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2013年9月23日
賃上げなしに消費税引上げなし。賃下げしか能がない経営者を淘汰すべし
安倍晋三首相は、来年4月に消費税率を現行の5%から8%に引上げる方針を固めた,と報ぜられる。4〜6月期の経済成長率は上方修正され、また、それ以外の鉱工業生産指数や完全失業率などの経済指標も景気の回復基調を見せている以上、当然のことと見る向きが大勢を占める。果たしてそうか。

マスメディアやエコノミストは、かかる現象を囃したてるが、抜け落ちているのは、「消費税引上げは、デフレ脱却が絶対条件」、の核心の視点だ。デフレ下の消費税引上げはデフレのスパイラルを加速するだけだ。このことは誰もが知るところである。そのデフレに、日本は1998年より現在に至る15年の長きに亘って陥り、尚且つその間、輸出産業を中心に欧米や新興国の景気を享受した、2002年2月より2007年10月までの69ヵ月に及ぶ「いざなぎ越え景気」がありながら、ついにデフレから抜け出せないままにある。

そのデフレの元凶は何か、その元凶を解消せずしてデフレ脱却はあり得ない。小欄は早くから、その諸悪の根源は正規雇用から非正規雇用への切替えなどの賃下げにありと指摘してきたが、ようやく現政府が、賃下げの常態化がデフレを招いたとの見解を鮮明にした。冒頭の景気回復を見せる2013年4〜6月期においても、正規雇用が前年比53万人減る一方で非正規雇用は106万人増え、非正規雇用は36.2%に増加し、賃金下降の流れは変わらない。

安倍政権は、消費税引上げによる景気腰折れを防ぐために、消費税引上げに備えて5兆円規模の経済対策を打ち出す。つまり、消費税引上げ率3%(増税8兆円)のうち2%(5兆円)をこの対策に充当すると云う。その中身は、低所得者向けや住宅購入者への現金給付などの家計への配慮もあるが、景気の牽引を担う企業への減税に重きを置く。復興特別法人税の1年前倒しの廃止、設備投資減税、所得拡大促進税制の緩和、法人税引下げ等々、企業の実効税率引下げがてんこ盛りだ。

企業減税を突破口に、賃金が上がる、消費が増える、生産が拡大する、企業業績が上がる、雇用が増える、賃金が上がる、消費が更に上がる…と云う好循環シナリオは、政権が描くデフレ脱却の絵姿だ。何としても企業に賃金引上げの決断を迫りたい。そのための企業減税である。

小泉政権下の2004年、製造業への派遣が解禁されて以降、労使間のパワーバランスが崩壊し、労使間にまともな賃金決定メカニズムが存在しなくなった今日、政府が賃金決定に乗り出さざるを得ない。9月20日、初めて開催された政労使会議で、安倍首相は、「政労使が胸襟を開いて議論を交わし、ともに成長の好循環をつくって行きたい」と述べ、米倉経団連会長は、政府の経済対策に企業減税が織り込まれたことで,「官に取られるより企業に残る部分が多くなるので賃金は上がると思う」と応じた。

しかし、である。そもそも賃上げは、生産性が上がらなければ成し得ない。デフレ下のこの15年間、何代も人が代わっても経営者は高付加価値製品の開発や生産方式を改革するような設備投資を一切しなかった。ひたすら人減らしや非正規雇用の拡大、賃下げに血道を上げ、人件費削減だけで企業を運営してきた。他に強いてと云えば、円高を背景に安価に新興の低賃金国に工場を移したこと位か、そこには如何なる経営進化も技術進化もない。何もしなかった証左に、企業が抱える余裕資金は230兆円に上る。

デフレ下では賃下げ以外は何もせず、お金を貯めることが最良の経営と考えたのであろう。これではバカでも経営ができる。こう云う時代が15年も続いたわけで、ひと昔前、ジャパン・アズ・ナンバー1の賞賛を浴びた頃の勢い漲る面影は全くなく、追い抜いたはずの欧米企業やキャッチアップ旺盛な新興国企業の後塵を拝す局面が多くなった。ちなみに8月の輸出から輸入を差引いた貿易収支は約1兆円の大赤字で、貿易赤字は過去最長に並ぶ14か月連続となり、金額も8月としては統計史上最大となった。ついに国の経済を危険水域に突入させたわけであるが、経営者の経営能力退化がもたらした当然の結果だ。

今回の消費税引上げは先ず家計を直撃する。さらに日銀は2%の物価上昇を目指す。もし賃上げが不発に終わり経済対策の効果が家計に及ばなければ、家計は増税と物価高のダブルパンチに見舞われ、消費と景気を一気に冷やすのは必定だ。そしてその時俄かに、家計より企業への所得移転がクローズアップされ、政権に対する怨嗟が燎原の火のごとく広がろう。

安倍政権は、政労使会議で経営者に賃上げをお願いするのではなく、まさに馬齢を重ねただけの頑迷なる老人から創造力豊かな気鋭の人材へ経営者の新陳代謝を促さなければ、アベノミクス第3の矢の達成は、あり得ない。
以上

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