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2014年5月8日
日中逆転、アセアン・パートナー 無法者が商売できないTPP
外務省が3月、香港の調査会社Ipsos社に委託し、東南アジア諸国連合(アセアン)の7ヵ国を対象に「現在において一番重要なパートナーは」について、東南アジアの人々2144人から回答を得た結果、日本が1位に選ばれた。1位日本(投票率・65%)、2位中国(48%)、3位米国(47%)、4位韓国(37%)、5位オーストラリア(30%)、であった。日本を1位に選んだ国は、インドネシア(70%)、マレーシア(65%)、フィリピン(76%)、タイ(74%)、ベトナム(77%)の5ヵ国。1位に中国を選んだ国はシンガポール(60%)、米国を選んだ国はミャンマー(48%)の各1ヵ国である。ちなみに、シンガポールの日本(50%)、ミャンマーの日本(44%)はともに信頼度は悪くなく、これら2ヵ国を含め日本はアセアン7ヵ国から高い信頼を寄せられた。

この傾向は、「将来の重要なパートナー」についても変わらない。1位日本(60%)、2位中国(43%)、3位米国(40%)、4位韓国(35%)、5位オーストラリア(30%)である。6年前の2008年の同調査では、重要なパートナーが現在・将来ともに、1位中国、2位日本、3位米国で、アセアン7ヵ国における中国の存在感は絶大であったが、今回は日本と中国が逆転し、日本はアセアンの熱い期待に応えるべき立場になった。

そもそも何ゆえ、日本が中国を抜いて1位になり得たのか。安倍首相は政権発足直後の昨年1月以降、アセアンの国々をすべて歴訪し、アベノミクスで復活する日本経済を背景に、日本が各国の経済発展に積極的に協力してゆく姿勢を印象づけた。また、昨秋インドネシアでのアジア太平洋経済協力(APEC)はオバマ米大統領欠席のなかで行われたが、中国・李克強首相の面前で、安倍首相が、海洋は重要な公共財であり、開かれ安定したものでなくてはならず、その秩序は「力」ではなく「法」により支配されなくてはならない、と発言し、最後に纏められた議長声明に、海域における「法」による支配徹底の必要性が盛り込まれた。

これまで中国への気遣いで凍りついていた空気から、まさに、アセアンが解き放たれた瞬間であった。中国は石油などの資源が埋蔵する他国の海域や島嶼に不法に侵入し実効支配の動きを頻発させる。だが、近年海軍を急速に増強させる軍事大国・中国の前に、被害国は沈黙するしかない。これに先立つアセアン各国との2国間会談で安倍首相は、南シナ海における「力」による現状変更への懸念を表明し、アセアンが一体となってこの海域での「法」による支配の徹底と行動規範の早期策定に努めるべきだと主張し、日本はアセアンの一致団結した行動を支援すると表明し、日本は世界の平和と安定に貢献する決意を述べた。

かかる安倍首相の一連の働きかけがアセアン各国から重要なパートナーとしての支持と期待を呼び込むターニングポイントになったのであろう。

尤もアジアの安全にとって、米国が最も重要な存在であることは云うまでもない。オバマ大統領は4月下旬にアジア4ヵ国を訪問し、安全保障上のコミットを再確認した。尖閣諸島を含む日本の施政権の及ぶ全ての領土が日米安保条約第5条の適用対象だと大統領自身が初めて言明し、共同声明とした。韓国では戦時作戦統制権の韓国への返還を延長し、マレーシアでは南シナ海での国際法遵守を申し合わした。そして、フィリピンと米比新軍事協定に調印し、両国は中国の海洋進出を見据え早速、米比合同軍事演習を開始し実践的な連携強化に入った。だが、その米国は、軍事費大幅削減政策を変えようとせず、中国が提唱する「新型大国関係」を積極的に進めようとするオバマ大統領の考えに変化はない。アジア4ヵ国歴訪での中国への心遣いは徹底していた。

それを見透かすように、日米共同声明発表直後の今もなお、中国公船による尖閣領海への侵入は繰り返され、5月7日、ベトナムの排他的経済水域における中国の掘削作業を阻止しようとするベトナム艦船に中国船が意図的に衝突する事件が起きた。米国は、中国船のベトナム艦船衝突事件に対し、当事者に安全で適切な行動と自制を求め、主権問題を平和的に外交手段で国際法に則り解決するよう要請すると述べるにとどまる。

これでは中国の不法行為に直面する諸国は、米国がコミットする安全保障に依存するわけにはゆかない。日本は日米同盟を更に深化する努力は不可欠だが、しかし、米国の軍事力だけを軸にした戦略では不十分になったことは明白だ。地域の安定と発展を期すには、いかに経済大国であろうと無法者が商売出来ない経済の仕組みを諸国が連携して構築することが必要だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の合意を急がなくてはならない所以である。

日本が米国と共に主導してTPPが地域全体に行きわたったとき、その時初めて、日本はアセアンの「重要なパートナー」となり得よう。
以上

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