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2012年12月10日
一過性ではないドル高円安。鮮明になった日米経済の明暗
10月の貿易収支は4503億円の赤字で、4ヵ月連続の赤字。赤字幅は前年に比し、2414億円拡大した。輸出額は、自動車や鉄鋼、軽油などの鉱物性燃料が落ち込み、6.0%減の4兆9466億円となり5ヵ月連続で前年を下回った。輸入額は原油などが減り、1.4%減の5兆3969億円で2ヵ月ぶりのマイナスとなった。

輸出が何ヵ月も前年比割れするようでは、デフレに陥り自律回復力に乏しい日本の国内総生産 (GDP)は低迷するしかない。内閣府が12月10日に発表した7〜9月期のGDPは実質で前期比0.9%減、年率換算で3.5%減であった。また、4〜6月期の実質GDPも前期比0.0%減、年率0.1%減に下方修正され、結局、2四半期連続のマイナス成長となった。さらに尖閣問題に端を発する日中摩擦が新たなる輸出の下振れ要因となることは確実で、10〜12月のGDPはマイナス成長を余儀なくされ3期連続のマイナス成長とならざるを得ない。

輸出の減退は、欧州連合 (EU)の金融危機による世界景気の減速が背景にあるが、それより何より恒常的な貿易黒字国通貨であった円買い圧力による円独歩高が主因だ。その円高は、野田政権の衆議院解散表明とともに俄かに円安に転じた。2011年7月以降における70円台の円高の流れが一気に、82円台の円安ドル高に変わった。次期政権が日銀に金融緩和圧力を強めるとの思惑が拡がったとの見方があるが、日本の貿易収支が赤字基調に一変し、日米経常収支の不均衡が縮小する、と云う為替需給の構造変化を読み取らなくてはならない。

オバマ大統領は、雇用の拡大を図るため輸出振興に向けて超金融緩和を徹底し、ドル安圧力をかけた。ドル安円高はその結果だが、米国景気は立ち直りの気配を見せ始めた。オバマが掲げた輸出倍増の実現は未だ果たされていないが、米国を震撼させたサブプライムローンの元凶となり崩壊した住宅市場が持ち直してきた。やっと米国景気の成長の足枷となった要因が取り除かれつつある。また、年々積み上がってきた米国の貿易赤字はドラステックに縮小に転じた。米国の貿易赤字の原因は膨大な原油の輸入にあったが、米国全土の広域に埋蔵するシェールガスの産出技術を開発し本格的な増産体制に入り、米国の貿易赤字の50%以上を占める原油輸入の削減を実現した。のみならず、2015年に天然ガスの輸出国に変貌する見通しだ。「シェール革命」によって、米国は製造産業国として再生する足掛りをしっかりと掴んだ。

一方、日本。原発54基(福島第1原発4基含む)のうち52基が休止。その代替に火力発電所を稼動させるため天然ガスの調達に走り回った結果、売主に足元をみられ、ジャパンプレミアムと呼ばれる高値圏での輸入を強いられ貿易赤字を招いた。ちなみに、100万BTU(英国熱量)単位当りで、日本の天然ガスが15ドルに対し、米国の天然ガスは3〜4ドルだ。全米の発電コストは2013年までに10%切り下げの見込みだが、日本は電力料金の大幅アップに直面する。経済の根幹をなすエネルギーにおいて、今日抱える米国と日本の明暗はあまりにも鮮烈過ぎる。原発再稼動反対、電力料金値上げ反対、の好き勝手が渦巻く日本の行く末は語るに落ちる。

現下のドル高円安の動きは一過性のものではない。下手をすると、日本凋落の始まりになるかも知れない。厳しい円高を諸悪の根源と言う向きが多いが、そのお陰で、世界中から良質の食糧やエネルギーなどの資源を買い、このデフレ下で豊かではないが、文化的な生活を営むことができる。逆に、行過ぎた円安ほど恐ろしいものはない。ハイパーインフレに襲われたドイツやブラジルなどの歴史を見るがよい、国を滅ぼす。

そこで、日本は1ドル=80円台の円安を機に製造業の国内回帰に努め、雇用を改善・安定させ、唯一この国の資源である人的資源を練磨し、モノ造りに磨きをかけることだ。そして、ヒトにカネをかけ経済を動かすことだ。やってはならないのは、2000年代前半の輸出主導のいざなぎ超え景気で企業が見せた、円安メリットの独り占めだ。従業員に分配するどころか、正規雇用を非正規雇用に切り替え賃金まで懐にした。以来、GDPの60%を構成する個人消費は低迷し、企業は精気を喪い、日本経済は漂流の中にいる。今年7〜9月の雇用者数は4半期ぶりに増え前年同期比17万人の増加となった、と云うが、内訳は、正規雇用者の7万人減、非正規雇用者の25万人の増だ。これではヒトが頼りの日本経済は劣化するばかりだ。また、原発の技術開発に背を向けてはならない。原発技術が世界最高レベルにある日本が世界の原発需要に応えずしてどこがやるのか。怪しげな国に任せては、日本も世界も災いを免れない。

日本は、失われた20年の間に、ヒトは劣化し設備は老朽化した。そして気持ちまで萎えてしまった。円安機運を国力復活に繋がなくては、この国は亡ぶ。
以上

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