商工経済新聞社 Home 機械新聞はこちら 管材新聞はこちら
クリックで警世警語INDEXへ
INDEX
2012年6月30日
消費税増税はデフレ脱却が必須。元凶は労働者の差別化
消費税関連法案は、与党・民主党議員の造反があったが、6月26日、衆議院で可決された。デフレ下での増税が、いかに一国の経済を破壊するか、は幾多の歴史が物語るところだ。だから、同法案が実施される2014年4月頃は、日本はデフレを脱却し国民総生産( GDP)年率2%以上の成長路線を描いていなくてはならない。だが、1990年代前半のバブル崩壊後、次々と変わる政権が、巨額の財政投資を始め、様々な新成長戦略を打ち出してきたが、今日に至るまで、GDP名目成長率がプラスに転じたことはない。現在、国・地方の借金がGDPの2倍と云う先進7カ国の中で跳びぬけて膨大な規模に膨張し、かつ、年間の歳出を賄うには、税収が伸びず、その大半を借金で調達せざるを得ない状況にある。まさに、「ギリシャ病」の状態だ。その歳出は、本年から始まる団塊世代の65歳化で加速的に増加する高齢人口の年金や医療費の増大により、増加の一方であり、歳入面の増加を図るには、消費税増税しか選択肢はない、と云う。

だが、しかし、である。肝心の経済が低迷のままで国民の所得が増えなければ、増税によって国民の消費量が5%落ち、あるいは単価が5%安くなればどうなるか。日本国民はいざとなれば節約を極限に至るまで厭わない。国民の生活は税に圧迫されて真に厳しいものとなるが、その反面、消費税増税による税収は思惑はずれの可能性がある。こう云うのを悪法と云う。だから、消費税増税の実施の前提として、経済を国民が喜んで消費できる活気ある状態にすることが必要だ。菅前政権も2010年6月に「新成長戦略」をつくったが、野田政権は殆んど成果が出ていないと評価した。野田政権はあまり意味のない政策を止めたり予算を減らしたりして成長戦略を見直すとのことだが、従来のように需要掘り起こしのための項目羅列では、従来と変わらず景気の好転は図れない。

何ゆえ、これまでの成長戦略が功を奏さなかったのか、の原因を究めず派手な宣伝文言で誤魔化してはいけない。そもそも経済成長は、需要の拡大があって、それが供給拡大を誘発し雇用を増加させ「所得増加」をもたらす。そして「所得増加」が更なる需要の拡大につながり、経済成長の好サイクルを稼動してゆく。しかるに、これまでとられてきた成長戦略は高度経済成長期にとられた需要喚起に焦点を合わした政策であり、少子高齢化の低成長期には効果がない。消費力旺盛な若者が少なくなり、消費力の低い老人が激増する社会において、需要が爆発的に起きるはずがない。

問題は、国民の所得、中でも若者の「所得」が低いことだ。本来は、企業の収益増が賃金増となり賃金増が家計の所得増につながり、家計の所得増がGDPの6割を占める個人消費を押し上げるのであるが、現実は、ここ10年来、賃金は下落基調で推移してきた。小泉政権下で、製造業向け派遣などの労働規制が緩和されたからだ。あの頃、有力識者なる人物が、頻繁にTVに出演し、新興国の台頭で賃上げは産業空洞化を招く、としきりに言っていたが、この人物は、日本の賃金水準を新興国並みの水準にすべきだ、と考えていたのだろう。結果、労働者の3分の1が定職のない労務者となり、年収200万円に満たず、生活保護を求める若者が増えてきた。これでは、並みの需要さえ生み出されるわけがない。

また、低賃金労働者の出現のお陰で、それこそ新興国に移転しなければ事業がやっていけない企業が延命し事業転換や業界再編の圧力が削がれ、歪な面が残った。その上、モノつくり日本に、大変な事態が起きつつある。高度成長期以来、今日に至るまでモノつくりの現場を支えてきた団塊の技術者や技能者が、先述したように今年から65歳の年金支給年齢に達し、大量退職して行く。その後を承継すべき中堅や若手技術者・技能者の層が、バブル崩壊後20年間、正規社員の採用手控えにより、ポッカリ穴が開いているところが多い。液晶テレビやパソコンなどのデジタル製品は、今ではどこでもつくれるが、機械やハイブリッド乗用車、コア部品などのすり合わせ技術は、日本製造業の最後の砦だ。この砦が、目先の現象に惑わされた有力識者の政策登用で、自壊しつつあることを見落としてはならない。

新成長戦略は、効果のない抽象的な項目を並べてはいけない。「経済成長を妨げる身分差別の賃金格差」を是正し、持続的成長を可能にする「生産性に見合う賃金決定」の確立、国際競争力の強化を目指す産業構造転換の促進、失われたモノ造り現場を担う人材の再生、が喫緊の課題だ。
消費税増税を掲げるには、デフレ脱却方策を国民に開陳することが絶対条件だ。
以上

発行所 株式会社商工経済新聞社
・大阪本社:〒550-0005  大阪市西区西本町1-10-7 Tel:06-6531-6161 Fax:06-6531-6090
・東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-28-15 Tel:03-3553-9161 Fax:03-3552-6549
・中部支局:〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-40-14大一ビル Tel:052-562-0477 Fax:052-586-4535
このサイトに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。サイトの著作権は商工経済新聞社に帰属します。