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2013年2月4日
製造業凋落、半世紀ぶり就業者1千万人割れ。元凶は、経営者の無能にあり
総務省が2月1日発表した昨年12月の労働力調査によると、製造業の就業者数が998万人と、1961年6月以来、半世紀ぶりに1千万人を下回った。1992年10月の1603万人をピークに一貫して減少し、当時の3分の2以下になった。高度成長期の日本の雇用を支え、分厚い「中間層」を生み出す原動力となったが、その凋落はあまりにも速過ぎる。12月は前年同期比35万人減で、16ヵ月連続で前年同月を下回った。

主に円高を背景に自動車や電機、機械、化学などの主力企業が製造コストの安い中国や東南アジアへ生産拠点を移し国内生産を縮小したことによるが、加えて近年は、薄型テレビや半導体の電機分野で、韓国・台湾などの新興企業の台頭による業績悪化で余儀なくされた、人員削減が雇用減少に拍車をかけた。昨年も、ルネサスエレクトロニクス、パナソニック、NEC、シャープなどが何千人もの規模の削減に追い込まれ、関係する中小企業にも影響が広がった。

就業者全体に占める製造業の就業シェアが最も高かったのは、1970年代前半の27%であったが、昨年12月に就業シェアは16%に落ち、サービス業33%、卸売・小売業18%より低くなった。しかし、付加価値額では製造業は22%を占め、サービス業23%にほぼ匹敵し、卸売・小売業15%を上回る。産業構造の高度化に伴い製造業の就業シェアは低下し、サービス業の就業シェアが高くなると云うが、1人当り付加価値生産性は、製造業はサービス業の約2倍、卸売・小売業の約1.7倍であり、経済成長に及ぼす貢献はなお以って大きく、製造業の力強い存在なしに、今後の日本経済を語ることはできない。

米国も製造業の復興に必死だ。製造から金融に産業の軸足を移し、その挙句、リーマン・ショックを招来させ金融崩壊の危地に陥った米国は、オバマ大統領が就任と同時に、雇用を拡大し経済を立て直すため疲弊した製造業の再建に着手した。先ず、破綻状況にあったGM、フォード、クライスラーのビッグ3の再生に膨大な政府資金を投入し、また、超ドル安政策により海外移転した製造業の国内回帰を促し、海外移転を図る企業に課徴金を科して流出を防いだ。

時をおかず数年にして、その米国は、たちまちビッグ3が往年の姿を取り戻し、キャタピラーやGE、アップルなどの有力企業が生産活動を中国から米国に移す動きを見せ始めた。また、米国製造業の足枷となった労働組合による頑迷な既得権や硬直的な雇用慣行、高いレガシーコストは過去のものとなった。さらに、米国内で次々と発見されるシェールガス、シェールオイルが、安価なエネルギーや石化原料を生み出し製造業の蘇生を加速させている。
翻って日本。何ゆえ、一時は世界市場を制覇した日本の製造業が、かくも体たらくになったのか。OECDによれば、2000年以降の労働分配率は、欧米企業に比し日本企業が最も低くなり、ユニット・レバー・コスト( 1単位当りの生産に要する人件費)の改善度合いも格段に大きくなった。また、貯蓄投資バランスでみた企業部門の資金余剰幅も日本が最も大きく、財務体力を蓄積している。それにも拘らず、日本企業が振るわないのは、円高、電力問題、高い法人税、厳しい環境規制、自由貿易協定の遅れ、硬直的な労働市場、の6重苦によると尤もらしく言うが、決してそうではない。経営能力の無さに起因する。

株主が重視する、企業の業績を表すROE(株主資本利益率)は、日本企業が輝いた1980年代は欧米並みであったが、バブル崩壊後低下し現在は半分以下のレベルに低落し、2012年3月期の東証一部上場企業のROEは5%で、欧米企業の15%に遠く及ばない。研究開発や生産技術を担う人的資源を切り捨て、最先端の設備投資を実施しなければカネが余るのは当り前だが、企業の付加価値を生み出す力は年々衰え、利益を上げるには、人件費を削減するしかない。

その上、当期利益に占める配当金の割合が、1980年代の2倍にハネ上がり、内部留保取り崩しの年もあり、日本企業は、低収益・高配当の両面から厳しい状況に晒されている。将来構想をしっかりと持ち、企業成長に向けて差配する本物の経営者がいないのだから当然の結果であり、経営能力欠如が製造業衰退の所以だ。

このままでは、日本の製造企業が、伸張著しい新興国製造企業と復活する米国製造企業の狭間の中で、益々衰退するのは火を見るより明らかだ。安倍晋三首相は2月5日、「産業界には、業績が改善している企業が報酬を引上げることで、働き手の所得が増加していくよう、ご協力をお願いしたい」、と経済財政諮問会議で強調した。だが、株主向けのROEしか眼中にない現在の小経営者の耳に、天下の声が届く筈もない。経営者の刷新なくして企業成長なく、企業成長なくして日本経済成長なし。製造業衰滅は杞憂でない。
以上

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