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2013年3月25日
21世紀、国際競争力喪失の日本。円高非難に終始した経営者の大罪
財務省が3月21日発表した2月の貿易統計によれば、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、2月としては過去最大となる7775億円の赤字であった。貿易赤字は8ヵ月連続となり、第2次石油ショック時の1979年7月からの14ヵ月連続赤字に次ぐ。輸出額は前年同月比2.9%減の5兆2841億円、輸入額は同11.9%増の6兆615億円であった。

原発停止による天然ガスや原油の輸入が大幅に増加したが、金属加工機械、電子部品、自動車などの輸出落ち込みが目立つ。円安が輸入総額を押し上げたが、円安による輸出効果は見えない。産業界は、あれだけ声高に「円高」を諸悪の根源とし国の無策を非難してきたが、「円安」に転じても輸出に勢いはない。円安による「期待」が「気配」に変わる様子もない。

何ゆえ、か。製品の競争力がなくなったのだ。日本の技術は世界に冠たるレベルにあると錯覚する向きが今もいるが、技術は磨かなければたちまち錆び付き、技術キャッチアップにアグレッシブな後進企業にたちまち追い越される。日本が米欧に追いつき追い越した足跡が何よりの証左だ。敗戦で無一文になった、資源なき日本は、加工貿易に活路を求め、製造企業は社運を賭けて米欧より先進技術の習得に努めた。そして、米欧製造企業を凌ぐ大量生産体制を構築し、品質・価格で世界市場を圧倒した。日本台頭によって衰滅した米欧企業は数知れない。

20世紀は、米国フォード社が手がけたT型自動車のベルトコンベアによる量産システムを、日本がモノ造り技術による量産システムに昇華した世紀、と云われるように、日本が世界の製造業の中心に位置したことは確かだった。だが、21世紀に入りBRICsなどの新興国が頭を擡(もた)げ、世界経済の軸足が米欧日・先進諸国からアジア・環太平洋諸国に移るとともに、韓国・台湾・中国などの新興国企業の驚異的な急成長に圧倒されて、日本企業は立ち位置を見失う。まさに、米欧企業が姿を消した跡を辿るかのように、である。

設備投資動向指標として重視される工作機械内需(日本工作機械工業会)の動きは、21世紀に入って今日(2001年〜2012年)に至る年平均内需高4928億円は、あのバブル崩壊で沈滞した時期(1900年〜2000年)の同5357億円に比し92%の水準に過ぎない。なお且つ、リーマン・ショック後の直近4年(2009年〜2012年)の年平均内需高は3161億円で、バブル崩壊期の60%にさえ届かない。工作機械メーカーによると、大手機械製造企業の現場はいずれも一様に老朽設備が殆どで、もともと旧式の上に故障が多く生産性が上がらず、担当者が取替更新を申請しても上層部が聞く耳を持たない、とのこと。これでは現場力は衰えるばかりだ。

一方、工作機械の外需は、21世紀に入って今日に至る年平均は6049億円で内需を毎年1000億円以上も上回り、直近4年では、外需(6661億円)は内需の2倍以上に達する。日本企業の製造現場がますます老いるのに対し、新興国企業は日本の最新鋭工作機械で装備する。もはや、新興国は単に賃金が安いと云うイメージではない。高度なものをつくるだけの技術力があり、様々の分野で安価で品質の良い製品が日本にどんどん入って来ている。実は、この流れがデフレの根底に繋がっている。日本のデフレが金融政策に原因ありとされるが、そうではなく、日本企業の成長力が衰え、製品に競争力がなくなったからだ。

21世紀、軸足が先進国から新興国に転じ、世界経済が激変に晒されるなかで、新興国企業は果敢に投資を行って急速に力をつけたが、日本企業はその変化に何一つとして対応策を打たなかった。足元の人口減少による国内市場の狭隘化を見たとき輸出力の強化は喫緊の絶対不可欠の課題であるのに、開発投資を渋り設備投資を怠った。エチレン,製紙、鉄鋼などの装置産業や、造船、電機、各種部品などの機械産業の多くが、過大の古い設備を抱え、どうにもならない状況だ。最新鋭設備で装備した新興国企業に、旧態設備の日本企業が勝てるわけがない。

その上、人的資源もコスト削減のために、正規雇用を非正規雇用に次々と切り替えられ、今日では全雇用の40%近くが非正規雇用で、その劣化が激しい。イノベーションに欠かせない研究開発の低落は否めない。また、製造現場では2012年より,団塊の世代が65歳の年金受給年齢に達しリタイアを始めた。早晩、その後継者になるべき正規社員の不足は必定だ。設備もさることながら、人的資源の劣化は企業の致命傷となる。

「円が高いからダメだ」と言い訳ばかりし、本来やらなくてはならない企業力の強化をせず、国際競争において企業を危機に追い込んだ経営者の責任は万死に値する。日本の製造企業は高付加価値製品を創出する事業に転換してこそ洋々たる前途が拓かれる。企業の構造改革なしに旧態のまま、現下の円安メリットを追うようでは、起死回生のチャンスを失う。
以上

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