商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2013年2月23日
目指すべし、聖域なきTPP。農業に不可欠な自助自立
安倍晋三首相は2月22日、オバマ大統領との首脳会談後の記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関し、「会談で聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」と述べ、「なるべく早い段階で決断したい」、と交渉参加を事実上表明した。TPPは、工業製品や農産物、金融サービスなどを始めとする、加盟国間で取引きされる全品目についての関税を100%撤廃しょうとするものだ。2006年にニュージランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4ヵ国が発効させ、2010年11月までに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5ヵ国が加わり9ヵ国となる。さらに2012年10月、カナダ、メキシコの参加が認められ、今は11ヵ国が年内の合意を目指し交渉を進めている。

日本は前民主党政権下で菅元首相や野田前首相が参加を口にしたが、党内のTPP反対派に押し切られ何の覚悟もない個人的意見の域を出ず、漂流状態にあった。昨年末、衆院選で圧勝した自民党が政権に就いたが、自民党も党内にTPP反対派が多く、党としてのTPP見解は打ち出されていない。問題は農業である。TPPは農業を滅ぼす、と農協は猛反対だ。両党ともに集票マシンとしての農協を敵に廻したくない。日本の農家は261万戸しかないが、農協の正組合員は500万人もおり、さらに准組合員400万人を加え、農協には900万人の組合員が属している。議員が競って農協の機嫌をとる所以だ。

日本の農家は元気がないと云われて久しい。元凶は国の減反政策だ。生産調整により増産意欲など湧くわけがない。「80年代農政の基本方向」と云う報告書が1980年に農政審議会によって出された。日本農業の危機感を共有し、農業の高齢化、米国からの農産物の自由化圧力、アフガニスタン侵攻のソ連に対し発せられた米国の穀物・農産物禁輸措置などの色々の問題に耐えられる国内農業の確立の必要性を謳った。そのためには、単に農地が維持され、耕地さえあればよいと云うものではなく、人材、水資源、森林資源など食糧の生産力と密接に結びつく地域資源をきちんと保全されなくてはならない、としたが、その後の実態は惨憺たるものだ。

農水産省の資料によれば、1995年における農業就業人口411万人、平均年齢59.1歳であったのが、2010年に就業人口261万人、平均年齢65.8歳となり、15年間で150万人も減り、6.7歳も高齢化が進んだ。このままでは農業離れが一段と進み衰退するしかなく、早急に高齢となった農家から新規参入者に農地を円滑に継承する枠組みを作らなくてはならない。同時に、農地の集約化と生産性の向上が図れる環境づくりが不可欠だ。小規模な兼業農家の多い日本では機械化による農作業の効率化が、米欧に比し格段に遅れている。ちなみに日本の農地面積は、米国やオーストラリアの90分の1、欧州の40分の1である。

長らく手厚い保護を受け、弱体化した日本の農業力を高めるには、参入規制を緩和し、資金力があり、若手を集める力のある企業の農業参入を積極的に促すことが必要だ。優秀なノウハウを持つ農家の人材に現場を仕切らせ、経営、マーケティング、開発、加工、販売は企業が担い、産品のブランド価値(品質)を高めかつ生産性を向上させ、価格競争力の強い農産物を産出する体制を整えることだ。もはや、高い関税壁で守られ、農家が国民から多額の補助金を貰いながらその国民に高いコメを強要するような仕組みは、それ自体そもそもおかしいが、国の借金が国内総生産(GDP)の2倍まで膨らんだ今日の財政下で維持できないことは火を見るより明らかだ。

TPP反対派は、TPPは農業を潰すというが、これまでのあり方ではTPPとは関係なしに、早晩、農業は確実に潰れてしまう。その上、現下の少子高齢化・人口減少による需要縮小が急速に進展する国内市場を見れば、時をおかず、海外市場開拓の必要性はバカでも分かる。国会中継である議員が、自動車のために農業が犠牲になるようなTPP参加は反対だ、と大声を張り上げていたが、自動車などの製造業だけでなく、農業も世界市場の中で活路を切り開き、世界で発展するビジネスモデルを構築しなくては、ジリ貧しかないのだ。

農家の農協離れも加速している。農協は、農家の農産物の販売と農家の購入資材を担ってきたが、有力な専業農家は農協に頼むより、産直などにより自ら販売努力し、また、資材調達も自ら行うほうが低コストで購入するようになり、農協を相手にしなくなった。形骸化した農協に群がるのは、国会議員の諸先生だ。農家のためでなく、ご自分のために。

安倍首相が気遣うTPP「聖域」とは農業だが、むしろ農業をTPP推進の目玉にし、農業を若返らせ成長産業に変革する機と捉えるべきではないか。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。