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2014年5月29日
輸入浸透度を上げる強い海外製品。働く意欲を失わせ、衰亡を招く産業競争力会議
財務省がこの程発表した2013年度の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は13兆7488億円の赤字となった。赤字は初めての3年連続で、赤字額は前年度の8兆1578億円を約5兆6000億円も上回り、比較可能な1979年以降で過去最大。

輸出は金額ベースでは円安効果により前年度比10.8%増の70兆8564億円で3年ぶりの増加となったが、数量ベースでは、わずかに前年度比0.6%の微増にすぎない。輸入は金額ベースで17.3%増の84兆6053億円で、過去最大を記録し、数量ベースでも前年度比2.4%増え4年連続の輸入増となった。

金融緩和実施から1年以上も大幅な円安が続いているにもかかわらず、輸出がはかばかしくない。これまで政府は回復を見せる先進国向けを中心に円安によって輸出量は増えると繰り返してきたが、リーマンショック後の異常な円高局面で製造企業が生産拠点を次々と海外に本格的に移転させた今日、老朽設備満載工場しかない国内からの輸出に弾みがつくわけはなく、政府の見込みは大きく外れる結果となった。

一方、輸入では円安で輸入価格が高くなっているのに、機械製品が大幅な増加を見せている。これらはかって日本が輸出で稼いで来た分野だが、今では輸入品に押されるようになった。3年前の2011年の貿易赤字転落時には、原発停止に伴う燃料輸入の増加が貿易赤字の主因であった。しかし、現下の輸入は状況が変わった。円安に伴う価格の上昇で燃料は引き続き輸入額増をもたらしているが、注目すべきは機械製品の大幅輸入増だ。数量面で機械製品の輸入増が鮮明になった。

輸入機械製品の中で一本調子で増加しているのが、スマートフォンの普及に伴い、中国からの通信機だ。また、日本企業が海外生産に重きをおいているパソコンなどの事務用機器の輸入も顕著である。さらに自動車の輸入増が際立つ。海外自動車メーカ車の売れ筋が伸び、また海外に移転した工場から逆輸入を行うメーカが現れたことがその背景にある。

かくて、日本の輸入浸透度(国内総供給に占める輸入品のシェア)が趨勢として上昇し、国内需要の拡大が輸入に繋がりやすくなり、貿易赤字の拡大要因となる。すでに輸入浸透度が高まっている中で、安倍政権発足後の内需好調にともない輸入の増加が急ピッチで進んだ。もともと日本は、原材料を輸入して、加工し最終需要財を輸出する貿易構造を構築してきたが、直近では最終需要財の輸入比率が上昇し、貿易構造に変化が生じている。このように日本は国内でも海外製品の勢力が拡大し、輸入の増えやすい経済構造になり、貿易収支の黒字化は簡単ではない。

日本経済の問題はデフレでも円高でもなく、要するに日本の製造企業が世界市場で新興国などの海外勢に負けていることだ。つまり円安ではカバーできないほど競争力が低下してしまったのだ。これに対応するため、日本企業は国内に投資せず、最新鋭の工場を労働コストが低く、需要の拡大が見込まれるアジア諸国に建設し、海外生産を増やしている。内閣府の今年1月調査によれば、海外現地生産比率は、昨年度実績17.7%が平成29年度見通し21.3%に上昇する見込みだ。円安下であっても海外生産の動きは止まらない。

これでは日本はますます産業が空洞化するばかりだ。歯止めをするには「残業手当ゼロ」などの雇用条件の切り下げが不可欠だ、と政府の産業競争力会議のメンバーは一様に云う。今日では似非経営者しかいないのに経済界の意向を政策にすることが仕事と心得ているのだろう。1992年バブル崩壊後現在に至る20年に亘って切れ目なく年々、賃下げと非正規雇用の大幅増で労働コストを引き下げてきたが、その結果、日本企業は強靭になったか。NOだろう。先進国企業はおろか、新興国企業の後塵を拝し、苦境に立たされているのが実態だ。

何ゆえ、か。日本唯一の資源と云うべき人的資源を劣化させたからだ。かって1970年代の石油危機を克服する「省エネ技術」を開発し自動車や家電など多くの日本製品を世界1にした,あのパワーは消え失せた。働く人々のやる気を失くさせる政策を平然と20年も続け、さらにこれからもより一層やる気を削ごうとしている。しかも、それを6月に纏めるアベノミクス成長戦略の「第3の矢」の目玉にすると云うから、お笑いである。

しかるに日本には、中国から供給制限を受けたレアアースの代替を短期間に開発するパワーがある。かかる世界に貢献する新技術を開発し新規の事業で企業改革してこそ製造企業は強くなり、日本は蘇生する。働く人々がハッスルしてスキルを蓄え能力を発揮し、イノベーションを引き起こす政策に転換すべきだ。産業競争力会議は間違いなく日本を衰亡させる。
以上

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