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2013年4月23日
喫緊の無能社長交代システム。最下位転落の企業国際競争力
安倍晋三首相が打ち出した「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」なる3本の矢は、日経平均株価を5年ぶりの高値に押し上げ、個人消費面でも3月の全国百貨店売上高は婦人服など衣料品の主力商品を始め、宝飾品や時計などの高額品も大きく伸び、7年ぶりに3ヵ月連続で前年を上回り、また、同月の首都圏マンション発売戸数も前年同月比48.4%増と大幅に上昇した。安倍政権の「アベノミクス」がもたらした円安・株高で、景気回復ムードが出てきたことは確かだ。一方、円安による輸入物価の上昇が、ガソリンや電気、食糧などにきっちりと出始め、国民生活を圧迫しつつあることも事実だ。

かかるなかで、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、最近行われた日本外国特派員協会での講演会で、「安倍政権の本当の苦しい戦いは今から始まる」と述べたが、そのモノ言いに些か違和感を感ぜざるを得ない。安倍首相が自ら語るなら、その通りだが、経済界の代表が他人事のように宣うのは如何であろうか。そもそも日本経済をデフレに追い込んだのは、企業に成長が見られなくなったからだ。経営者の使命として最も重要な企業成長を図ろうとせず、利益を出すための活路を労働コスト削減に求め、低賃金の非正規社員を増やし正規社員の賃金を下げ続けた結果、1997〜2012年の賃上げ率は名目で13%も下がった。これでは国内総生産(GDP)の60%を占める個人消費が伸びるはずもなく、日本がデフレに陥った所以だ。

また、モノ造り・日本の国際競争力も低落した。毎年、世界の機械関係企業300社の連結財務諸表をもとに、「日・米・欧・アジア機械産業の国際競争力」を分析する日本機械輸出組合の報告によれば、日本の国際競争力(売上高営業利益率×世界売上高シェア×100)は、直近7年の間に、それまでの北米に次ぐ2位から最下位の4位に転落した。ちなみに、競争力指数は、北米企業3.8、欧州企業1.8、アジア1.3、日本0.9で、日本の下落ぶりは激しすぎる。このままでは、日本の機械産業は衰亡するしかない。北米企業が強いのは、利益の出る事業モデルや研究開発、設備投資によって投資効率を高めているためだ。日本は、研究開発や設備投資に消極的で、競争力の低下が止まらない。つまり、北米企業は、ヒトを人材として活用するのに対し、日本企業はヒトを必要悪のコストとして扱う。この差が国際競争力の盛衰に現れた。

翻るに、日本が、ヒトを人材として活かした時代はあった。敗戦の灰燼から日本を世界の経済大国に成したのは、企業が、まさにヒトを人材として育て,人力を発揮させたからだ。1985年のプラザ合意で、経済圧勝の日本は極めて厳しいドル安円高を呑まされたが、日本企業はそのドル安円高のハンディを凌駕するコストダウンを実現させて国際競争力をさらに強化し、米国の思惑とは逆に米国の対日赤字は膨らむばかりとなった。ヒトを人材として活用してこそ、ヒトは無限の知恵を発揮し「不可能」を「可能」にするパワーとなるわけだ。慌てた米国は、1989年、日米構造協議を提案し、日本の経済構造改造と市場開放を求める展開になる。

そのヒトに対する扱いを大きく転換させたのは、1991年のバブル崩壊だ。過剰債務、過剰設備、過剰雇用の3過剰苦の経営破綻状態に直面した企業は、ひたすらリストラと人員削減に邁進した。そして、2000年代に入り米欧の住宅バブルやBRICsなどの新興国台頭による海外景気で輸出を伸ばし過去最高益を毎年のように叩き出した時も、2003年に3過剰苦を解消し余剰資金をたっぷりと抱えた後も、正規社員を非正規社員に次々と切り替え、人件費削減の一本槍経営で現在に至る。これでは、米欧はおろか、研究開発や設備投資をアグレッシブに断行するアジア企業に追い越されるのは当然の帰結だ。

「経営不振は円高にあり」、として自らの経営責任を省みない経済界は、アベノミクス効果が喧伝されるなかでも、動きは鈍い。4月1日に発表された日銀短観では、大企業の2013年度の設備投資計画は前年度比2%のマイナスだ。また、リクルートホールディングス調べの来年3月卒業の大学生・大学院生への企業の求人倍率は1.28倍で横ばいだ。企業の国際競争力が弱体化した現状からして、労働コスト削減だけでは早晩、経営は行き詰まる。しかし、成長への布石を打つ環境が整いつつあっても、経営者にその気配が見られない。

もとより企業は社長の私物ではないが、人材や資産、知的財産権などの経営資源を有効に使うことができない社長を淘汰する仕組みが日本にない。昨年の総選挙で自民党が出した「企業統治改革の推進」として、上場会社における複数の「独立取締役」の選任義務を挙げている。日本も欧米並みに、業績の上がらない社長の交代システムを早急に構築すべきだ。景気回復感が漂う今、ダメ社長の既得権益打開こそ日本経済再生の喫緊課題ではないか。
以上

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