商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2014年2月18日
見失うな、「もんじゅ」本来目標。不可欠な原子力平和利用技術基盤蓄積
2月7日、政府は発電しながら消費した以上の核燃料を生み出せるとしてきた高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の実用化に向けた目標を白紙に戻す、と云う報道がなされた。すかさず、菅義偉官房長官はそのような方向性を決めた事実は全くない、と否定し、エネルギー基本計画については、もんじゅを含め、様々な意見を踏まえて徹底的に検討し、政府として責任をもって対応して行きたい、と述べた。

もんじゅは、1995年ナトリウム漏れ事故、2010年原子炉への機器落下事故、2012年1万点の保守管理不備、などのトラブル続きのため運転停止中で、当初は「夢の原子炉」と期待されたイメージはすっかり色褪せたが、その担う意義は大きい。

そもそも高速増殖炉の開発は、小規模の原子炉で燃料の燃え方や材料についての基礎的な研究を行う「実験炉」、実際に発電する中規模の原子炉で経験を積み、大型化・実用化するための技術や安全性を確認する「原型炉」、安全性、信頼性、運転・保守および経済性の向上を図る「実証炉」、と段階を踏んで進められ、そして「実用炉」に至る。
実験炉は、1977年以来運転(照射試験用実験装置破損のため現在休止中)している「常陽」(茨城県大洗町)がその役割を務めた。もんじゅは原型炉としての位置づけにある。1994年4月に初臨界、翌1995年8月に初送電を行ったが、先述のように諸問題が相次ぎ現在は停止措置の中にある。もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の組織の緩慢さに憤りを覚えざるを得ない。

その上、2011年3月11日の東北大震災による東電福島第1原発事故後、国内の原発は定期点検のために全面的に稼働停止になったが、「原発の事故リスクが巨大」、「原発なしでも電力は賄える」、「放射性廃棄物の処分策が決まっていない」、などの理由で脱原発を訴える声が急速に広がった。事故前の民主党の菅政権では、環境(CO2削減)の観点から「2030年電源供給の5割を原子力」に舵を切ったが、事故後の野田政権で、突如として「2030年代に原発ゼロ」を政策として掲げる(経済界の反対を受け閣議決定に至らず)など右往左往した。また、先の東京都知事選挙では、細川・小泉の元首相タッグが脱原発を争点に打って出た。ことほど左様に、原発に対する国の方向づけは、まだ定かではない。

しかるに、もんじゅの目標見直しは原発開発からの撤退を意味し、脱原発を謳う者が喝采するところであるが、事はそう簡単ではない。原発全面稼働停止に伴う火力発電の燃費は年間で3兆6千億円増加し、貿易赤字の主因となっているが、日本が強い経済を取り戻すには、産業と国民生活の基礎となる安価で安定した電力が不可欠だ。原発の再稼働が喫緊の課題であることは間違いない。

そのために決めなくてはならないのは、原発技術の開発を続行するのか、どうかだ。世界の原発は430基に上る。最多は米国の104基、フランス58基、日本50基、ロシア29基、韓国23基、と続く。日本が原発ゼロを目指しても、原発をどんどん建設する国はいくらもある。アジアでは今後20年間に100基増える見込みだ。中国は現在15基が稼働しているが、建設中・計画中が55基もある。なお、これらの国々の中で原発技術が最も優れているのは日本だ。東芝の米ウエスティングハウス社買収、日立と米GEとの合弁会社設立、三菱と仏アルバ社との合弁会社の設立など日米仏の協力関係は緊密化している。

懸念されるのは、脱原発の動きが原発技術者の企業離れを誘うことだ。思い起こすが良い。デジタル家電の技術が韓国に一瞬にして移転したことを。それを可能にしたのは、1992年バブル崩壊後のリストラによる多くのデジタル家電技術者が、韓国企業に就いたことだった。同じことが原発技術者に起きるとすれば想像するだけでも恐ろしい。家電は所詮、個々人の消費財に過ぎない。だが、原発は違う。原発は国の根幹をなすエネルギー源だ。

日本が原発技術を捨てるとすればアジアの原発は、好むと好まずに拘わらず、今後国内において数多くの原発建設の経験を積む中国に依存する虞(おそれ)がある。覇権国家中国に「原発」で制圧されたアジアを見ることほどおぞましいものはない。

昨年5月、安倍首相はアラブ首長国連邦(UAE)とトルコを訪問し、両国と原子力協定を締結、また6月に訪日した仏オランド大統領とヨルダンやベトナム、シンガポールなど東南アジアへの原発輸出で協力することに合意した。原発の安全対策は、事故を経験した日本だからこそ他国にアドバイズできる部分は多くある。

世界の原子力平和利用技術基盤の蓄積のため、もんじゅ本来の目標を見失ってはならない。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。