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2014年7月13日
日本経済自壊を決定づけた人手不足。喫緊の労働集約的生産構造脱皮
カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」は3月19日、今後2〜3年をかけて国内850店舗で勤務する約3万人のパートタイマーやアルバイトのうち約1万6000人を正社員に転換する、と発表した。また、居酒屋チェーン「ワタミ」は3月27日、運営する居酒屋の1割に当たる60店舗を2014年度中に閉店すると発表した。いずれも人手不足が原因だ。これら時にはブラック企業(ヒトを酷使し使い捨てにする)の異名を冠せられた企業は、これまでのやり方では働く人が来ないため経営が出来なくなったのである。

就職氷河期にともすればブラック企業の餌食となった新卒者の雇用状況は一変した。今春卒業した大学生の就職率は94.4%で3年連続の改善、高校生は96.6%で4年連続の改善だ。また、来春入社予定の新卒採用がピークを過ぎる中で、企業は学生の内定辞退防止に追われている。学生の半数が2社以上から内定を得ており、他社に目移りする学生が後を絶たない。関東に拠点をおく大手百貨店では内定者の4割がすでに辞退したと云う。内定者の半数以上から辞退された企業の割合は前期より3.3%増の17.5%に達している。どの企業も内定者の引き留めに膨大な時間とコストをかけている。

アベノミクスによる異次元金融緩和をきっかけに景気が回復基調に入って1年程しか経たないのに、あれほど人手余りで緩んでいた労働需給が一気に人手不足に転じてしまった。失業率は、アベノミクススタート直前の2012年11月の4.1%からこの5月は3.5%に改善された。実に16年振りの完全雇用水準だ。有効求人倍率も同期間に0.82倍から1.09倍に改善した。上昇は18ヵ月連続で1992年6月以来22年ぶりの水準にある。

労働需給が逼迫すれば労働コストは上がる。いつでも首に出来る非正社員の賃金は急上昇だ。人材情報大手リクルートジョブスがまとめた派遣社員の5月の平均時給(関東・東海・関西)は前年同月比4.6%増の1536円で、前年同月比プラスは12ヵ月連続だ。一方、正社員の賃金も、安倍首相肝いりの「政労使会議」の効果もあり、経団連の集計では、大手企業の定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率は2.28%となった。15年ぶりの2%超えである。また、全国財務局の調べでは、14年度のベア実施企業が29%で前年度11%から大幅に上昇していることから、中小企業も賃上げをして人材確保に努めていることが窺われる。

何ゆえ、多くの国民がアベノミクスの景況を実感出来ないうちに、ほんのこの前はあれほど人手余りであったのにあっという間もなく、一気に人手不足に転じたのか。

そもそも日本は、40年前の1975年に出生率が2.0を切り少子化が始まり、現在は出生率1.39に落ち込んだ。総務省が7月25日発表した住民基本台帳(今年1月1日時点)の人口調査で、日本人は前年より24万3684人減って1億2643万4964人となり、人口減は5年連続で、今後は更に減少が加速し2030年1億1662万人、2048年9913万人、2060年8674万人に減少する。肝心の労働人口(15〜64歳)は15年前の1998年にピークアウトし、2005年8442万人だった労働人口は、2013年に32年ぶりに8000万人割れの7901万人となり、2040年に6000万人割れが予測される。

かかる人口減少、労働人口激減が、国が出生率改善策を抜本的に打たなければ、現出することは、1970年代後半から人口動態調査により明白であった。経済界は労働人口激減の長期視点から1人当り付加価値生産性を引上げる経営を行わなくてはならないのに、1992年バブル崩壊から今日に至るまで20年間、開発投資や設備投資、そしてそれらを担う人材投資をしなかった。日本企業が励んだのは、コストを下げるために賃金を引下げかつ正社員を安価な非正社員にどんどん切り替える、人件費削減だ。人的資源を20年間も劣化し続けては、1人当り付加価値生産性引上げなど論外だ。1人当りGDPが、1990年代の世界2位から今日、20位に転落するのは当り前。貿易収支の長期赤字化は当然の帰結だ。

しかるに、6月の日銀短観による2014年度大企業の設備投資計画は前年度比12.7%増の2桁の増加とあり、企業が何もせずため込んだ300兆円の巨額資金を国内で人と設備に使うなら、やっと企業は長きに亘ったデフレマインドを払拭し成長への動きになったか、と期待した。だが、内閣府が7月10日発表の5月の機械受注では、国内設備投資の動向を示すコア受注が前月比▲19.5%の2桁減となり、2か月連続で減少した。経営トップが様子見をしているとの観測があるが、企業にそのような時間余裕などあるわけがない。実行あるのみだ。

陳腐化した設備と劣化した人的資源による労働集約的生産構造が、現下の人口減少・労働人口激減の日本で成り立つはずがない。人手不足が日本経済の致命傷となる日は、今だ。
以上

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