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2013年5月10日
濡れ手に粟か、黒田緩和。実践なき大義は国を亡ばす
安倍政権の経済政策「アベノミクス」による金融緩和に期待感が高まり、これまで長期に亘って円高株安で停滞してきた日本経済を円安株高の流れに転じ、さらに、4月4日、安倍政権の推挙で日銀トップに就任した黒田東彦新総裁が「異次元の金融緩和」を発表したことで円安が加速した。5月10日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=101円台まで値を下げ、4年1ヵ月ぶりの円安水準となった。この円安を受けて東京株式市場は日経平均1万4600円を5年4ヵ月ぶりに回復した。株価がすでに上昇に転じていた昨年末以降でも、日経平均上昇率40%は米ダウ工業平均10%、英国5%、中国横ばいに比し、日本株の伸びが際立つ。

日銀は金融調整目標を従来の無担保コールレートからマネタリーベース(日銀が供給する資金量)に変更し、マネタリーベースを2年間で2倍にすると約束したほか、2%のインフレ目標を2年以内に実現すると明言した。空から大量のカネをばら撒くような、あまりにも大胆な緩和ぶりに、海外から「ヘリコプター・ハルヒコ」の異名をとった。アベノミクス第1の矢「大胆な金融緩和」は、日銀のレジームチェンジを内外に見せつけ、久しぶりに世界の投資家に、日本が世界第3位の経済大国であることを思い起こさせたに違いない。4月の海外投資家による日本株市場は2兆6826億円の買い越しとなり、1982年7月の統計開始以来、月間で過去最高を記録した。

この大胆な金融緩和が諸外国から容認されるのかどうか、が懸念されたが、4月18日、米ワシントンで開催された主要20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、黒田総裁は今回の緩和について、「あくまでもデフレから脱却し内需を支援するため」と云う国内目的であることを繰り返し説明し、日本が早く復活し世界経済に寄与したいとする姿勢を貫いた。

しかしながら、急進する円の「独歩安」によって日本の輸出だけが有利になることに対する米欧の視線は厳しく、いつ摩擦が生じてもおかしくない状況にある。殊に、先進国で突出した債務超過財政の危機にありながら、円安株高を謳歌する日本の大規模な金融緩和を苦々しく見ているのは、新興国だ。日米などの金融緩和で溢れ出たカネは、それぞれの国内市場を潤すだけにとどまらず、しばしば新興国市場に向かい資産バブルを惹起するからだ。

2008年9月に発生したリーマンショックで金融危機に陥った米国が徹底した金融緩和を断行した結果、2010年、国内で行き場のない低金利の膨大な量のドルがキャリー・トレードによって金利の高いブラジルに流入し、通貨のレアルや資産を高騰させ同国経済を攪乱した。現在、ブラジルはようやく落ち着きを取り戻したが、キャリー・トレードは発展途上の新興国(おおむね活気のある国は金利が高い)にトラウマとなって染付いている。なお、キャリー・トレードは、金利の低い通貨で借入れた資金を外国為替市場で金利の高い他の国の通貨に交換し、その国の株式や債券、不動産などに投機運営することで金利差収入や投機収益を狙う取引だ。

実は、2003年から2007年にかけて、ゼロ金利・金融緩和下の日本の円は、ヘッジファンドがキャリー・トレードの通貨として利用し、米ドルに交換されサブプライムローン・バブルに大きく関わったとされる。その円はリーマンショック後急速に円高に転じたため、円キャリー・トレードは鳴りを潜めたが、今年に入って、安倍政権の大胆な金融緩和政策によって、再び、キャリー・トレードで円が最も魅力的な資金調達通貨として浮上しつつあるとする観測が出てきた。

安倍政権は、大胆な金融緩和は規制緩和など思い切った構造改革によって投資を誘発し日本経済を成長軌道に乗せるためだと言うが、もともと日本はカネが不足して苦しんできたわけではなく,カネは企業も個人もたっぷりと持っているが、それらのカネを生産的に活用できないから苦しんできたのだ。何の改革もないまま時を過ごすことになれば、日銀が洪水のように注ぎ込んだカネの大半はたちまち海外に向かわざるを得ない。円キャリー・トレード浮上の所以だ。

世界各国が日本の大胆な金融緩和に期待するのは、日本で消費や投資が盛り上がり、日本への輸出が増えることだ。6月のG8首脳会議で安倍政権が目指す成長戦略を報告し、かつ実践しなくては、世界に発信した「黒田緩和」は輸出頼みの円安誘導と見做され、日本は世界からの信用信頼を一挙に失う。デフレ脱却と内需伸長による経済成長は、何よりも日本国民の悲願だ。総力を挙げて国の再生を計るときである。
以上

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