取り組みがすでに始まっている。

ドイツは日本と同じく資源が乏しく、機械や自動車、化学製品などの製造品を輸出する世界3位の輸出大国だ。日本は中国、米国、ドイツに次ぐ4位。そのドイツは1985年のプラザ合意で日本の円高と同じようにマルク高を強いられコスト削減のため中国やメキシコに工場移転した結果、産業空洞化の苦汁を舐めた。その後、低付加価値の労働集約的な仕事を海外に出し、国内の仕事を高付加価値の分野に絞り込み、産業立地と国際競争力の強化に努めてきた。一貫して健全な貿易黒字を堅持する所以である。

また、ドイツは、日本と同様に急激に進む高齢化に直面しているが、やがて到来する労働人口減少時代における国際競争力維持のために、新しいコンセプトの下に製造業の再活性化政策を進めている。それを「インダストリー4.0」と云う。インダストリー4.0とは、「第4次産業革命」を意味し、工業のデジタル化とネットワーク化技術によって従来の製造業の様相を根本的に変えた「スマート工場」を実現し、製造コストを大幅に削減する巨大プロジェクトだ。狙いは低賃金・低コストの新興国に流出した産業を自国に取り戻すことにある。ドイツは、政府、学会、産業界、労働組合が参加し、国が一丸となって、2025年までに日米欧の先進国やBRICsの新興国に先んじて製造業再活性のイニシアティブをとるのが目標だ。

ちなみに第1次産業革命は英国・スチーブンソンが発明の蒸気機関車がもたらした機械化、第2次産業革命は米国・エジソンが発明の電気がもたらした大量生産、第3次産業革命は電子技術の発展がもたらした工場の自動化、そしてIT技術によるデジタル化とモノとモノとのネットワーク化技術の進展が産業界にもたらす革命が第4次産業革命だ。今年4月、ドイツ・ハノーバーで開催された世界最大の工業見本市ハノーバー・メッセでは、「インダストリー4.0」が注目を集め、アンゲラ・メルケル首相も訪れ、スマート自動車工場の概念を示す模型の前で足を止めた。

米国では先進製造イニシアティブが推進され、英国などの先進諸国でも同様の取り組みが始まっている。一方、日本はアベノミクスによる経済再興を打ち出しているが、その中身は、政府が産業界の要望に応えて企業がヒトを自由勝手に扱えるように腐心するイメージしかなく、日本が営々として構築してきた製造技術を活性化するビジョンも志しも全くない。個々の企業任せでは、世界市場を席巻した日本デジタル家電が一瞬の内に韓国メーカに蹴落とされたように、今は力がある自動車産業もドイツや米国の攻勢の前にやがて同じ轍を踏むことになろう。

日本には優れた機械技術やロボット技術がある。産官政学が国を上げて、それらの技術にIT技術やネットワーク技術を練り込み21世紀型工場を創造しなくては、日本の前途はない。第4次産業革命、「インダストリー4.0」の前夜が今だ。急げ!夜明けはすぐにやって来る。
以上

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