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2012年11月15日
米国産業に革命を呼ぶシェールガス。商業化を急げ、メタンハイドレート
シェールガスが米国エネルギー事情を一変させた。米国の原油と天然ガスの価格は連動して推移してきたが、2009年を転期に、米国の原油価格が上昇しているのに対し米国の天然ガス価格は低位安定している。ちなみに、日本が4〜9月に輸入した液化天然ガス( LPG)の価格は前年より15%上がり過去最高であったのに対し、米国では下がった。100万BTU(英国熱量)単位当たりで、日本のLPGが15ドルであるが、米国の天然ガスは3〜4ドルだ。

このガスの低価格安定を米国にもたらしたのが、シェールガスの増産だ。2000年の米国天然ガス生産量に占めるシェールガスのシェアはわずか1.5%に過ぎなかったが、2010年に23%にシェア・アップし、2035年には半分の49% を占めると見込まれる。国際エネルギー機関(IEA)によれば、シェールガスは米国全土の広い地域で豊かな埋蔵が確認され100年分はあると云われる。その上、シェールガスなどの天然ガスは化石燃料の中で最も環境性に優れたエネルギーで、燃焼による二酸化炭素の発生は石油の4分の3、石炭の半分、窒素酸化物はそれらの半分以下、硫黄酸化物はゼロである。

シェールガスは、地下100〜2600メートルの頁岩(けつがん・シェール)の中に閉じ込められている天然ガスで、世界各地で広域に大量に埋蔵されていることは知られていたが、その取り出し方法が分からなかった。だが、米国の中小採掘業者(ベンチャー)が水平掘削、水圧破砕などの効率的な採掘技術を確立し、シェールガスを商品化することに成功した。そして2000年代後半に入ってシェールガスの生産急増を見た石油メジャーのエクソンモービルやBHPビリトンが、次々とベンチャーを買収し、シェールガスの本格的な増産に乗り出した。

シェールガスのお陰で世界一安くなった米国のエネルギーコストは、国内の産業構造に大きなインパクトを与える。全米の発電コストは2013年までに10%削減でき、産業部門の生産コストや一般の消費に大きな経済効果が出ると期待される。また、米国内を見限って中東で合弁事業を優先してきた、ダウ・ケミカルやエクソンモービル、シェブロン・フィリッピス・ケミカル, 英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが、シェールガスを原料とした石化設備の新設を米国内で活発化させている。原料の競争力が高まり化学メジャーの米国内への回帰が進み、エチレンやその誘導品関連分野で米国の存在感が増すのは必至だ。鉄鋼産業では低廉なガスを使って鉄鋼を製造する直接還元法が注目される。自動車産業では,電気自動車の販売が進展しない中で、GM、クライスラーが天然ガス自動車やトラックの製造販売を既に発表し、普及を狙う。「シェールガス革命」は様々な産業で急速に広がっている。

また、シェール関係の増産を強化することにより原油輸入が減少し、2005年に60%だった石油の海外依存度は2035年に36%まで減り、中東からの原油輸入はゼロとなる見通しだ。「脱中東」によるエネルギーの安全保障が確保されることで、中東情勢に投じる莫大な軍事費削減の選択肢も得られる。輸出には液化設備などの設置やパナマ運河の拡張事業などで時間がかかるが、2015年から開始される予定だ。ただ、輸出先は、米国のFTA条約締結先の英国、スペイン、インド、韓国で、日本は予定にない。ようやく長期にわたり米国が悩んだ経常収支と財政収支の改善に光明が差し出した。

一方、日本は、原発の事故以降、火力発電の稼動を上げるため天然ガスの輸入を急増させ貿易収支を赤字に転落させた。調達先のロシアなどの天然ガス産出国は価格を原油とリンクさせるため、日本は高い天然ガスを買わざるを得ない。調達確保のため、ロシア・サハリンからパイプラインで天然ガスを輸入する構想が、10年ぶりに動き始めた。現在は、ウラジオストクからLNGを船で輸入する計画が進んでいる。サハリン油田には、日本がプロジェクト「サハリン2」を推し進めた挙句、ロシアに召し上げられたいわく付きの記憶がある。かかる国の油田に依存して、果たしてエネルギーは担保されるのか、極めて疑問だ。

また、安易に安保同盟の米国に低廉なシェールガスの供給を願ってはならない。エネルギーと食糧は国家基本安全保障の根幹であり、自己調達が原則で甘えられるものではない。早急に行うべきは、日本近海の排他的経済水域に100年分の埋蔵が確認されたメタンハイドレートの商業化だ。2018年の商業化を目指すと云うが、更なる加速が必要だ。資金も人材も日本は豊かだ。鮮明になった経済後退を吹っ飛ばす規模の巨額投資を断行すべきだ。

100年分のシェールガスが米国に「革命」をもたらしたように、100年分のメタンハイドレートが日本の氷結した産業構造に「革命」をもたらすに違いない。
以上

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