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2013年8月19日
国民をデフレ・スパイラルに追い戻す消費増税。経済再生は賃上げより始まる
安倍政権が、来年4月に現行5%の消費税率を8%に引き上げるか、判断する材料が出始めた。国内総生産(GDP)4〜6月期の速報では、物価変動を除く実質成長率が年率換算で2.6%増となり、3・四半期連続のプラス成長となった。また、6月の消費者物価指数(CPI)が前年同月を0.4%上回り、1年2ヵ月ぶりに前年同月を上回った。これらを受けて、マスコミや1部のエコノミストらは、待望の消費税率引き上げが決まったかのように、囃す。彼らは、デフレ下の厳しい状況にあってもしきりに時の政権に対し、消費税率引き上げが不可欠だ、と騒いでいた。

確かに、国並びに地方の公的債務は、今や1千兆円を超しGDPの2倍以上と云う、先進国に例を見ない危機状況にあることは間違いない。だが、うわべの数字だけで消費税引き上げを煽動してはならない。消費税引き上げの環境が本当に整ったか、を吟味すべきだ。

昨年8月、民主党政権下で3党合意に基づき成立した消費増税法は、2014年4月3%、2015年10月2%の消費税率引き上げを定めた際、税率引き上げの前提として「経済状況の好転」を挙げている。ただ、「好転」を確認する具体的な基準は明示されておらず、経済成長率や物価動向に関する経済指標を「総合的に勘案」すると規定された。また、増税停止の可能性についても触れているが、明確な基準はない。

果たして、税率引き上げを容認する「経済状況の好転」はあったのか。答えは「NO」だ。4〜6月期GDP年率2.6%増と云うが、GDPを牽引した輸出も個人消費も、その中身はアベノミクスが喚起した円安・株高によるものだ。4〜6月期の企業決算で好業績が相次いだのは、円安・株高の恩恵を享受した結果だ。また好調な個人消費も株高で儲けた人らが高級品を買ったためであり、圧倒的多数の家計の紐は固く閉じたままだ。その上、景気上昇のエンジンとなるべき設備投資は6・四半期連続のマイナスである。

6月のCPI前年同月比0.4%上昇もまさにアベノミクスの円安がもたらした輸入物価の上昇によるものだ。火力発電所用の天然ガス・原油の輸入単価上昇による電気料金値上げや輸入食品原材料などの値上げが家計を圧迫している。この動きを以て、「デフレからインフレの流れになりつつある」と云う政治家がいるが、国民にとっては辛い話しだ。景気が良くなってモノがよく売れ、需要と供給が引き締まって、物価が上昇すると云う「良い物価上昇」には程遠い。

逆に賃金は、6月の現金給与総額は夏のボーナスが増え前年同月比0.4%増となったが、肝心の所定内給与は前年同月比0.2%減と13カ月連続して減少している。賃金が下げ止まらないなかで、ただでさえ円安による生計費圧迫の上に消費増税が加わるとなれば、ほかの出費を節約するしかなく、個人消費が伸びる筈もなく、「良い物価上昇」に繋がるわけもない。これでは、消費が縮小するのは自明の理であり、せっかくの景気気運を腰折れさせ、デフレ脱却どころの話しではない。

「経済再生」を実現するには、先ず賃金が上昇し、それにより消費が上向き、民間設備投資を促す好循環が動き出すようにもって行かなくてはならない。しかるに近年、労使のパワーバランスが崩れており、賃金引き上げを労使の自主的な交渉に期待することは難しい。今日では労働組合が雇用維持のために賃金引き下げを進んで受け入れ、経営側もそれにかまけた経営を行い、経営が厳しくなれば更に賃下げに拍車がかかると云う構図すらある。一流とされた企業で「追い出し部屋」なる陰湿な話題が絶えないが、労使と云う当事者による「自主的な決着」の発想は消え、これに伴い経営者の経営責任も恐ろしく希薄になった。

本来は、賃上げは各企業の労使間の話し合いで決定されるべきものだが、労使がこれではどうにもならない。そのため近く政府は「政労使」による交渉を開始し、賃金上昇に向けた取り組みを急ぐ段取りだ。今や、賃上げさえ政府が関わらなくては実現しない。

つまり、消費税率引き上げの前提とする「経済状況の好転」は、「政労使」による今後の賃上げ交渉の成否にかかる。この如何を受けて安倍首相は秋の臨時国会前に、消費税引き上げについて最終判断をするが、拙速による経済再生のぶち壊しはあり得ない。拙速なる増税によって国民をデフレ・スパイラルに追い戻すのではなく、経済を再生させ、社会を活性化することで、先ず本来の租税増を図るべきだ。懸案の財政再建のために、経済再生は絶対不可欠だ。日本がおかれている岐路を誤ってはならない。
以上

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