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2012年10月31日
貿易立国崩壊・日本。喫緊の円安・ドル安是正
財務省が10月22日発表した2012年度上半期(4〜9月) の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3兆2190億円の赤字になり、前年同期比では約2倍の90%増で、半期(6ヵ月)としては過去最大となった。輸出額は、32兆1603億円で同2%減となった。半導体などの電子部品や自動車の減少が目立った。政府債務(借金)危機が広がる欧州向け同16%減、成長減速の中国向け同8%減が主因だ。輸入額は、前年同期比3%増の35兆3793億円であった。各地で休止した原発に代わり火力発電が増え、その燃料となる石油や液化ガス(LPG)などの鉱物性燃料の輸入増が際立つ。

なかでも9月は、中国の反日デモによる日本製品ボイコットが起き、中国向け輸出は9月単月で前年同期比14%の急減をみせた。日本製品不買の動きは、その後も拡大し終息の兆しは見えない。9月の中国市場における乗用車販売は、トヨタ▲48%、ホンダ▲40%、日産▲35%などと激減した。自動車各社は、10月に入って大幅な生産調整を余儀なくされ、日産は日本から中国への完成車の輸出を来年1月まで停止する方針を固め、トヨタ、ホンダは現地生産を5割前後縮小する方針だ。余波を受けて部品・素材などの国内関連産業の生産・輸出も苦境に立たされた。また、シャープやパナソニックなどの家電メーカも大きな打撃を受けた。

反日デモは9月半ばから激化しており、9月はその影響が半月分に過ぎず、10月以降は中国向けの大幅減は確実で、更なる日本の輸出減は避けられない。一方、輸入増をもたらした石油やLPGは値上がり基調にあり、次々と原発再開を行わない限り、日本の輸入が急減することはない。この状況が続けば、赤字拡大は止まらず、12年度1年間の貿易赤字が過去最高になるのは必至だ。また、国内総生産(GDP)も7〜9月期はマイナスに転落し、10〜12月期も2四半期連続のGDPマイナスの様相が深まる。

厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率は、0.81倍で、前月を0.02ポイント下回った。輸出悪化により製造業が落ち込んだためだ。有効求人倍率が前月を下回るのは、リーマン・ショック後の急激な景気悪化で過去最低を記録した2009年7月以来、3年2ヵ月振りである。緩やかな回復傾向にあった雇用情勢に翳りが出てきた。また、各社の中間決算発表が相次ぐが、製造企業の下期利益見通しは軒並み下方修正に追い込まれた。

このような流れのなかで、10月1日、新日鉄と住友金属が合併し、新会社「新日鉄住金」が発足したが、新会社は付加価値の高い自動車用高性能鋼板の全てを海外で生産する、と発表した。高度な技術製品の生産さえ海外に移転し、国内の空洞化が更に進行すれば、この国の国民は何を以って食って生けるのか。日本経済の根幹を食い尽くす元凶は、何と言っても、「円高・ドル安」だ。もはや日本はモノを造って輸出し外貨を稼ぐと云う貿易立国の体を成さなくなったが、依然として、「円高・ドル安」のなかに日本はある。

欧州の財政・金融問題への政策対応は紆余曲折を経ながら漸進し、一時1ユーロ=80円台に下落したユーロは1ユーロ=100円台に回復した。問題はドルだ。米国は、来年初めに財政支出の削減と増税が同時に訪れる「財政の崖」に直面し予断は許されないが、二つの光明が差し始めた。一つは、最大の懸案であった住宅が回復の兆しを見せ始めた。差し押さえ物件が減り、住宅在庫が縮小し価格に先高感が漂いつつある。今一つは、シェールガス革命だ。米国全土で埋蔵が確認され産出が増加し、石油などのエネルギーの輸入は減少し、近い将来、米国の経常赤字が解消され、米国のエネルギーコストは世界1安くなる見込みだ。
明るい材料を持つ米国に対し、日本は貿易赤字の実態を示し、「円高・ドル安是正」をきちんと要求すべきだ。1985年のプラザ合意では、日本は、経常赤字・財政赤字の双子の赤字に直面する米国が要求した「円安・ドル高是正」に何の反論もなしに全面的に協力した実績がある。日本は財政も大赤字で、まさに双子の赤字に直面した今日、1985年の貸しを返してもらい、モノ造り復活の環境を早急に整えなくては、日本は破滅しかない。
時を逸し産業衰退の日本を襲うのはハイパーインフレだ。その時の「円急落」は、「円」を紙くず同様に貶め、食糧自給率40%、エネルギー自給率数%の日本は、異様な輸入インフレを強いられ物価は狂乱し、国民の生活は成り立たない。

雇用を改善し、国内需要を喚起するには、「円高・ドル安」を是正し、産業の国内回帰を推進するしかない。カネのばら撒き論や空虚な成長戦略は時間の無駄。必要なのは、知力を尽くして米国にモノ言える政権の構築だ。次回衆院選は、その成否が問われる。
以上

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