商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2014年1月30日
製造業国内回帰、蘇生と成長のために。貿易立国崩壊、大幅貿易赤字
財務省が1月27日発表した2013年の貿易統計によれば、輸出額69兆7877億円(前年比9.5%増)から輸入額81兆2622億円(同15%増)を差し引いた貿易収支は11兆4745億円の赤字で、過去最大となった。貿易赤字は東日本大震災発生の2011年以降3年連続だ。それまで貿易黒字は30年間継続し、かつ近年はリーマンショックの2008年まで10兆円を上回った貿易黒字が、一瞬にして同規模の赤字に転落した。

震災後の原発停止で火力発電への依存度が高まり、原油や液化天然ガスなど原燃料の輸入が増えている上に、円安による輸入価格高騰が重なった。また、個人消費を中心とする堅調な内需によって半導体電子部品などの輸入数量が増加した。物価は、円安に伴う原燃料値上げの転嫁を受けた電気代などエネルギーの高騰が家計を圧迫する。昨年12月の消費者物価指数(生鮮食品は除く)は前年同月比1.3%上がり、5年ぶりに前年を上回った。
一方、アベノミクスによる円安が追い風となる筈の輸出が捗々しくない。冒頭のように、輸出額は対前年比9.5%の増加となったが、殆どが円安によって円安表示の価格が上昇したことによるものだ。円安下であるのに、輸出数量指数は対前年比1.5%の減であり輸出数量が落ちているのである。従来ならば、円安は価格競争力をつけ輸出数量を拡大し、貿易黒字をもたらした。安倍政権誕生とともに打ち出されたアベノミクスは、絵に描いたような円安軌道を背景に、まさにかかる期待を彷彿とさせるものであった。

然るに、日銀の異次元金融緩和が輸出企業に円安による膨大な為替差益をもたらし、あたかも日本経済が復活したかの様に東京株式市場は賑わったが、政権1年目にして過去最大の貿易赤字の現実を目の当たりにしたとき、実体経済を改善しデフレ脱却を目指すと云うアベノミクスとは何だったのか、疑問視せざるを得ない。円安で輸入物価が上昇するのはやむを得ないが、それによるマイナス面を吹っ飛ばす、輸出量増大を実現せずして何の舵取りか。
そもそも輸出を担う製造企業は、1992年のバブル崩壊後今日に至るまで22年間、リスクが伴うから開発投資はしない、設備投資はしない、人材投資はしない、を貫き通し、ひたすらコスト削減のために人件費を減らし、そしてついに低賃金の新興国に工場移転し、おカネを後生大事に貯めて来た。そのカネを内需拡大のために賃上げに回せとの安倍政権の号令があって、マスメディア調べでは、今春闘で賃上げを検討する企業は70%に上ると云うが、肝心のベースアップは9%にとどまる。あくまでも、リスクは負わない経営姿勢だ。

かかるマインドの日本の製造企業が円安になったからと云って、国内の生産を強化するわけがない。現地通貨建て価格を下げて売りまくるより、現地通貨建て価格を変えないで無理をせずこれまでの販売量を維持する方が、円安分だけ円建ての輸出売上高が増える。生産量が増えないからコストがかからず、利益は確実に増える。いつまで経っても輸出数量が増えない所以だ。尤も、製品の品質・性能が長期に亘って磨きがかかっていないから、技術のキャッチアップにアグレッシブな現地メーカとの製品差別化は難しかろう。

ところが、日本製造企業が基盤としたい新興国に震撼する出来事が生じた。米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月29日、米景気の基調は底堅いとして量的金融緩和の縮小を継続して行う、と決定したのである。この決定を受け、米国の金融超緩和策でドル漬けになっていた新興国の景気が悪くなるとの懸念から、たちまち世界同時株安が広がった。インド、アルゼンチン、トルコ、南ア、などの通貨が急落し、新興国は金融引締めに入った。かくて、世界経済の担い手は、これまでの新興国から米欧日など先進国に代わる公算が強くなった。

米国の金融緩和の引締めで新興国から資金の引上げが始まり、新興国ブームが終息に向かい、また、日本が量的金融緩和をさらに続け、かつ貿易赤字の改善がなり難いことによる「円安」が定着しても、日本の経営者は海外移転の方針転換が出来ない。キャノンやダイキンなどに日本回帰の動きがあるが、多くの企業が国内回帰を目指すトレンドにはない。

日本のモノ造りはすり合わせ技術だ。世界に冠たる省エネや環境技術もすり合わせ技術だ。企業内での開発と製造現場のすり合わせのみならず、異業種間のすり合わせがある。欧米に出来ない日本独自のモノ造り技術である。この技術の再生には製造業の国内回帰が不可欠だ。個々の企業が新興国に散らばったままでは新技術や新製品の開発は望み得ない。現状のままでは早晩、日本の製造業は確実に衰亡する。

安倍政権は法的措置を逡巡せず、製造業の国内回帰を牽引することだ。製造業の国内回帰による製造業の蘇生と成長こそ、アベノミクス「第3の矢」ではないか。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。