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2012年11月30日
安くない中国賃金。国内回帰の時、製造企業
尖閣問題を提起し、連日、周辺海域に何隻も海洋監視船を進出させ、また中国国内では日系企業襲撃を各地で展開し日本製品ボイコットを繰り広げる中国の動きを目の当りに、多くの日本人は肝を冷やし、中国一極集中主義の危険性を思い知ったはずだ。日本にとって中国は米国を凌ぐ最大の貿易国であり、これまで日本が中国に直接投資した金額は累計で850億ドル(7兆円)にのぼる。10月19日の中国商務省発表によれば、昨年末頃より海外から中国への直接投資の流入が低迷するなかにあって、今年1月より9月までの中国への直接投資は、日本が前年比17.0%増、EU(欧州連合)6.3%増、米国0.6%減と、日本が突出している。一方、注視すべきは、米国の撤退だ。

中国は2005年の靖国神社参拝を政治問題化し反日運動を惹起して以来、事あるごとに反日姿勢を高めてきた。共産党独裁政権を維持するには、ケ小平の改革開放による経済成長とともに生じた所得格差への国内の不満を国外に逸らすことが必要だ。そのため江沢民が確立した反日教育体制を現在も強化している。日本は、かかる中国体制をチャイナ・リスクと読みながら、その実、中国への投資を加速してきた。チャイナ・リスクをかし消すぐらい魅力があったのは、低賃金だ。確かに、ケ小平は安価で豊富な労働力を「売り」に海外企業を呼び込んだ。だが、時代は変わり、中国は日本を抜き世界2位の経済大国に台頭した。

果たして、今なお、中国の賃金は安いのか。米国の製造企業は次々と生産拠点を米国に移転させている。ボストン・コンサルティング・グループは、2月、米国の製造企業106社を対象にオンライン調査を実施した結果、中国から米国への生産拠点の移動を計画または検討している企業が37%にのぼり、なかでも年間売上高100億ドル以上の大企業では約半数の48%に達していることが明らかになった。人件費が高騰し、もはや、「世界で最も安価な生産拠点」ではなくなったからだ。

中国の月額賃金は306ドル(2011年・JETORO)で、年収では1ヵ月分の賞与を通例として試算すると3978ドル。1ドル=82円として換算すれば326千円。中国の労働者の生産性を日本の4分の1と仮定して、実質賃金130万円だ。勤勉で協調性の高い日本の労働者は1日8時間きっちりと働くが、中国の作業者は単能工が多くかつ協調性に欠き実際の稼動は1日2時間しかないと云う向きもあり、きわめて生産性が低い。おおむね、中国の生産性は日本の5分の1前後とされる。

これでは、東北や山陰、四国、九州の最低時給の655円内外の賃金と変わらない。週40時間、年間52週働くとして、年収136万円である。ちなみに最も低い時給は、島根県と高知県の652円だ。中国の賃金が日本の20分の1、10分の1と云うイメージは、ほど遠いものになった。その背景に、中国の賃金高騰の凄さもあるが、日本の賃金水準の激落がある。1990年代初頭のバブル崩壊で日本の終身雇用が崩落し、かつバブル崩壊以降20年にわたるデフレ下で、パートや派遣などのフリーターが激増し、今日では非正規雇用が労働者の3分の1以上を占めるに至った。

その上、中国は2008年に就業権利を保護する労働契約法を施行して以来、労働争議が日系企業で頻発し、中国労働者の強烈な権利意識に悩まされている。中国政府は毎年の賃金アップを内需拡大策として決定しているため賃金の上昇は今後も続く。また、解雇もままならず多額の経済補償を余儀なくされる。ボストン・コンサルティング・グループは、2015年に中国の賃金は名目ベースでも10年前に10分の1とされたメキシコの賃金を追い抜くものと予測する。生産性を加味すれば、米国も日本も中国の賃金が、見かけほど安くはなくなったが、米国の機敏なる撤退に対し、日本の危機感のなさが際立つ。

さすがに反日暴動が起きた9月の日本から中国への直接投資は激減し、中国から東南アジアへの投資移転の動きが急速に広がった。月額賃金が、インドネシア205ドル、ベトナム123ドル、カンボジア82ドル、バングラデッシュ78ドル、ミャンマー68ドル、と格段に安い国々が、日本の技術を待ち受ける。そして、より大事なのは、生産現場を日本に回帰させ、開発と製造の擦り合わせ技術により更なるモノ造りを究め、人口が2010年の69億人から2050年に93億人に急増する21世紀の世界に貢献することだ。

モノ造りの進化は日本をおいてどこがやれるのか。日本が「失われた20年」の間にすっかり自信を失い見失ってしまった目標を定め、再出発する時である。
以上

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