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2012年12月31日
恫喝が呼び込んだ円安、株高。TPP参加なしに成長戦略なし
12月26日、3年4ヵ月ぶりに自民党が政権復帰を果たし、第2次安倍政権が誕生した。新政権は、松下政経塾や弁護士、組合上がりなどの口舌集団の民主党前政権とは比較にならないパワーと安定感が漂う。就任会見で安倍首相は、「経済再生なくして、財政再建も日本の将来もない」、とし、「アベノミックス」を訴えた。経済を成長させデフレを脱却し税収を増やすために、「大胆な金融緩和」、「積極的な公共投資」、「企業の投資を呼び込む成長戦略」のアベノミックスなる3本の矢を矢継ぎ早に放つ、と云う。

安倍政権は、まだ何もやっていないのに、政権発足以前から日銀に金融緩和圧力をかけ、最後には「日銀法改正」まで踏み込んだ恫喝が世界中に伝播したのか、輸出不振や産業空洞化の元凶となった「超円高止まり」を溶かし、株式市場を俄かに活気づかせた。28日午後5時現在の円相場は1ドル=86円33銭と2年4ヵ月ぶりの円安水準になった。また、今年最後の取引となった28日の東京株式市場で、日経平均株価は終値で1万0395円18銭と今年最高値をつけ、「ITバブル」で沸いた1999年以来、13年ぶりの年末最高値となった。

ところで、現日銀法は、1998年に「新日銀法」の施行により、日銀の独立性が保障され、金融政策の目標と手段の決定は日銀に任される。その背景に、1980年代後半に萌芽し始めたバブルを摘み取るため、利上げによる金融引締めを図る日銀に政府が圧力をかけた結果、土地や株が狂乱する未曾有のバブル経済を招いた反省がある。日銀が政府に従属する立場になれば、政府の恣意により紙幣乱造に走りかねない。政治が日銀の懐に手を突っ込むのは危うい行為だ。米英でも中央銀行の独立性が堅持される仕組みになっている。

しかるに、日銀は、深刻なデフレ経済下で景気が持ち直しそうになった2000年8月、2006年7月の2度にわたってインフレ恐怖症から利上げに踏み切り、デフレから脱却する機運を腰折れさせた。日銀に何もかも任せて、このようなヘマを繰り替えされてはたまったものではない。衆院選で圧勝した安倍総裁の意向を受け入れ、日銀の白川方明総裁は20日、「2%の物価目標」を入れた政府との政策協定について検討すると表明した。2%の物価上昇が定着するまで金融緩和を続ける、と云うことだ。バブル崩壊以来20年、デフレ下のこの国を立て直すには政府、日銀の協調は当然のことだ。

次に、新政権は年明けに「10兆円規模」と云われる大型の今年度補正予算を組み、公共事業を前倒しで進める、と云う。国債発行は通年で過去最大規模になる公算が大きい。財政出動で財政がさらに悪化するとの見方から国債は売られ、長期金利はこの半月で0.7%から0.8%にハネ上がった。国債発行残高は、2012年9月末時点で948兆円に達し国内総生産(GDP)の185%となり、先進国の中で突出している。ちなみに米国109%、英国104%、ドイツ89%、財政問題に揺れるイタリヤでさえ122.7%だ。

バブル期の1991年における国債発行残高のGDP比率は37%であったが、バブル崩壊後の景気対策に公共投資が年々積みあがり、2002年に国債残高はGDPを超え、近年は公共投資は縮小したものの税収悪化による歳出入の赤字穴埋めの国債発行が常態化し、今日の異常なる状況に至った。バラ撒きやハコモノなどの公共投資は何の経済効果もないことは、国民は身をもって知った。復興やインフラの修理、民間企業の投資を誘う公共投資など、使い先はとことんこだわるべきだ。やってはならないのは既得権益をもつ層への利益誘導だ。

もはや無神経に国債依存が許される状況でなく、国債は売られ易い環境にある。外国人の国債保有残高は前年比1割増しの85兆8504億円に達し、保有割合は9.1%と05年末の4.4%の2倍以上となった。彼らは売り材料を虎視眈々と狙う。非効率な公共投資を行い、また、歳出の削減を怠れば、たちまち売りを浴びせられ、国債は下落し、国債を抱える金融機関は破綻の淵に立たされる。為政者はこの国が置かれている現実を見誤ってはならない。

「第3の矢」の成長戦略が最も重要だ。歴代政権が口にし、いずれも絵空事に終わった。此処は、就業人口が5%に落ち65歳以上の高齢者が79%を占める農業の規制緩和を徹底し、農業を成長産業に転換する施策が喫緊の課題だ。衆院選で自民党は、農業地帯の選挙区で圧倒的な支持を得た。それ故に、農業をジリ貧にしてはならない。他の産業も今日ほど変革を求められる時はない。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加こそ、成長戦略だ。

足元の2012年の年間貿易赤字が32年ぶりに過去最大となる日本は、「貿易立国」の体をなさず、建直しに一刻の猶予もない。安倍政権が担う責務はことのほか切羽詰まっている。
以上

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