商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2013年7月25日
安倍政権、凄まじい経済外交。ついてゆけるのか、何もしなかった経営者
日本は7月23日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加手続きを終え、マレーシア・コタキナバルで開かれている交渉会合に12番目の参加国として合流した。日本の交渉参加で、TPPは世界のGDP(国内総生産)の40%、世界の貿易の3分の1を占めるようになり、通商戦略で出遅れていた日本は、TPP交渉参加で転換期を迎える。これまで日本は、13の経済連携協定(FTA)を結んでいるが、いずれも経済規模が比較的小さい新興国との2ヵ国協定が中心だ。日本の貿易総額に占めるFTA相手国の比率は19%に過ぎず、韓国の35%に遠く及ばない。

また、安倍首相は、昨年12月26日の政権担当からわずか半年で、日本と経済や安全保障(2プラス2協議)の強化を行なう国を、従来の米国、豪州に加えて、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナム、モンゴル、ロシア、フランスと凄まじい勢いで増やした。さらに7月25日、マレーシア、シンガポール、フィリピンの東南アジア3ヵ国歴訪に向けて出発した。8月には、オマーン、カタール、バーレーン、クウェートを訪問し、経済や安全保障分野の連携を確認する。

首相に呼応するように7月月内に5閣僚が世界各地に飛び、政権は国益をかけた「地球儀外交」を展開する。「2国間だけを見るのではなく、地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰する戦略的な外交を展開する」とする安倍首相の狙いは、自ら発信した経済政策、「アベノミクス」によって日本を長期に亘るデフレから脱却させるために、民主主義や市場経済などの価値観を共有する国々との関係を強める「価値観外交」を推進し、アジアの成長ダイナミズムを取り込むことにある。
日本の生産年齢人口が減少していく中では、国内で十分な需要を確保することが困難で、人口が少子高齢化する限り日本の経済成長はない、とする見方が広がる。ならば、日本の市場が拡大しなくても、周辺国の市場が拡大すれば、その需要に食い込むことで経済活力を高められる。国際経済学の理論に「グラビテイ・モデル」がある。これは、各国間の貿易フローを各国の所得、各国間の距離、地理的文化的なつながりで説明するものだ。つまり、両国の経済規模が大きいほど、両国間の距離が短いほど、2国間の貿易は大きくなる。ドイツが日本よりも貿易依存度が高いのは、周辺国に大きな市場があるからであり、日本は欧米との貿易の比重が高かったが、その距離の遠さゆえに貿易量は小さかった。ちなみにGDPに占める輸出比率は、ドイツ41%、日本13%である。なお、近隣に経済大国に成り上がった中国があるが、信頼関係がないところに恒久的な経済は成り立ち得ない。

アジアとの貿易を伸長するうえで欠かせないのは、太平洋を法と民主主義が支配する自由な海の確保だ。中国は古い超大国であるが、近代国家としての歩みは共産党一党独裁の新興大国に過ぎない。早く国際法および国際的ルールを習熟して貰いたい。ある日突然、他国の島を自国の領土と主張し、威喝行為をする様は、北朝鮮に似ておぞましい。習近平国家主席は、6月中旬の訪米の際、尖閣問題を念頭に、「太平洋には米中の両大国を受け入れる十分な空間がある」と発言し、その時代錯誤的な驕りを、オバマ大統領に一蹴されたと伝えられる。

ところで日本が目指す経済外交は安全保障に裏打ちされたものでなければ砂上の楼閣でしかない。与党の参院選圧勝による捻じれ現象の解消により、日米同盟を深化するための集団的自衛権の行使を可能にする検討が日程に上がり、今回の東南アジア3ヵ国訪問では、南沙諸島への中国侵害を強いられるマレーシア、フィリピンとの協議が具体化する。また、日本領土に執拗に攻め立てて来る中国への防衛策として、自衛隊に「海兵隊的機能」を整備する方針が出された。このような動きに対し、中国は日本の右傾化を囃すに違いない。だが、戦後日本の左・リベラルの立ち位置から真ん中に是正するだけのことで、右傾化ではない。

かくて安倍政権はアジアに対する日本のアイデンティティーの布石をスピードアップし、経済外交に邁進しているが、肝心の経済界の動きは依然として鈍い。賃金も物価も下がるデフレ下で、何もしないことに血道を上げ得た経営モデルは、アベノミクスが投じられた今日においては通用しない。すでに円安による原材料価格が上昇し、高付加価値製品の開発や新しい生産技術の開発なしには、前途が危うい企業が現出する。何もしないことが最大のリスクになってしまったのだ。アベノミクスが求める経済やビジネス環境の変化に、どれだけの企業が対応できるのか、人材も設備も枯渇した日本企業の課題はあまりにも重い。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。