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2012年9月17日
「経済愛国」主導に入った中国。国家資本主義に対峙するTPP参加
9月15日、尖閣問題を機に激しい反日デモが、中国の広範囲の都市で起きた。中国の反日デモは、2005年、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝を巡って始まった。その背景に「愛国無罪」なる言葉が流布したように中国政府の意図が見え隠れしたが、しかし当時、中国は五輪と万博を控え、庶民も経済成長を実感していたため、ともかく中国政府は円滑にデモをコントロールした。

だが、今回は事情が一変した。中国経済に翳りが見え始め物価は高騰したのに豊かになったのは、ほんの一部の人々だけで、格差が広まり国民の不満が蔓延した。デモの中心となった若者は、日系企業を襲撃する。山東省青島のパナソニックの工場やミツミ電機の電子部品工場、トヨタ自動車の販売店を放火、イオンのジャスコや湖南省の平和堂を破壊、蘇州のイズミヤ、四川省成都のファミリーマートやヨ−カ堂グループのセブンイレブンに被害を与えた。かかる暴動にそなえてホンダ、日産、キャノン、ライオンなど多くの日系企業は操業を停止した。

日系企業襲撃を黙認する中国政府は、1970年代後半、ケ小平による外資誘致をテコに経済発展を実現した改革開放の経済モデルを、国内総生産(GDP)を世界2位に押し上げた実績と共に終焉させ、自国企業を優先させる産業政策、「経済愛国」の主導に入った,と云われる。なかでも、パナソニックは、ケ小平に呼応して逸早く合弁会社を立ち上げ、イトーヨーカ堂はケ小平の出身地、四川省成都に出店し内陸部の消費拡大に貢献したが、「松下は出て行け」、「伊藤は出て行け」の叫び声に、中国政府の真意を感じないわけにはいかない。

13億人を擁する中国市場を前に、中国と好んで対峙する無用なことをする必要はないが、何事も一党独裁共産党政府の正体をきっちり見て対処しなくてはならない。すでに65歳以上の高齢者が3000万人に達し今後益々少子高齢化が進行する日本が経済成長を遂げるには、若々しいアジア太平洋経済圏のダイナミズムの活用が不可欠だ。それら諸国との関係深化を図る戦略として、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)と中国主導のASEAN+3(日中韓)がある。TPPとASEAN+3は、米国と中国とのアジア太平洋経済圏における熾烈な戦いであることを認識しなくてはならない。

それは、自由貿易体制と国家資本主義は共存できるのか、の重い問題提起だ。国家資本主義とは、市場原理を導入しながら、国家が国有企業を通じて積極的に市場に介入し経済発展を図ることである。中国は、2001年のWTO加盟後、暫らくは市場自由化と国有企業改革に着手したが、今日でも国有企業は健在でむしろ「国進民退」(国有企業が存在感を高め、民間企業が市場から撤退する)が深まる。実際、農業以外のGDPの50%超を国有企業が産出している。特定の企業が、国家の支援を受けていれば、自由で公正な貿易など維持できるはずがない。その上、市場経済化に必要な法的基盤が今なお整備されておらず、官僚の自由裁量の余地が大きい。そのため官僚による汚職と腐敗が常態化し、市場の自由化環境には程遠い状況にある。

国家資本主義は基本的に自由貿易とは共存できるわけがない。自由貿易は国家による市場への関与を許さない。米国産業界によるTPPに関する具体的な要望は15項目あるが、なかでも重要な要望は、「公正な競争」である。中国だけでなく、新興国では自国企業(国営企業)を優先する政策をとるところが多く、米国産業界はアジア太平洋経済圏における自由競争を確保するため,対等の競争条件を求めるルールづくりを目指している。つまり国営企業と民間企業間の公正な競争を求める。

TPPについて、日本は、2010年10月、菅直人前首相が参加検討を表明し、昨年11月、野田佳彦首相が交渉参加に向け関係国との協議に入る、と表明した。しかし、いずれもTPP参加の信念も覚悟もなく、その後、正式参加表明をしないまま現在に至る。間近に総選挙を控える国会議員もTPPに反対する者が大半を占める。農業関係者などの既得権益の保護貿易派の顔色を伺うのであろう。

民主党政権が誕生して3年を経過したが、結局、彼らは、政権奪取の最大貢献者、小沢一郎元代表外しに終始したに過ぎない。全くの政治空白が3年も続いたと云うことだ。もとより松下政経塾や弁護士上がりの口舌の徒が、国民の生命と財産を守れるわけがなかった。

幸いと云うべきか、米国は、8月31日、本年のTPP合意予定を,来年中の合意に先送りした。日本の将来をきちんと国民に説き新生日本を築くために、TPPがもたらす変革の苦しみに耐えるように国民を導く、真の総理大臣の出現を切に願う。
以上

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