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2013年8月5日
製造業を亡ぼす低価格製品シフト。練磨せよ、高付加価値製品
日本銀行は、7月の金融政策決定会合で、景気の現状について前回6月の「持ち直している」から「緩やかに回復している」へ上方修正し、2年半ぶりに「回復」と云う言葉を盛り込み事実上の景気回復を宣言した。公共投資や個人消費が底堅く推移する中で、輸出の持ち直しによって民間企業の設備投資が下げ止まり、製造業の生産活動が緩やかに拡大し、企業景況感が改善してきた。輸出は、円安による価格上昇だけでなく、数量面でも中国向けを中心にアジアへの輸出が1〜3月期の前期比▲0.5% から4〜6月期は3.1% の増加に転じ、また米国向け(1〜3月期前期比0.7% →4〜6月期4.2% )は増勢を強め、EU向け(1〜3月期前期比▲2.7% →4〜6月期0.8% )が下げ止まるなど増加傾向が明確になってきた。

事実、円安を受けて企業の業績が急回復している。SMBC日興証券が8月1日、前日までに発表された東京証券市場1部上場の596社(金融業を除く)を集計した結果、本業の儲けを示す営業利益は前年同期比33.7% 増え、最終的に企業が手にする純利益は2.1倍に膨らんだ。自動車は営業利益が25.1%増え、自動車向けに好調な鉄鋼も営業利益は4倍に達した。苦境に立たされていたソニーはテレビ部門が3年ぶりに黒字に転換するなど、営業利益は前年同期比4.8倍になり、シャープも当初は赤字を予想していたが、円安で競争力が付いた液晶パネルの売上高が前年同期比30%増となり、営業損益は30億円の黒字に転じた。円安効果は輸出だけではない。製紙などの素材業界は円安による原材料値上がりの影響を受けるが、円安により海外からの安い輸入品が減少し、値上げ交渉がし易い環境にある。

思えば、円は、2008年9月のリーマン・ショックにより、その直前の水準に比し対ユーロで4割、対ウオンで6割も切り上がった。その結果、ドイツと韓国は輸出主導で経済が早期に回復したのに対し、日本は長期に亘って円高が高止まりし、輸出が急減した。それに伴い、もはや国内での製造業の生産活動は維持できないのではないか,と云う懸念が広がり、製造企業は次々と海外への生産移転を加速させた。

異常なる円高の前に、日本は茫然自失に陥ったが、その反転(円高是正)は、アベノミクスの超金融緩和策によってようやく成され、黒田日銀の異次元金融緩和策で4年ぶりにやっとリーマン・ショック以前の水準(1ドル=100円台)に円は復帰した。慌てたのは韓国だ。一時見せたウオン高は、今は一服状況にあるが、スマートフォンで業績を伸ばすサムスン電子を除き、鉄鋼大手のポスコや現代自動車などの製造業は、ウオン安修正により輸出採算が悪化し、4〜6月期も業績悪化に晒されている。ひと頃は、韓国独り勝ちが囃されたが、為替トリックが成した業(わざ)に過ぎない。人口4000万人と日本の4分の1しかない国内市場は小さく、国内総生産(GDP)に占める輸出依存度が50%以上の韓国が置かれる環境は厳しい。

さて日本。円安効果が顕在化する中で、海外移転を推進した企業は,今さら国内回帰など考えられない、と云うが、果たしてそうか。彼らは「地産地消」を尤もらしくのたまうが、彼らがやってきたことは、結局、アジアの低賃金による低価格生産だ。中国の賃金上昇を理由に他の低賃金国に工場を移す動きがあるが,まさに低賃金依存もここに極まる、である。だが、国内で久しぶりに円安を謳歌する輸出企業も、もとはと云えば、労働者の低賃金化依存に拠るものだ。つまり、海外組も国内組も低賃金による低価格製品しか眼中にない。低価格製品へのシフトで製造業を衰亡させた英米の跡を辿るように、である。低価格製品には人材も高価な設備もムダでしかないが、このような世界に発展や進化があろう筈もない。

しかるに、日本には人口1億2千万人、かつ世界有数の1人当り国民総所得(GNI)47,870ドルの量質ともに豊穣の市場が歴然とある。この市場で育て世界に出した高付加価値商品は無数にあり、今なお、日本を経済大国に育て上げた技術の集積がある。重厚長大、軽薄短小、エネルギー、水、環境などモノ造りの諸分野において、人類が追及すべきテーマは無数にある。企業は、未踏の技術開発に挑戦し、これまでに無い高付加価値製品を国内市場に投入し人々に喜ばれる商品を世に出すべきだ。高価でも、欧米のみならずアジア富裕層に確実に受け入れられるものとなろう。日本企業が貧困のモノづくりに邁進しても将来はない。

「日本は少子高齢化で市場は縮小するばかりで魅力はない」と企業が言い切ることほど罪深いことはない。日本を若返らせるために、企業は、低価格製品から高付加価値製品への生産転換を実現しなくてはならない。人をコストでなく人材と見てこそ、企業は活性化する。

米国はオバマ大統領がメイド・イン・USAの復活に着手し、英国政府も製造業の強化に動き出した。日本政府は、企業トップの経営姿勢を糺さなくては、アベノミクスは作動しない。
以上

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