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2013年11月18日
円安なのに減少する輸出。メイド・イン・ジャパン・ブランド
2013年9月中間決算で、東京証券取引所第1部上場企業の純利益が合計で13兆3千億円を超え、中間決算として過去最高となった(SMBC日興証券調べ)。ちなみにこれまでの純利益最高額はリーマン・ショック前の07年9月中間決算の12兆3030億円であった。好決算の要因は、アベノミクス第1の矢の「金融緩和」による円安効果だ。円安が進行すれば、原価は増えずに売り上げが増えるため、増益効果は大きい。その上、賃上げをせず、設備投資をしないから利益増は当り前である。この好決算を受け、経営者が賃上げや設備投資の拡大に踏み切るかどうかに、日本経済成長の成否がかかる。

しかるに、内閣府が11月14日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)は実質ベースで、4〜6月期より0.5%の増となり、年率換算で1.9%増にとどまった。今年に入ってGDPは年率換算で4%前後の高い成長率が続いていたが、ここにきて一服感が否めない。GDPの6割を占める個人消費が前期比0.1%増にすぎず、1〜3月の同0.8%増、4〜6月の同0.6%増に比し、頭打ちが鮮明になった。景気の回復には、賃上げの実現で所得が増えるかが焦点だ。何とかGDPのプラス成長を支えたのは公共投資で、前期に比し6.5%増えた。アベノミクス第2の矢の「緊急経済対策」の公共事業が本格的に動き出したことによるが、財政が破綻状況にある今日、あくまでも限定的だ。

問題は、輸出だ。輸出は前期比0.6%減で3四半期ぶりにマイナスに転じた。「円安」で輸出量が増え、GDPを牽引する柱になるものと期待されていただけに製造企業に対する失望感は大きい。アベノミクス第3の矢は、第1と第2の矢がもたらすささやかな経済環境の好転を活かし、民間企業を活気づかせる成長戦略であるが、肝心の企業に低賃金依存経営から抜け出せない経営者が蔓延しているからどうにもならない。甘利明・経済財政相は14日の会見で「輸出は米国などの景気回復によって増えるだろう」と述べた。果たしてそうか。

日本経済を牽引する自動車業界の実態を見たい。13年4〜9月の自動車大手8社合計の輸出台数は294.4万台で、12年同期の292.4万台に比しほぼ変わらない。ところが、4〜9月の輸出額は、13年は12年に比し6632億円も増えた。13年9月期の営業利益は対前年比で8464億円増となったが、実に営業利益増の8割近くが、円安がもたらした金額膨張効果によるものだ。

鉱工業生産指数においても、13年9月の指数98.5 (05年=100)は、リーマン・ショック後のピークであった12年1月101.5に対し97%の水準であり、なお12年1月は円高期(1ドル=76.98円)であった。日本の輸出力が減衰し、製造業の生産が縮小したのは明白だ。

かくて今日、日本は深刻なる事態に直面している。貿易赤字の常態化だ。貿易統計によれば、2013年度上半期(4〜9月)は、4兆9800億円の赤字であり、前年比54%の大幅赤字増だ。1年前の1ドル=80円の円高に対し、本年上半期は1ドル=99円の円安であり、本来なら貿易赤字は縮小しているはずなのに、である。原発停止に伴う燃料輸入量の増加や円安による輸入額も増えたが、それより何より輸出そのものが低迷し減少しているのだ。

これだけ円安が進み価格競争力が高まっているのに輸出が減少し、恒常的な貿易赤字をもたらすのは、日本の貿易構造が変化したからに他ならない。かっては、多くの企業が国内で製造した製品を海外の市場に輸出するビジネスモデルをとっていた。しかし、国内の少子高齢化や円高などにより大手企業は海外の低賃金国へ続々と生産拠点を移行した。その結果、海外で生産した製品を海外市場で販売し、また日本へ逆輸入するケースが常態化し、日本の輸出額は減少傾向を辿らざるを得なくなった。

だが、しかし、である。生産を海外展開している製品は低コストが競争力の低付加価値製品だ。時間を置く間もなく早晩、アジア、アフリカの新興国企業が競って進出する分野であり、日本企業はその流れに呑み込まれるだけだ。日本企業が技術を「売り」にするのなら、現下の円安を機に国内回帰が必須だ。国内にはあらゆる産業において世界トップレベルの高い技術を有する企業が多く、かつ異業種間すり合わせのテクノロジーが健在だ。これは欧米も真似できない日本独特の風土だ。各企業は切磋琢磨して高付加価値製品を開発し、メイド・イン・ジャパンのブランドを世界の富裕層に提供する市場を積極的に開拓することだ。そして、新興国企業との棲み分けを築いてこそ、日本がとるべき貿易収支建て直しの王道だ。

企業には膨大な余裕資金があり、時は今、どのようにも絵が描ける。国内回帰による企業変革を決断するのは経営者だ。「座して喰らえば山も空し」、にならぬよう心されたい。
以上

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